北屋敷古墳(第二号古墳)については,平成6年3月15日から4月27日にかけて,市道常澄6-0008号線の改良工事に伴い,墳丘の西半部とその周囲の道路建設部分を調査した.
発掘調査の概要と出土遺物は,本書に所収した報告書『水戸市北屋敷古墳』に記述したとおりである.
この発掘調査においては,墳丘の北側,支谷に面した裾部付近から円筒埴輪列をはじめ,形象埴輪としての男子,女子,武人像や馬などが出土した.ここの人物埴輪は,顔面の表情の表現もすばらしく,鈍色の彩色を施す点にも多くの興味がもたれる.また,墳丘下のローム面では弥生時代後期(十王台式)に属する略円形の竪穴状遺構1基,墳丘下と外部のローム面からは,古墳時代前期(五領式)の竪穴住居址3軒,溝状遺構などが検出され,多くの有意義な学術資料を獲得し,発掘前の予想をはるかに上回る成果を挙げ,同時にこれらの資料が常澄地方の先史・古代史の究明に大きく寄与できることになった.
以上のような第一次調査の成果を踏まえて,市教育委員会は,未発掘の埴輪を含めて残存部の古墳を保護しようという観点から,この機会に未確認の墳形と埴輪の配列状況を把握し,学術資料として記録保存する方向で検討を行った結果,墳形確認のための第二次調査を実施することになった.
このたびの確認調査は,第一次の発掘に引き続き,市教育委員会の指導と助言を仰ぎながら,私たちの調査関係者が従事することになり,そのための諸般の準備が整えられた.調査は平成6年6月23日に,関係者出席のもと慰霊祭を厳修し発掘を開始した.
なお,確認調査を実施するにあたり,地主の宮部久夫氏をはじめ,調査地の交渉にあたられた市建設課,調査の指導と助言を賜った市教育委員会生涯学習課の各位に対し,ここに深い感謝の意を表すものである.