1 縄文時代の遺物(第三五図,図版第三二)
採集できた遺物はすべて土器の破片である.時期別には早期および前期後半から中期前半に比定できる.
早期縄文土器 口縁に平行して箆状工具で沈線文を施し,その下に角押文的刺突列を押しつけた1は,口唇断面が内側にそがれ刃形を呈する.他の前期後半の土器に比して胎土,焼成は竪緻である.口唇部の形態は三戸式に対比させて考えられる.2と3も同一型式であろう.この種の土器は,北関東および東北地方の沈線文系の土器である.
前期縄文土器 半截竹管工具を使用して,二本の沈線を同時に施文し,横位,斜位,縦位,山形状,波状または曲線状に描くグループには,横位に平行沈線を施す4・7,横位と斜位の沈線を組み合わせた5・6,縦位沈線の13・14,山形文を重ねる11,波状または曲線を描く9・12などが認められる.こうした仲間には,地文としてアナダラ属貝殻の腹縁を施文した6,撚糸文をまばらに押捺した7・8・11・27など浮島I式の要素を備えた土器が存在する.16は有節平行線文や爪形文列を表出し,その下に撚糸文が押される.17は爪形文と平行沈線文,18~21は有節平行沈線文,22は幅広い平行沈線文を施文するが,一部に有節沈線化がみられ,波状口縁の頂部から短い沈線で連続的に縦に区画する.器外面に凹凸のある粗雑な土器の口縁部23には,半截竹管工具を斜めに刺突した跡を残す.波状貝殻文を施文した土器には,ハマグリのような二枚貝の腹縁を使った連続波状文24・25と,アナダラ属貝殻の腹縁をずらしながら表出した連続波状文29がある.前者は浮島II式,後者は同Ⅲ式に対比して考えられる.30は幅広の変形爪形文列の間に,刺突文を配した土器で,浮島II式の文様構成を示している.
中期縄文土器 口縁端部を欠失する31は,半截竹管工具による沈線を横走させ,直線,波状あるいは有節線状に施文している.口辺部の形態は,内側が内湾曲するように開いて肥厚し稜を形成し,中期初頭的な特徴を有する.32~34は胴部の破片である.前二者には,縄文地の上から方形状,渦巻または曲線状の沈線で施文した文様構成を示す.市内の高天原遺跡(『高天原』水戸市高天原古墳発掘調査会 昭和60年5月)その他にも類例があり,大木的性格の強い在地の土器と考えられる.
第三五図 墳丘・墳丘出土遺物実測図(1)