1 水道係と水道区会条例

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 水道係は,大改良工事の先駆として増水工事のための基礎調査に,笠原水源地に数か所の掘抜井戸を掘った。それは水脈に当たらず,結果的には経費の浪費とみられてしまった。しかも,この工事については,水道一般の管理機関であった水利土功会の承認なく始めたもので,その支出について水道係と見解が異なった。明治27年,水道改良工事を遂行するために選出された吉田弥一郎・臼井義賢・金子八郎右衛門ら水道係は,その責務の実行なかばで退陣させられた。

 市会は,トラブル続きの水利土功会を行政的に強化するため,改革を目的とする調査委員会を同28年に設置した。委員は市会議員で,曲尺手町の広瀬賢之介,八町目の大貫寅吉,本四町目の金子八郎右衛門と金町の桧山茂三郎,馬口労町の柳沢平であった。

 その結論をもとに水利土功会を解散させ,明治30年2月に市制第113条により水道区会を設けた。水道区会を,市会や市行政機関に直接支配されない議会制度にしたのは,水利土功会の成功していた面である利害関係者による水道の運営を主としているからである。

  区会条例

第1条 市制第113条ノ規定ニヨリ水戸市内水道ニ関スル区ニ区会ヲ設ク

第2条 区会議員ノ定数ハ12名トス

第3条 区会議員ハ市会議員ノ被選挙権ヲ有シ其ノ区ニ居住スル者ヨリ選挙ス

第4条 区内ニ住居スル市公民ハ総テ区会議員ノ選挙権ヲ有ス但シ公民権停止中ノモノ及市制第9条第4項ニ該当スルモノハ此限リニアラス

第5条 区会議員ノ選挙ハ市制第13条階級選挙ノ例ヲ用ヰス単級選挙トス

第6条 区会議員ハ名誉職トス其ノ任期ハ6年トシ毎年其半数ヲ改選ス但シ退任議員ハ再選セラルルコトヲ得

第7条 区会ノ議決スヘキ事件ノ概目左ノ如シ

  1 区費ヲ以テ支辨スヘキ水道事務

  2 歳入出予算ヲ定メ予算ノ支出及予算超過ノ支出ヲ限定スル事

  3 決算報告ヲ認定スル事

  4 歳入出予算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負担ヲ為シ及権利ノ棄却ヲ為ス事

  5 区費及夫役品ノ賦課徴収法ヲ定ムル事

  6 区有財産処分ニ関スル事

  7 区有財産及営造物ニ関スル規則ヲ設ケ并改正スル事

  8 区ニ係ル訴訟及和解ニ関スル事

第8条 前各条ノ外区会ノ組織及選挙職務権限及処務規定ニシテ区会ニ適用シ得ヘキモノハ総テ市制ノ例ニ依ル

 区会議員の定数は,従来の水利土功会の議員数10人を参考とし,区域内戸数1,185戸の町内別分布をもとに決定。選挙権及び被選挙権は市会議員選出と同一のものとし,水道は別会計のため納税額による階級選挙制は採用しなかった。この区会議員は名誉職とされ,日当や出張旅費は支給されたが,賃金の支給はなかった。