第五章 歴史時代の住居址と出土遺物 1 第六号住居址

 歴史時代の住居址は,調査区の南端西側,中間部分の東側に接して2軒検出された.第六・一三号住居址が該当する.いずれも住居址の一部または大半が調査区外に存在し未完掘である.
 1 第六号住居址(第二四・二五図,図版第一四・一七)

第二四図 第六号住居址実測図
 
 規模  西側約60%は調査区外の畑地に存在する.発掘した空間は北壁(W-X間)約3.6m,東壁(X-Z間)約2.7mを結ぶ範囲である.北壁のカマドが中央から僅かに東寄りの位置にあり,方形住居と考えれば一辺3.7m程度の大きさになろう.壁高は確認面から30~35cmを測る.
 床面  カマド前面から中央部にかけては,凹凸のある硬度3,外区は硬度2に相当する.
 ピット  柱穴はXコーナーの内側1.2mの床面にP2(直径25cm,深さ約70cm)が存在する.
 カマド  構築位置は,北壁中央から僅かに東に寄る.煙道部は壁外に掘り込み,両袖部を褐灰色の砂質粘土で積み重ねている.断面形は,焚口部から燃焼部にかけて浅く掘りくぼめ,煙道部に至って舟の舳先状に立ち上がる.煙道部から焚口部間約70cm.燃焼部幅約30cm.
 埋没土  図示したような層相を呈し,黒褐色土,黒色土,ロームなどが堆積する.人為的に埋め戻した土砂であることは明らかである.
 遺物の出土状態  発掘した範囲は,住居址の東側,Xコーナー寄りの約40%程度である.出土遺物の大部分は,接合資料1と2の甕形土器に属する破片である.両者はC-Dセクションに投影すると,床面上から15cmの範囲内に散在し互いに接合している.接合関係図をみれば,2例の土器は,破片の状態で一括棄てられたことがわかる.鉄鎌はカマド左袖部外縁の床面から発見された.
 遺物の概要  本址の遺物は,土師器,鉄製品と砥石であって,この他に34・35・36の複合口縁の壷形土器,小型の壷形土器,縄文後期堀之内式土器片(拓影図省略)などが出土している.後者は明らかに混入した遺物とみなされる.
 甕形土器 接合資料1は,頸部から外反して口縁部に至り,口唇部先端が細くなる.胴部の最大径を肩部におき,ゆるやかに底部へ移行する.底面に木葉痕を残す.胴部の器面調整には,縦方向の箆なでが顕著に認められる.接合資料2は,頸部から口縁部が短く外反し,口縁端部に幅1.2cmの縁帯を形成する.胴部の最大径は肩部にある.器面に煤が付着し,胴下部は全面に剥落痕がみられる.
 鉄製品33 刃部が内湾する鎌である.現存長70mm,刃部幅15mm,厚さ0.2mm,基部を欠損する.
 砥石26 現存長約30mm,幅約34mm,厚さ12mmの残片である.使用痕は両面に残る.珪岩質製.

第二五図 第六号住居址出土遺物実測図