3 運動資金は500円

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 11月19日,酒泉市長と神永助役は水道区会代表や下市地区の有志を呼んで,水道改修工事費について協議をした。その結果,水道区会の11月14日議決の水道改築には,同区域内住民だけにては実施不可能なることが理解された。そこで工事費の検討に入って,区会の試算6万9,000円を5万4,000円と圧縮し,半額を県の補助に頼り,残る2万7,000円のうち300円を市費の補助,2万6,700円は水道区費からと決定している。

 このとき県会が開会中であったため,市会の承認を得て市長が申請すると同時に議案として上程されるように,運動することになった。その運動必要経費としては,「義公(光圀)より下付せられたる所謂三口金と称する水道資金・教育資金・救済資金合せて百両が利に利を産し現今にては三万円の巨額に達しある」より500円を支出することになった。

 「其運動部署は成るべく親戚の関係よりすることとし七軒町佐藤五衛門氏は其女を薬師寺清右衛門氏の男彌太郎氏に嫁したる縁故により薬師寺氏に,曲尺手町広瀬惣八氏は其男栄次郎氏が飯田謙之助氏の女を娶たる縁故に依(より)飯田氏に,青物町大森市平氏は其妻と石岡町長矢口大次郎氏と姉弟の間柄なるを以て其関係より金子源兵衛氏に,神永助役は県会議員選挙の際全力を盡して援助したる関係より立花敏氏に手蔓を求め,其他下市々民にして苟くも県会議員若くは之れに関係あるものに多少の縁故あらば其方面より手を廻す筈にて昨今着々歩を進めつつあり」。(「いはらき新聞」明治36年11月19日)


明治36年11月19日「いはらき新聞」

 こうして下市地区の有志は,三口金より支出された日当と交通費を使用して,県庁や県会議員宅を訪問し,かつて自分たちも説明を受けた寿命の延びる水道の効用を,夢中になって語ったと思われる。