4 埴輪の出土状態

4 埴輪の出土状態(第一六~二〇図,図版第一二~一五)
 墳丘における埴輪の出土状態を観察すると,まず南側墳丘においては,裾部付近に防空壕があり,封土自体が削りとられた状況を呈し,付近から円筒埴輪の破片が若干出土している.あるいは裾部に埴輪列がめぐっていたかも知れない.
 西側は,測量図からも比較的原形をとどめているようにうかがわれるが,埴輪列は発見できず,撹乱穴と第一号溝状遺構内に,破片が落ち込むような状態で出土した.しかしそれは個体としての円筒埴輪が転倒して割れた状態を示すものではない.埴輪の破片(人物・動物)は,このあたりから北側にかけて集中的に散在するようになる.
 北側は,裾部付近が台地縁と重なり,20~30°の傾斜をもって支谷に移行する.ここの裾部に多くの破片を含む円筒埴輪や人物・動物埴輪などが出土した訳である.埴輪が存在する状態は,未調査区の墳丘側から大略A・B・C・Dのブロックにわけられ,ほぼ直線状を呈し,約5mの範囲内に集中して発見された.
 (1)Aブロック(第一七図)
 すべてが円筒埴輪である.上部の破片(下半部と同一個体)をとりのぞいた下部(ローム面上5cmの黒色土中)に,円筒埴輪の下半部4本が10~15cmの間隔を保ち,すべて墳丘の外側に35~50°傾いた状態で出土した.これは本墳における埴輪配列のありかたを示す好事例と思われる.

第一七図 Aブロック埴輪出土状態図

 (2)Bブロック(第一八図)
 この範囲は人物埴輪が多く出土したところである.基部(形象埴輪の半身像を乗せる台部)が,約1.2m離れて2か所に存在し,頭部も出土しているので,複数の人物が配列されていたことは確実であろう.その中心となるのは,基部の上端から折れて転倒破損した武人の埴輪で,衝角付冑を被り,挂甲を着けている.このほかにも男子と女子の頭部,胴部,腕部,手部などの破片がみられる.

第一八図 Bブロック埴輪出土状態図

 (3)Cブロック(第一九図)
 Bブロックの西側近くに人物埴輪の基部,約50cm離れて動物埴輪(馬)の脚部各2本がほぼ並んで出土し,その周囲に太物の胴部,腕部,円筒の破片などが混在して発見されている.ここより約1.0m下方から男子の頭部,さらにそれより下の斜面には,鞍部,鈴,円筒の破片などが約50×80cmの範囲に散在していた.これらはいずれも上方から転落したものである.

第一九図 Cブロック埴輪出土状態図

 (4)Dブロック(第二〇図)
 裾部から約5.0m離れた西側台地縁の緩斜面上に存在する.大部分の埴輪は円筒の破片であるが,馬の脚部(Cブロック出土の脚部とは別個体)破損品1本も検出されている.出土状態は,基底部を残す4本の円筒のうち一部を除き,原位置から移動して破損したように見受けられる.

第二〇図 Dブロック埴輪出土状態図

 以上の出土状態を基に考えると,明確に断定しえないけれども,ここでの埴輪列は,東から円筒(4本)-男子または女子-武人-男子または女子(2体)-馬(2頭?)-円筒(4本?)の順に並んでいたようにうかがわれる.