長谷川助役は,市会より要請された水道技師による調査を依頼するために,9月5日に上京した。その夜の調査委員会の会議中に長谷川助役より電話があり,東京市水道部工務課技師の工学士小野基樹とともに6日に帰水すると連絡があった。
6日の午後,小野技師は川田市長・長谷川助役・大田水道課長・大久保技手そして調査委員とともに,水源地と配水池を視察し,7日には常磐公園の吐玉泉付近の地形や地質,そして釜神町の井戸などを観察した。宿舎においても,大久保技手と9吋管と3吋管使用区域の水量,9吋管と6吋管・3吋管の使用区域と配水池の高低を調査して水圧の計算をした。
この日,市会議員の下市派である高瀬藤次郎が,市長に水道延設工事に関して新たな意見書を提出した。内容は水源涵養のため笠原官林全部の無償払下げと禁伐採の許可を受け,源泉が涸れる恐れをなくするならば柵町などに給水することも認める。専門技術者を招聘している現在,笠原山林よりも一層水量が豊なりといわれている千波湖南西岸一帯や常磐公園下の吐玉泉付近の調査を願うことなどであった。
8日,小野技師は調査委員とともに配水池を観察し,貯水量が1万3,088立方尺68であること,その水深は5尺で,1尺を貯水するのに1時間かかることなどを確認した。これら3日間の調査と計算による結果をもとに,9日には市当局者の参加した水道調査委員会で報告がなされた。水量についての報告は,それまで市当局が調査計算した数字より少し多くなっており,水道の延長に問題はないとされた。ただ,下市区民の安心や安全のためには配水池を設けて一時水を貯蔵するか,水源の増設も考えられると付け加えの説明はあった。
水道調査委員会は11日にも,小野技師の報告に関して市の大久保技手に細部の説明と意見を求めた。これによって区域外給水に支障のないことは,7人の委員全員が確認した。ただ,工事の順序として,下市側の3委員は配水池設置のあとで配水管は延長すべきであると主張し,上市側の4委員は専門技師の調査報告を信用して原案(配水管延長を初年度に)賛成と意見は2分された。最終的には多数決で原案は可決されている。
それでも上下市民間の感情の円満を期すため,市内の平和を害しないで問題の解決をしたいと,つぎの市会まで研究を継続することになった。高橋純委員長の努力で,双方が納得して,妥協ができる可能性を発見することを約束しあった。