水道問題演説会

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 9月13日の午後7時,強雨の中を水門町の水戸座に下市水道区民約200人が集まって,水道問題演説会が開催された。

 12日市会での変則可決で激怒していた区民は,開会予定時刻より前に参集して論戦を展開しており,会場は殺気立っていたという。町務委員長江幡林蔵の挨拶のあと,座長に吉久保清三郎を選んで討論を進めた。問題点は,参集する以前から決定していたため,ただちに満場一致によりつぎのように決議案を可決した。

水道柵町延長の議は,更に慎重審議を経て水量の充分なるを惜((認カ))むる迄は該工事を延期せしめん事を期す

前項の目的を貫徹する為実行委員35名を置く

 座長は,反対運動を展開する実行委員の人選を一任され,つぎの人物を指名した。

 指名を受けた者は,市政関係役職の経験者が多く,地区的にもバランスが考えられており,水道区内有志の大同団結の姿勢が良く表現されている。それほど重要な問題として,真剣に考えられていたのである。

 会合の後半は,高橋純と高瀬藤次郎・神永清による演説であった。高橋は「水道問題所感」と題し,柵町水道問題は給水だけの問題ではなく,上市と下市の政治問題であるという。高瀬は水道建設の歴史を説いて,笠原山林の保全を訴えた。神永は「水道問題の将来」と題し,市提案の問題点を指摘した。この間に区民の一人が演壇に飛び上がって演説をするなどハプニングもあったが,4時間という長時間の,のちに下市区民大会とも呼ばれるような,最初にして最後の大集会は終了した。


大正3年9月15日「いはらき新聞」

 14日には選出された35人の実行委員が参集して,笹島清兵衛を委員長に選び,運動の方法についても協議し,県知事に陳情書を提出することになった。内容は,大正5年まで延長工事を保留し,綿密なる調査をして実際の給水量を測定してもらいたいこと。現在水道区民の水道公債償還未納が9万余円あり,これ以上の水道費負担増加には耐えられないことの2点であった。


水道延長反対実行委員名

 陳情書の提出と説明は,16日となり,14人の実行委員が知事と面談することになった。その様子について,『下市回顧録』は「風雨を冒して,区民の本隊は柵町本通りを行進して県庁に向ったが,県庁前で警戒していた警官に進路を遮られ押問答をしている虚に乗じて,杉山河岸より潜行した首脳部達の一隊が県庁裡門より侵入して陳情に及ぶという騒ぎ」だったという。まるで城取り合戦を見るような状況であった。

 委員たちは,知事に実地の調査を約束させて退庁し,肴町町会所で報告会を開き,今後の方針を協議した。