第三章 竪穴住居址の調査 1 第一号住居址

 住居址は,A地点に2軒(第一・二号住居址),B地点に2軒(第三・四号住居址)の合せて4軒が発見された.各住居址とも工事や撹乱により,一部または大部分が破壊を受けている.
 1 第一号住居址(第三・八・二〇図,図版第二)

第三図 第一号住居址実測図

 遺存状態 中央部を幅60cmのコンクリート基礎が東西に走り,西壁で南北方向の基礎と直交する.撹乱は,北壁に接して長方形の区画が東西に,束壁の中央付近には,また別の土坑状のものが存在するけれども,発掘した住居址の中では最も遺存状態がよい.
 規模 北壁(W-X間)約4.7m,南壁(Y-Z間)約4.5m,東壁(X-Z間)約4.7m,西壁(X-Y間)は若干長く約5.0mを測り,面積は約27m2である.形状は多少ゆがんだ隅丸方形に近い.壁高は約30cmを有し,壁面には崩落した跡や壁直下に周溝は認められない.
 床面 全体に硬度2~3に相当する.
 ピット Wコーナー近くに直径約35cm,深さ40cmのピットが1本検出され,X・Y・Zコーナー付近では未発見である.
 炉址 Wコーナー寄りのところに存在するが,大部分はコンクリート基礎の下に入り,規模と形状を確認できない.
 埋没土 表土(撹乱層)の下が埋没土になる.ローム粒子を多量に含み,炭化物や焼土も微量に混入した明褐色の土砂である.
 遺物の出土状態 遺物は土器の破片152点と自然石11点である.いずれも竪穴内に廃棄されたものと考えられる.ドットによって記録した遺物の平面分布は,中央から南半部に多くみられる.一方,これの垂直分布をA-Bセクションを中心に幅2.0mの範囲で観察すると,確認から床面上に散在し,傾向としては床面付近が多くなる.
 土器破片の表裏関係を調べると,表83点(54%)+裏57点(38%)+立ち12点(8%)=152点(100%)という比率であり,従来の調査結果と大差がない.
 接合資料は,下記の1例である.
 接合資料1〈深鉢形土器〉102▽10・103▽13(口縁~胴部)
 時期 出土遺物は,後述する花積下層式から関山式期の深鉢形土器破片を主体に出土してはいるが,住居址内には数個の黒浜式類似土器や浮島式の混入も認められる.