平成6年2月以降,市建設課,市教育委員会と再三にわたり,本古墳の調査方法について協議を進め,記録保存の立場から,墳丘と周溝だけの調査に限定せず,道路として掘削される部分の表土を除去し樹根(樹齢約50年)を取り払い,全面的に発掘調査を行うことに決定した.
発掘調査は,古墳の調査に主体をおき,墳丘下のローム面における遺構,墳丘周辺(主として西南側)の遺構の有無を確認する調査とに区別される.
古墳の調査については,戦時中の旧陸軍が掘った防空壕の構築工事に伴い,墳丘を含めた周囲の土砂がかなり移動しており,それが円墳なのであるか,それとも前方後円墳としての形状を呈するのか判然としない.この墳形の全容を確認することは,今回の調査目的外で,これは別に考える問題である.
発掘調査にあたっては,墳丘を中心に周囲の測量図を作成した後で,墳丘の発掘と周溝の確認,埴輪列の調査,道路敷地内の表土除去作業を実施し,古墳築成以前の遺構を確認することに努めた.
その結果,墳丘西半部のローム面においては,弥生時代後期の略円形を呈する竪穴状遺構が1基,古墳時代前期の竪穴住居址1軒が出土し,それぞれ有意義な資料を多く発見した.
また,墳丘外の西側ローム面では,本古墳に伴う周溝とは別の溝状遺構が出土した他に,古墳時代前期の竪穴住居址2軒を調査し,あわせて旧陸軍の防空壕2か所を検出した.こうした各遺構の確認作業中に,縄文時代前期の土器破片も散見できたので,この時期に関係する遺構を期待したがついに出土しなかった.
以上に記述したように,今回の調査で発掘した遺構は,下記のような時代と種類にわけられる.
弥生時代後期 竪穴状遺構 1
古墳時代前期 竪穴住居址 3
溝状遺構 3
旧陸軍の防空壕 2
撹乱穴 若干
第四図 墳丘と遺構分布図