4 臨時水道部の組織

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 臨時水道部は,水道臨時委員会と同じ7月2日の市会で議案になり,町務委員会委員長大森卯之太郎より設置反対の陳情書が出るなど問題があったが,7月6日市会で設置の規程が議決されている。

 組織は,部長1名・理事1名・書記1名・技手1名・嘱託技師1名とされた。部長と理事については,水道臨時委員会委員の互選で決定することになっており,8月3日に森司馬彦と亀山佐兵衛が選出された。これに関して「いはらき新聞」明治41年5月25日に,「市水道部長は誰れか」と題した小文があって,関心を広く集めていたようである。嘱託技師は,水戸市役所に水道関係の技術者がいなかったため,県の技師である藤崎鍵次郎に依頼した。

 その支給額については,部長と理事は名誉職であったことから実費弁償月額30円,同25円,技手は月俸50円以内となり,旅費手当はつかなかった。

  臨時水道部

   部長   森 司馬彦       書記   井上広三郎

   理事   亀山佐兵衛       嘱託技師 藤崎鍵次郎

   技手   渋谷 源吉

 この水道部事務取扱いは,明治41年5月22日の市参事会において根本良顕が,つぎのような「水戸市政刷新方針」として演説したことより始まる。

1 用務章程を改正して,執務上の統一と敏活(すばやいの意味)とを期する事。

1 事務の整理と執務の簡捷(かんしょう)(手軽で動作が早い)とを要するため,時々吏員会を開設し其順序方法を講習する事。

1 水道改良工事に対しては,之が挙指(きょそ)(動作)の利便を謀る為め,水道部とも称すべき臨時施設の幹部を置き,一意斯業の任に当らしむべき順序方法を規(企カ)画する事。

1 各尋常学校に設けある商業補習科を活用せしめ,其実用に適するの道を講ぜしむべき事。

1 トラホーム予防及び治療上に対する順序方法を定むる事。

1 市に於て施すべき農会の方針を定め,之が実行を企図する事。

 この意見を原市長と須郷助役が真剣に受けとめ,水道部の事務章程編集を始め,根本良顕にその事務補助を依頼した。

 水道関係事務所は,明治41年3月現在の「水戸市下市水道改良工事目論見書」では,「下市本肴町2番地」にとある。そこは町会所とも呼ばれ,下市共有金で購入された80余坪の土地に平家建の家屋があり,下市区民の集会所として下市町務委員会が管理していた。

 それが明治42年5月20日に内務大臣などに提出された工事目論見書は「水戸市水道改良工事目論見書」となり,下市の名称はなく,水道事務所も水戸市役所内とされている。その間には,この水道改良事業に対する大きな意識上の変化がみられる。水道区会による下市だけの事業から,地区は限定されるが全市的事業として取り組む姿勢の確立であった。その過程で,上市区民と下市区民との認識のずれがあり,現在では問題にならないような点で各種の論争が展開し,市政を混乱させたこともある。

 こうして,『水戸市郷土誌』(水戸市下市男子尋常小学校編,未刊)に「水道工事ハ明治41年8月4日事務ヲ開始ス」とあるようになる。