第四章 出土遺物の概要 1 土器

 今回の調査で検出された土器は,前期前半の花積下層式・関山式期に比定できる資料で、すべて胎土に植物性繊維を混入している.花積下層式にあたる土器は全体の65%以上を占める.この中に数例の単軸絡条体による東北系の網目状土器が含まれ,その他に若干の黒浜式類似土器,浮島式土器などが混在する.
 出土した土器の文様の種類・構成は図のように大別できる.1~6までが花積下層式期に該当する.1は原体R{LL・L{RR,2は原体R{LL・L{RR(R・Lは3本撚り)による羽状縄文である.この他にもR{LLL・L{RRRの原体による羽状縄文も出土している.今回の調査では2の縄文が最も多く出土した.3は口縁部に刻目のある隆起帯を4本貼り付けている.4は複合の口縁部に,箆状の工具による沈線文を鋸歯状に施文する.5と6は,口縁部に類似した文様構成をもつ.
刻目のある隆起帯で区画した内部には,撚りの異なる2本一組の撚糸圧痕文を蕨手状に上向きと下向きの交互に押捺し,その中心と末端部分に円形竹管文を配している.さらに短い沈線を,5は矢羽状に6は帯状に充填した構成である.
 関山式期に該当する土器は7~10である.7は原体R{LL・L{RRでループ文を施した羽状縄文8のようにループ部分のみを施文する縄文も多くみられた.9は平行沈線文の間を同じ工具を用いて鋸歯状に施文しており,関山式の基本的モチーフである.10は小瘤文(貼付文)と刺突列によって構成される文様であるが,複列の場合,花積下層式の撚糸圧痕文を思わせる施文法がみられる例もある.
 花積下層式土器の器形は,ほとんどが口縁部を僅かに外反させた深鉢形を呈する.口縁部は平縁と波状があり,前者が多い.撚糸圧痕文などによる口縁部文様帯を有するものは,波状口縁の傾向がみられる.波状口縁をもつ土器は,口辺部が外反し,胴部上半ですぼまり,下半で若干脹らみ底部に移行する.底部は上げ底(縄文施文)と平底(無文)があり,上げ底が多く出土している.
 関山式土器も,花積下層式の器形に類似し,口縁部が僅かに外反するもの,外反せず直線状に開き,ややふくらむ胴部から底部に移行するものがある.底部は上げ底である.(仁平妙子)
 今回出土した花積下層式の特徴は,先学が指摘されたように,本式の中でも新しい段階に属し,関山式にはこれらに続く古い要素がうかがわれる好資料である.

第七図 文様摸式図

第八図 第一号住居址出土土器実測図

第九図 第二号住居址出土土器実測図

第一〇図 第三号住居址出土土器実測図

第一一図 第三・四号住居址出土土器実測図

第一二図 第四号住居址出土土器実測図(1)

第一三図 第四号住居址出土土器実測図(2)

第一四図 第四号住居址貝層出土土器実測図(1)

第一五図 第四号住居址貝層出土土器実測図(2)

第一六図 第四号住居址貝層出土土器実測図(3)

第一七図 第四号住居址貝層出土土器実測図(4)

第一八図 確認調査出土土器実測図