遺存状態 第三号住居址の西側を切断して構築した住居址で,調査区の北端に給水管,南側に校舎の排水溝,西側竪穴内に配水管2本の埋設と撹乱溝があり,発掘できた面積は僅かに8.4m2である.遺存状態は悪いけれども,床面上には良好な貝層が堆積していた.
規模 東壁の長さ約4.3mまで確認できたが,形状や大きさなどは不明である.竪穴は確認時の記録によると,ローム面を約40cm掘り込み構築している.壁の直下に周溝は存在しない.
床面 周壁の近くは硬度2,中央に移行するにしたがい硬度3となる.
ピット 柱穴と思われるピットは認められなかった.
炉址 東壁から約1.0m西側に離れた床面上にあり,住居址内の位置的関係は不明である.長径約60cm,短形約40cm,深さ15cmの大きさを有し,底部に焼土・上部に灰が残っていた.
貝層の状態 埋没土の大半は廃棄した貝層によって占められる.A-Bセクションによると,床面上にローム・黒色土を僅かに混入したヤマトシジミの層aがあり,その上にマガキの純貝層b,ヤマトシジミの層c,マガキ層d,ヤマトシジミ層eが,約10cmの厚さで交互に堆積する.
この層序はC-Dセクションでも同様の状態で観察された.ヤマトシジミを主体としたc層中から,ハマグリ・サザエなどが混在して発見されているが,ハマグリは個体で出土する例が多く,稀に数個がまとまって出る場合もみられた.この点はマガキの出方と対照的である.サザエは全貝層から疎らに出土し,その数は12個にすぎなかった.
なお,A-Bセクションの2地点(A・Bブロック,大きさ25×25×25cm)から採集した貝の組成は次のとおりである.
遺物の出土状態 貝層から600片,貝層外の埋没土中から約200片の土器破片,磨製石斧?1個,石鏃2個,自然石29個などが出土した.平面分布図に収録したドットは,主に貝層外の遺物であって,貝層中の遺物含有状態もほぼ同様に理解してよい.大部分の遺物は,第三号住居址とほぼ同様の傾向を示し出土している.土器破片中には若干の接合資料も存在する.
貝層中の動物遺存体についてみると,獣骨片のニホンジカ・イノシシなどは,aとcの層中に含まれていたものが大部分を占めるが,量的には魚骨に比較するとはるかに少ない.魚骨片クロダイ・スズキなどは,c層(ヤマトシジミ)の上面付近一帯に目立ち,出土量も多かった.とくにクロダイは各部位骨(上顎骨・歯骨・鰓蓋骨・角骨・脊椎骨・臀鰭棘など)が多く採集されている.また,貝層から床面上にかけては鹿角,イノシシの下顎骨,釣針,刺突具,鹿角未成品など多くの有意義な遺物が発見された.
時期 貝層と貝層外の出土土器は,ほとんど区別できず,花積下層式・関山式に比定され,後者の大型破片が量的に多くなるように見受けられる.
第五図 第三・四号住居址実測図(1)
第六図 第三・四号住居址実測図(2)