1 第一号溝状遺構(第一六・三三図,図版第一六)
墳丘の裾部付近をあたかも円弧を描くように囲繞し,北側の台地縁近くで西南に向きを変えてのびる細い溝である.本来ならば,ここに発見される溝は,墳丘の大きさから考えて幅3.5m前後,深さ1.0m前後の規模を有し,裾部を囲繞する筈である.しかるに,今回出土した溝は,墳丘の南西側を7.0mほど弧状にめぐるが,溝幅上縁で僅かに1.1~1.3m,深さ30~50cmの規模である.そして形状的には西南に向きを変えてのびてしまい,墳丘を囲繞するものではない.溝の形状と規模を総合して考えると,古墳の築造に伴う周溝とするには問題が多すぎると思う.
なお,この溝は第二号住居址(古墳時代前期)の東壁を切断して掘り込み,大きくカーブするあたりの溝内部には,円筒埴輪の破片が墳丘から転落したような状態で出土している.
第三三図 溝状遺構断面図