第五章 出土遺物の概要

 第一~五調査区内においては,多くの円筒埴輪破片に混在し,封土中から縄文土器,土師器,須恵器,内耳土器やかわらけなどが発見された.それらの遺物は下記のような内容である.
 1 縄文土器(第九図,図版第一五)
 縄文土器は破片数約80個をかぞえ,早期と前期に大別される.早期の破片は,第三調査区内の01が該当し,太い沈線を縦位に並列,その下に細い沈線を横走させたもので,この特徴は田戸下層式に対比できる.前期の土器のうち第一調査区の4は,器面が多少磨滅しているが,繊維を混入した土器で前半の花積下層式期,第三調査区の145も繊維を含有し,瘤状突起と円形竹管文を配した波状口縁土器で黒浜式期に比定される.その他の破片類はすべて後半の浮島系に該当する.撚系文地に各種文様を複合させたI式から,平行沈線文や変形爪形文を主体としたII式,連続貝殻文を施文した319などがあり,条線文と平行沈線文・有節平行沈線文の320は,新しい要素を備えた土器になる.総じて前回の道路部分から出土した土器に比較すると,前期後半の浮島式の内容はほとんど大差ないといえよう.

第九図 調査区出土遺物拓影図

 2 土師器(第一〇図1~12,図版第一六)
 約270個の破片は前期から中期に比定されるものである.1と2は口縁部がくの字状に外反する甕形土器で,器面に刷毛目が斜行する.3は小型の台付甕形土器であり,口縁部と台部の一部を欠失する.器面は箆なでを施す.4は口縁部が直立ぎみに立ち上がって外反し,胴部は球状に大きく膨らむ壺形土器である.5は有段口縁の壺形土器で箆により調整される.6と7は底部の破片で,前者に刷毛目,後者に箆削りが残る.8は口縁部がくの字状に開き,底部を欠失する鉢形土器で器面は箆で調整する.9の坏形土器にも箆による調整痕がみられる.10は器受部を欠損した器台形土器である.器受部の底部中央と外反する脚部に小円孔が穿たれる.11は粗製の異型器台形土器の破片である.12は高坏形土器の脚部に相当し,外面に箆なで,内面に輪積痕を残す.
 3 須恵器(第一〇図13~17)
 13は口唇部中央が若干くぼみ,ほとんど直線状に開くので多分コシキの破片であろう.14~17は全て大型甕の底部破片で,さまざまな形状を呈している.
 4 内耳土器(第一〇図18・19)
 口縁部と胴部の破片が若干存在する.18は僅かに内湾して開き内面に稜を有する.19の口縁部も丸味をもち,口唇部の内外面を肥厚突出させている.器面はなでを施し,外面に媒が付着する.
 5 かわらけ(第一〇図20・21)
 土師質のかわらけは,墳頂部の祠から転落埋没したものらしい.2例とも皿形を呈し,体部は弱く内湾しながら立ち上がる.水挽き成形で底部に回転糸切り痕が残る.赤褐色.良好.

第一〇図 調査区出土遺物実測図