底部から口縁部に移行する形状は,ほとんど直線状に外傾しながら開くものである.Aブロック出土の1が標式となる.この埴輪は,底部1段,体部2段,口縁部1段の4段構成で,凸帯3本を貼付し,透孔は体部の2段と3段に各2個ずつ,いずれも十字になる位置に穿孔される.各部の外面は,縦位の刷毛目(工具幅約2.5cm,刷毛目数8本/cm)で調整するが,口唇部付近は横なで手法を施す.内面の調整は,口唇部の横なでを除くと,体部と底部間に指頭による縦・斜め方向のなでを行っているが,部分的に粘土紐の積み上げ痕を残す.器高52cm,口径25cm,底径14cm,器厚1.5cm前後を測る.焼色は赤褐色を呈し良好である.
口唇部付近を欠失した2は,1と同様の形状を呈するものと思われる.各部位の構成は,ほぼ前者に類似するが,本例では透孔が体部の第2段になく,第3段の下方に小さく(径約4cm)穿孔される.成形および整形の技法はほとんど変らない.現存器高約45cm,底径約17cm,器厚1.0~1.5cm.焼成は全体に良く赤褐色を呈する.
B 外反形円筒埴輪(第二一図3・4,図版第二二)
底部から体部が斜上方にほとんど直線状を呈して立ち上がり,口縁部に至って外反しながら開く器形である.図示した3と4(Aブロック出土)が該当する.各部位は,底部1段,体部2段,口縁部1段の4段に構成され,凸帯は3本貼付,透孔は2と3段に存在し,各2個ずつ十字になるように配置穿孔している.外面は,口唇部と3本の凸帯に横なで,口縁部・体部・底部に縦位の刷毛目調整を施す.内面は,口縁部上半に丁寧な横なでを行い,体部と底部に指なでを施すが,全面ではないので所々に接合痕を残している.概して体部の調整は粗雑である.口唇部・口縁部や凸帯などの形状と技法に極めて類似性が強い.色調は黄褐色ないし赤味を帯び,焼成は良好である.3は器高49cm,口径約26cm,底径16cm,器厚1.0~1.5cm.4は器高54cm,口径28cm,底径14cm,器厚1.0~1.5cmを測る.
第二一図 円筒埴輪実測図(1)
第二二図 円筒埴輪実測図(2)
第二三図 円筒埴輪実測図(口縁部)
第二四図 円筒埴輪実測図(体部)
第二五図 円筒埴輪実測図(底部)