水道市会

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 市当局は,3日間の水量調査の結果に自信をもち,9月4日に水道関係の問題を解決するために市会を開催した。のちに,このときの市会は,水道問題をめぐって論争が展開したこともあって,水道市会と呼ばれることになる。

 この時点での市会議員は,市の計画案に対して積極的に反対する下市派と賛意を表明する市長派,これの円満解決を考える中立組とに分裂していた。中立組は,妥協案を模索するために,開会に先立ち芝田屋支店などに会合して協議をしていた。

 市会は午後2時40分に25名の出席で始まった。最初に,長谷川助役より下市出水被害救助及び救護事務所になった水戸抄紙会社に対しての感謝状贈呈の報告があった。つづいて本議題に入り,川田久喜市長より水道拡張工事施行の件について提案説明がつぎのようにあった。

水戸市の中枢地たる柵町住民が泥水を飲んで生活するは,衛生上大危険なるのみならず,日夜出入する他国人に対して面目なし,依て来任後先づ区民負担の点より調査せしに,水道費負担は区内1戸当り実に3円16銭1厘の徴税なれば,負担戸数の増加を図ること急務也,依て柵町を加ふれば今年度に於て55銭,来年度に於て1円30余銭の軽減を見るべく,10年後には僅90銭の負担にて足るに到るべし,次に水源を調査せしに是れ亦た第2水源改善の結果豊富なるを認め,斯くて延設は一挙両得なるを信じたり……(「いはらき新聞」大正3年9月5日)

 これに対して下市派から反対意見が出されたが,中立組の神永千代吉より「水戸市水道あるを知るも未だ下市水道あるを知らず」とヤジが飛んだ。

 具体的な内容については,9吋末端(本四町目)にて昼夜8万5,504立方尺,6吋末端(本十町目)にて昼夜2万5,773立方尺,3吋末端(細谷新町)にては昼夜4,565立方尺,柵町交番前と配水池との高低差1尺の処において6吋末端1昼夜6,840立方尺即ち2,280人に給水し得る計算と説明された。なお,下市給水区と柵町の配水管は水門橋の上にバルブを設けて配水上の調整をするとあった。

 その後も論争が続いたので,中立組の立花三郎よりつぎのような緊急動議が提出された。

至極の好案なるも網目は十分とは言へず,幸に予算上柵町水道費の目もあれば,相当なる技術者に依頼して水量其他の関係を審査せしむる方針の下に,本案の調査方を議長指名の調査委員7名に付すべし。

 議長秋山誠明は,これを採択に付し,満場一致によって可決した。この重要な水道市会は45分間で終了し,議長はただちに大山縫三郎・菊池欣弥・神永千代吉・金沢源介・金子八郎右衛門・森司馬彦・高橋純の7人を調査委員に指名した。

 このような柵町水道延長問題騒動について,「いはらき新聞」(大正3年9月3日)は「水道延設問題」と題した警告を発表した。「水戸一流名物にして,休息中の上下市確執が台頭する形勢があり,これは市のために悲しむべき事である。一村両字間の水論に血の雨を降らすが如き問題にならないよう,吾人は両者が気を平にし心を空しうして理を尽し情を叩き,腹蔵なく心中の声を吐露して妥当なる帰着点を発見するよう勧告する。下市側の主張には,柵町住民に対する水道布設を否定するものはない。問題は,湧水量の件と8千人標準の既設9吋鉄管が1万人供給用の延長事業において使用しても給水に故((支カ))障がないかという件である。ともに腹心を披露し説明に説明を尽して,本問題の解決に従事せんことを希望する」とあった。