第三章  発掘調査の概要

 市道常澄6-0008号線は,大串町をほぼ東西に横断する北関東自動車道の下を貫通する道路である.この道路は,台地縁を数m削平して建設するために,そこに所在する第二号墳の西側墳丘が道路敷内に入り,発掘調査の対象となった.また,周囲の山林と畑地には,住居址や土壙などの埋没が充分に考えられる地形を呈しており,後期縄文土器や土師器片が僅かに散在する.
 平成6年2月以降,市建設課,市教育委員会と再三にわたり,本古墳の調査方法について協議を進め,記録保存の立場から,墳丘と周溝だけの調査に限定せず,道路として掘削される部分の表土を除去し樹根(樹齢約50年)を取り払い,全面的に発掘調査を行うことに決定した.
 発掘調査は,古墳の調査に主体をおき,墳丘下のローム面における遺構,墳丘周辺(主として西南側)の遺構の有無を確認する調査とに区別される.
 古墳の調査については,戦時中の旧陸軍が掘った防空壕の構築工事に伴い,墳丘を含めた周囲の土砂がかなり移動しており,それが円墳なのであるか,それとも前方後円墳としての形状を呈するのか判然としない.この墳形の全容を確認することは,今回の調査目的外で,これは別に考える問題である.
 発掘調査にあたっては,墳丘を中心に周囲の測量図を作成した後で,墳丘の発掘と周溝の確認,埴輪列の調査,道路敷地内の表土除去作業を実施し,古墳築成以前の遺構を確認することに努めた.
 その結果,墳丘西半部のローム面においては,弥生時代後期の略円形を呈する竪穴状遺構が1基,古墳時代前期の竪穴住居址1軒が出土し,それぞれ有意義な資料を多く発見した.
 また,墳丘外の西側ローム面では,本古墳に伴う周溝とは別の溝状遺構が出土した他に,古墳時代前期の竪穴住居址2軒を調査し,あわせて旧陸軍の防空壕2か所を検出した.こうした各遺構の確認作業中に,縄文時代前期の土器破片も散見できたので,この時期に関係する遺構を期待したがついに出土しなかった.
 以上に記述したように,今回の調査で発掘した遺構は,下記のような時代と種類にわけられる.
 弥生時代後期 竪穴状遺構   1
 古墳時代前期 竪穴住居址   3
 溝状遺構           3
 旧陸軍の防空壕        2
 撹乱穴            若干

第四図 墳丘と遺構分布図