1 水とは

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 水と人間とのかかわりはいうまでもなく強い。人間の体の約70パーセントは水分であるといわれるので,体重70キログラムの人なら約49キログラムは水分ということになる。そのため我々は1日牛乳びん約7本半分の水分を新たに取る必要があり,水なしで生命を維持することはできない。

 それだけに,古代から水を入手しやすい場所が生活の場として選ばれてきている。原始の時代から「毎日飲み水が得られるかどうか」が,居住地選定の最重要ポイントとして考えられてきた。

 ところが,現在我々の生活はどうだろうか。水の重要性は生理学的には,古代においても現在においても何ら変化していないにもかかわらず,その認識においては大きな差異を生じてはいないだろうか。現代は,水のある所に家を建てるのではなく,家を建てる所に水を運べばよいのである。我々は飲み水のないことの苦しさを年に何度味わうであろうか。特に気候的にも地理的にも恵まれている水戸市民にとっては,夏の渇水のニュースも遠く離れた対岸の火事と同じである。水の必要性,重要性を思い出すのは,停電や水道工事などによる断水の時だけではないだろうか。

 水道のじゃ口をひねれば必要に応じていくらでも水を使うことのできる現在の生活は,確かに便利である。しかしこのような恵まれた生活ができるようになったのは,水戸においても歴史的には最近である。それ以前は黙々と水を得る努力を積み重ねており,水を得る仕事は生活の中の主な部分となっていた。