第三章  調査区内出土の遺構

 墳丘の東側周溝を確認するために設定した第五調査区は,地表面下約50~70cmでローム面に達する.ここのローム確認面で,略東西方向にのびる土壙状遺構(東壁一部撹乱)が発見された.
 形状は,平面形が隅丸長方形を呈し,掘り込んだ周壁と底面に,厚さ約15cmの褐灰色・青白色粘土を一様に貼付したものである.全長約2.8m(内法約2.6m),幅約1.3m(内法約1.1m),確認面からの深さ西端部付近で35cm(内法20cm),東端部付近で25cm(内法15cm)を測る規模で残存する.短軸の断面形は,U字状を呈して底部から立ち上がる形状をみせるが,明らかに中程で切断されたような状態である.遺体を埋納するための施設であれば,おそらく構築当初の周壁は,すくなくとも50cm前後の高さが必要と思われる.
 内部には,黒褐色のロームを含んだ土砂が充満し,その中に図示したような状態で大小15個の自然石(砂岩・安山岩など)が検出され,これ以外には全くなんらの遺物も出土しなかった.良好な各種埴輪を出土した本古墳に伴う埋葬施設というには,規模的にもいささか貧弱にすぎる.
 これと似た事例では,平成3年11~12月,ゴルフ場造成に伴う東茨城郡茨城町所在の神谷(かんや)古墳群の墳形確認に際し,第6号古墳(帆立貝式前方後円墳)で調査したことがある(井上義安・青山俊明『茨城町神谷古墳群』茨城町神谷古墳群発掘調査会 平成5年4月).このときの記録によると,ローム面に掘り込んだ墓墳の形状は,①隅丸長方形に近く,②周壁に10~15cmの厚さで粘土を貼付する.大きさは,③全長約2.5m,幅約1.3m前後,深さ推定55~67cmである.未発掘のためにこれ以上のことは判明しえないが,①~③の内容は本遺構と極めて類似しており,いずれにしても埋葬施設であることには変りないと思う.
 ちなみに,この古墳の規模は,全長約15m,後円部径約11m,前方部長さ約4m,同幅推定8.5m,くびれ部幅約7m,後円部の高さは地山のローム面から約1mを測る小型のもので,規模の点からは北屋敷第二号古墳と比較にならない.