那珂川:那珂川は栃木県の那須岳を源とし,御前山村から茨城県に入り,水戸市をはじめ多くの市町村内を流れて太平洋に流入している。その流域面積は3,269.1平方キロメートルで,幹線流路延長は149.7キロメートルである。この河川を構成する主要な支流は,県内では緒川,桂川,藤井川,桜川,涸沼川などである。
那珂川はアユの生息河川であり,秋にはサケも遡上し,流域の涸沼では海からの遡上魚,淡水魚などが豊富である。
那珂川の水利用(茨城・栃木)は約285立方メートル/秒(慣行を含む)で,発電が69パーセント,農業用水が30パーセント,上水道用水・工業用水がわずか1パーセントという割合になっている。その利水状況を地域的にみると,発電・農業用水を中心に大部分は御前山村野口地点より上流であり,野口より下流では,主に農業用水に13.36立方メートル/秒,上水道用水・工業用水に3.506立方メートル/秒程度利用されているだけである。那珂川の中流部にあたる野口地点の平均低水流量は35.7立方メートル/秒である。
那珂川の洪水は,大雨などによりときどきあった。昭和13年6月の記録的な大雨による水害は,下市の城東・浜田両地区を中心に流出家屋,全・半壊家屋,床上・床下浸水など3,788戸に及ぶ被害であった。
藤井川:藤井川は那珂川水系の支流で,西茨城郡七会村の鶏足山の東斜面を源にして東に流れ,那珂川右岸の段丘を開析して飯富付近で那珂川に注いでいる。その流域面積は108.7平方キロメートル,幹線流路延長は29.7キロメートルである。この河川の支流には郷戸川・大谷原川・北ノ根川・塩子川・前沢川・西田川などがある。
常北町下古内には,既設の防災ダムを改造して昭和52年3月に完成した総貯水容量400万立方メートルの多目的ダムの藤井川ダムがある。このダムの完成によって,ダム地点の計画高水流量545立方メートル/秒のうち,335立方メートル/秒の洪水調節,利水としては農業用水に0.773立方メートル/秒,水戸市の上水道用水に0.334立方メートル/秒,常北町の上水道用水に0.02立方メートル/秒などの取水が許可されている。