第五章 動物遺存体の概要 1 貝類

 第四号住居坑内の貝層から検出された種類は,腹足綱7種,斧足綱4種である.
 A 腹足綱(巻貝類)     B 斧足綱(二枚貝類)
  1 クロアワビ         1 マガキ
  2 サザエ           2 ヤマトシジミ
  3 オオタニシ         3 ウネナシトマヤガイ
  4 ヘナタリ          4 ハマグリ
  5 ウミニナ
  6 アカニシ
  7 ツメタガイ

 A 腹足綱
  クロアワビ 湾口部の海水の影響を受ける岩礁域に棲息する貝である.殻内面の光沢を帯びた破片が若干出土している.
  サザエ 潮間帯下の岩礁に褄む.合計12個の蓋が検出された.大きさは最小20×19mm,最大48×48mmまであり,45×41mm程度のものが多い.
  オオタニシ 淡水産の貝種で湖沼が棲息地である.殻長付近欠損,殻径25mmの大きさの個体が発見されている.
  ヘナタリ 潮間帯の砂泥底に棲む種類である.殻高約25mm,殻径9mmの標本が数個出土している.
  ウミニナ 潮間帯の小石・砂底にみられる貝で,殻高は約25mmの大きさである.
  アカニシ 潮間帯よりやや深い砂泥底に棲む貝である.殻頂と殻口を欠く.殻径約95mmの個体が1個発見された.
  ツメタガイ 潮間帯下の砂泥から採集した貝である.標本は僅かに1個で,殻口付近を欠損する.

B 斧足綱
  マガキ 河口付近の比較的塩分の低い岩礁に付着する.ヤマトシジミについで多く出土した貝である.貝層中からの出土状態は,すでにのべたように,個体として出土する例は少なく,厚さ5~10cmの層をなして存在する傾向がみられた.大きさは殻高50~65mmほどに成長したものが多い.
 ヤマトシジミ 貝層の主体となる種類で,海水が流入する河口・潟などの砂泥底に棲む汽水産の貝である.地点別サンプリングの殻長出現率は別図に示したとおりであって,両地点とも26~30mmの大きさが42~46%を占め,21~25mmのものが22~28%,31~35mmの大型貝が21%前後の比率で近似する.最小殻長は11mm,最大殻長は42mmまで計測できた.茨城町権現峯貝塚(関山式期)の殻長ピークは20~25mmであるから,やや大型の貝が多いように思われる.
 ウネナシトマヤガイ 内湾奥の潮間帯の岩礁に付着する小型の貝である.標本はすべてB地点のブロック内から検出されている.殻長19~25m程度の大きさのものがみられる.
 ハマグリ 内湾の潮間帯や浅海の砂泥地に産する.地点サンプルからの出土は4個であるが,総数で99個を検出した.計測可能な標本53個(貝刃11個を含む),破損して計測不可能なもの46個である.殻長は29~98mmの範囲内に分布する.殻長50~60mmの中型貝がピークで約54%を占め,それより大型のものが36%前後検出され,全体としてみれば中・大型の貝が多いように思われる.

第二四図 ヤマトシジミ(上)・ハマグリ(下)殻長分布図