予算

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 明治36年11月に水道区会が議決した最初の改築案では,総工費は6万9,000円であった。その調達は前述したように,県費補助3万4,500円と市費補助300円,区会負担3万4,200円と計算された。補助金下付の運動の過程で,水道改築案は下市水道改良事業となり,水戸市当局が直接に遂行することとなる。改良費も,工事内容の再検討と物価高によって,明治41年5月28日の市会で8万9,842円19銭と正式に変更された。

 支出予定の内容は,つぎの表のように13項目よりなり,鉄管及同布設費に総工事費の55.95パーセント,土管及同布設費に11.28パーセント,貯水池工事費に9.16パーセント,消火用溜桝工費に5.21パーセント,共用栓工費に4.12パーセント,阻水弇排気弁及び同取付費に4.02パーセント,測量設計工事費に3.34パーセント,水溜桝及び阻水弇排気弁桝費に2.38パーセント,土留石垣及び木柵費に0.95パーセント,余水路工費に0.88パーセント,潰地費に0.87パーセント,架橋費に0.07パーセントそして予備費に工事費8万8,256円974の約1.8パーセントにあたる1.77パーセントが計上された。


下市水道改良費予算(明治41年3月)

 潰地費の780円は,導水管用地と貯水池用地からなる。導水管用地は,水源地より藤柄町まで延長2,040間幅平均2間で,面積1町3反6畝,1反歩50円の計算で680円である。貯水池用地は,長40間幅平均30間で,面積2反歩,1反歩50円の計算により100円とされた。

 鉄管及同布設費の5万267円75銭は,つぎのような材料費と布設工事よりなる。


鉄管及同布設工費

 また,鉄管1本当たりの工事費は,内径10吋が13円,同8吋が8円60銭,同6吋が5円50銭,同3吋が2円90銭であった。



鉄管布設1本当り工費明細表

 土管及同布設工事費は1万138円64銭4厘で,つぎのように見積られていた。


土管及同布設工費

 なお,土管の価格はつぎのようであり,それら1間当りの工事費は内径1尺土管は1円63銭,同8寸は1円25銭,同5寸は86銭とされた。


土管価格表


土管布設1間当り工費明細表

 阻水弇と排気弁及同取付費の3,615円については,つぎのように見積されている。


阻水弇排気弁及同取付費

 水溜桝及阻水弇排気弁桝費の2,140円70銭は,内法2尺角深3尺5寸の水溜桝など6個,内法3尺角,深5尺3寸の第3溜桝兼サイホン甲溜桝1個とサイホン乙溜桝及排水弁桝など9個,阻水弇排気弁桝33個の工費である。


水溜桝及阻水弇排気弁桝工費


第1・第2及サイホン甲溜桝1ケ所築造工費(内法2尺角深3尺5寸内面モルター(ル)厚8分塗)


第3溜桝兼サイホン甲溜桝工費(内法3尺角深5尺3寸内面モルター(ル)厚8分塗)


サイホン乙溜桝及第9号排水弁桝1ケ所当り工費(内法2尺角深4尺5寸内面モルター(ル)厚8分塗)


阻水弇排気弁桝1ケ所当り工費

 架橋費は,59円28銭である。


架橋費

 土留石垣及木柵費は,水源地の土留石垣や貯水池の土留石垣とそれら周囲の柵工事の経費854円25銭である。


土留石垣及木柵費

 余水路工事費789円60銭の内容はつぎのようである。


余水路工費

 貯水池工事費は,内法30尺角で,深7尺との規定で,つぎのように8,230円と見積もりされた。


貯水池工費(内法30尺角深7尺内面モルター(ル)塗厚8分)

 消火用溜桝工事は,水道改良事業の中心的関心事であった防火用水の確保であったから,下市に80個が計画された。1個の大きさが2尺角で深さ3尺5寸とされ,58円50銭と見積もりされている。


消火用溜桝工費1ケ所分明細書(溜桝内法2尺角深3尺5寸内面モルター(ル)厚8分塗水栓1ケ付)

 共用栓は下市地区に100個の設置が計画された。鋳鉄柱水口直径4分の3の設置単価が37円であった。



共用栓工費1ケ所分明細表(鋳鉄柱水口直径4分ノ3)

 工事費8万9,842円19銭に対する収入予定は,県費補助を2万9,947円とし,残る5万9,895円19銭を7分の市公債を発行することにした。


水戸市水道改良工事予算書(明治41年3月)

 その後,布設の具体化や経済事情の変化により,明治42年2月に設計を修正して工事費は10万9,700円に更正された。それもまた同年5月19日の市会で10万5,800円と減額更正され,最後の実行予算となった。その収入内容は,表のようで市公債は71.45パーセント,県費補助は28.31パーセント,給水区域内賦課徴収が0.24パーセントと予定された。41年時点での県費補助2万9,947円には変化はないが,市公債額が126.2パーセント増で1万5.704円81銭増加して7万5,600円となっている。


水道改良費予算(明治42年5月)

 支出予定項目は,同41年時の分け方と異なり,工事部門別に立てられた。大きくは水源地工費,導水管工費,配水池工費,配水管工費,用地費,工事監督費,測量設計費そして予備費と雑費となる。直接工事関係費は9万217円98銭8厘で,間接工事関係の監督費,測量設計費,予備費そして雑費はその17.27パーセントの1万5,582円1銭2厘であった。なお,予備費と雑費は5,441円55銭2厘で,その他の工事費10万358円44銭の5.42パーセント分にあたる。

 総支出10万5,800円に対する項目別支出とその割合は,表のようである。配水管工事費が一番に多く44.96パーセント(4万7,566円98銭9厘)を占め,導水管工事費18.64パーセント(1万9,718円91銭6厘)と配水池工事費の16.00パーセント(1万6,923円48銭5厘)を含めた直接工事関係費用が79.54パーセント(8万4,209円39銭)となっている。

 この予算を41年予算と直接比較することは,明細書が現存しないのでできない。一部分については,表のように分類ができるため,比較検討ができ,参考にはなる。総支出で1万5,957円81銭,117.76パーセントの増加で,測量設計費が「前設計」予算の75.15パーセントで745円6銭の減額である以外は,548.5パーセントで265円87銭5厘を増額した架橋費を最高に全体として増加している。


水道改良費予算の一部比較