周溝の確認は,まず墳丘の西側に第一トレンチ(幅3m,長さ12m),第二トレンチ(幅3m,長さ14m),第三トレンチ(幅3m,長さ16m)を設定することから始め,墳丘のA-B断面と合わせて調査することにした.なお,トレンチの長さが予想される周溝の幅以上に長く,道路の幅員全体に延長したのは,すでに述べてきたように,住居址その他の遺構検出を想定し調査する目的からである.
各トレンチは,表面から20~25cm掘り下げたところでローム面に達した.裾部に近い東端部には,当然検出されるはずの周溝が存在せず,第一トレンチ内に第二号住居址と細く浅い溝状遺構,第二トレンチ内に第三号住居址と溝状遺構,第三トレンチ内では東西方向に浅い溝状遺構が発見されただけである.この3本の確認トレンチにおいて,周溝を発見できないということは大変めずらしく,調査区全域を完掘した時点であらためて調査することにした.
墳丘および墳丘外調査区の表土を除去したローム面からは,住居址,竪穴状遺構,溝状遺構,防空壕などが検出された.とりわけ,周溝と関係する遺構は,墳丘に沿って円弧を描く溝状遺構であるが,この溝は北側の台地縁に近づくと,大きくカーブしながら西方にのびてしまう.ローム面での上縁幅は1.15m前後,深さは僅かに36~50cmを測る.この溝はたしかに墳丘の一部を囲繞するような形状を示すけれども,本古墳に伴う周溝の規模としては,あまりにも狭小なのである.裾部付近の表土(厚さ約25cm)を観察しても,土層の切り合い関係は明瞭にできないし,ただちに周溝と決めるには躊躇せざるをえない面もある.
第一六図 埴輪および溝状遺構図