1 第六号住居址(第二四・二五図,図版第一四・一七)
第二四図 第六号住居址実測図
規模 西側約60%は調査区外の畑地に存在する.発掘した空間は北壁(W-X間)約3.6m,東壁(X-Z間)約2.7mを結ぶ範囲である.北壁のカマドが中央から僅かに東寄りの位置にあり,方形住居と考えれば一辺3.7m程度の大きさになろう.壁高は確認面から30~35cmを測る.
床面 カマド前面から中央部にかけては,凹凸のある硬度3,外区は硬度2に相当する.
ピット 柱穴はXコーナーの内側1.2mの床面にP2(直径25cm,深さ約70cm)が存在する.
カマド 構築位置は,北壁中央から僅かに東に寄る.煙道部は壁外に掘り込み,両袖部を褐灰色の砂質粘土で積み重ねている.断面形は,焚口部から燃焼部にかけて浅く掘りくぼめ,煙道部に至って舟の舳先状に立ち上がる.煙道部から焚口部間約70cm.燃焼部幅約30cm.
埋没土 図示したような層相を呈し,黒褐色土,黒色土,ロームなどが堆積する.人為的に埋め戻した土砂であることは明らかである.
遺物の出土状態 発掘した範囲は,住居址の東側,Xコーナー寄りの約40%程度である.出土遺物の大部分は,接合資料1と2の甕形土器に属する破片である.両者はC-Dセクションに投影すると,床面上から15cmの範囲内に散在し互いに接合している.接合関係図をみれば,2例の土器は,破片の状態で一括棄てられたことがわかる.鉄鎌はカマド左袖部外縁の床面から発見された.
遺物の概要 本址の遺物は,土師器,鉄製品と砥石であって,この他に34・35・36の複合口縁の壷形土器,小型の壷形土器,縄文後期堀之内式土器片(拓影図省略)などが出土している.後者は明らかに混入した遺物とみなされる.
甕形土器 接合資料1は,頸部から外反して口縁部に至り,口唇部先端が細くなる.胴部の最大径を肩部におき,ゆるやかに底部へ移行する.底面に木葉痕を残す.胴部の器面調整には,縦方向の箆なでが顕著に認められる.接合資料2は,頸部から口縁部が短く外反し,口縁端部に幅1.2cmの縁帯を形成する.胴部の最大径は肩部にある.器面に煤が付着し,胴下部は全面に剥落痕がみられる.
鉄製品33 刃部が内湾する鎌である.現存長70mm,刃部幅15mm,厚さ0.2mm,基部を欠損する.
砥石26 現存長約30mm,幅約34mm,厚さ12mmの残片である.使用痕は両面に残る.珪岩質製.
第二五図 第六号住居址出土遺物実測図