事業体制が確立したため,明治41年9月から翌42年2月まで水源地と水路予定地帯の,詳細な実地測量の作業が行われた。これによって前回までの設計(「前設計」のこと)が不充分であることが判明した。それを修正した設計変更の実施可能な予算を組むと,10万9,700円になり,1万9,857円81銭が増額となった。この分の収入見込みはたたず,起債によることとして市会で3月28日に議決した。これをもとに4月9日,内務大臣に水道工事設計変更の申請書を,内務・大蔵両大臣に起債許可の申請書を提出した。
ところが,明治42年5月19日の市会で,設計変更書の不備の訂正をし,工事総額を10万5,800円(市公債7万5,600円・県費補助2万9,947円・給水区域内賦課徴収253円)と減額することが議決された。市当局は3度目の「水道改良工事目論見書」を作成し,5月20日内務・大蔵両大臣につぎのような文書で申請した。これに明治42年6月3日付で水道工事設計変更認可が内務大臣平田東助の名で,同起債許可が内務大臣と大蔵大臣桂太郎の名で下りた。
水戸市水道改良工事目論見書
第1 水道事務所ノ所在地
水戸市役所内
第2 水源ノ位置ハ,茨城県東茨城郡緑岡村大字千波字笠原新田地不動山麓及同県同郡吉田村大字福沢ヨリ湧出スル泉ナリ。水量ノ概算最少量1昼夜2万8,425立方尺ナリ。
水質ハ別紙第1号分析表ノ通リ(「5,工事の内容と経過」で記載)
第3 水道線路ハ,前記緑岡村大字千波字笠原新田不動山麓ヲ起点トシ吉田村大字福沢及吉田ヲ経過シ水戸市ニ達ス。
配水池ノ位置ハ吉田村大字吉田トス。
第4 給水区域ハ水戸市ノ一部
人口7,377人(明治41年12月末現在)
水量ハ1人1日,平均水量3立方尺。
第5 人口増殖ハ,水道改良後他ヨリ移住スルモノ或ハ各製造所ノ創設ヲ予想シ,人口8,000人ニ供給スルモノトシテ計算セリ。
第6 水圧ノ概算
浄水池低水面 39尺5寸
最低配水管中心 17尺6寸
高低ノ差 21尺9寸
水圧(1平方吋ニ付) 9封度5
第7 工事ノ方法別冊第2号設計書ノ通リ(「5,工事の内容と経過」で記載)
第8 起工ハ明治42年4月 竣功ハ明治43年3月
第9 工費ノ総額ハ金10万5,800円ニシテ,其金額ノ収入ハ己ニ許可ヲ受ケタル1ケ年8分ノ利付公債金5万9,800円ノ外更ニ1ケ年8分ノ利子付ニテ金1万5,800円の市公債ヲ起シ及県費ノ補助金2万9,947円ヲ受入シ,其足ラサル金153円ハ之ヲ給水区域ニ賦課徴収ス。
支出ハ,諸式購入又ハ使途ニ応シ随時之ヲ支払フモノトス。其予算ハ別紙ノ通リ(7,予算と決算)
第10 水料等級価格徴収方法及経常収支ノ概算,水料ノ等級価格及徴収方法ハ別紙給水規則ノ通リ(省略)
経費収支,概算ハ別紙ノ通リ(「7,予算と決算」で記載)