9月12日の市会で,水道の柵町延長工事が可決され,市当局は工事施行と補助・起債の許可を受けるための手続を始めた。
総工費は1万6,242円60銭で,県よりの補助をその3分の1予定し,起債は1万500円と試算していた。そのため許可申請は,県を通して,拡張工事施行については内務大臣に,その起債については内務・大蔵両大臣に提出することになった。
関係申請書は,9月18日に市長専属書記吉野吉弥が県庁に出頭して,知事と内務・大蔵両大臣宛名の3通を提出した。これとは別に川田市長も知事を訪問して,水戸市が申請した経過と内容について直接に説明を加え,善処を依頼した。申請書関係は現存していないため,その形式や内容は不明であるが,大正4年10月2日の市会で工事施行寸法を変更し,同年10月15日に再度申請したものの書類の一部は,つぎのようである。
水戸市水道拡張工事設計説明書
総説
水源ハ茨城県東茨城郡緑岡村大字千波字笠原新田地内不動山麓(第1第2第4水源アリ)及同郡吉田村大字米沢(第3水源アリ)以上既設ノ4源泉ノ内第1源泉ヲ拡張シ,尚同郡吉田村大字米沢地内ニ予定((備カ))第5源泉取水渠ヲ新設ス,其位置ハ本市ヲ離ル約1里是レ等源泉ヨリ第1水源池ニ集水セシメ,同池ヲ起点トシ既設ノ導水管ニ依リ同郡吉田村大字吉田地内ニ設置セル配水池ニ至ル,途中即チ緑岡村大字千波起点ヨリ930間ノ地点ニ接合井ヲ新設シ,之ヨリ分水6吋鋳鉄管ニテ今回拡張ノ水戸市柵町ニ配水スルモノトス
水源地ニ於ケル水量
今回拡張工事ニ付キ水量増加ヲ計ラン為メ,既設水源ノ湧水量及ヒ増設予定水源試掘ノ結果,其最低一昼夜ノ湧水量ハ左ノ如シ
第1水源
第2水源
第3水源 計 34,606立方尺
第4水源
拡張計((画カ))書予定第5水源試掘湧水量 6,000立方尺
第1水源拡張計画試掘湧水量 15,494立方尺
合計 56,100立方尺
給水区域及人口並ニ給水量
給水ノ区域ハ水戸市ノ一部ニシテ,其人口ハ大正4年7月現在ニヨレハ9,225人(内現在給水区域内7,113人拡張区域内2,112人)ナルモ,将来ノ増殖ヲ予想シ1万人(内現在給水区域内7,500人拡張区域内2,500人)ニ対スル施設トス。
1年中最モ多クノ水量ヲ使用スル夏期ニ於ケル,1人1日ノ水量並ニ工場用水等ヲ加算シ4立方尺トス。
水戸市水道拡張工事費収支総予算
収入
金 20,364円63銭 総収入額
内訳
金 6,225円 県費補助額
金 10,500円 市公債
金 1,952円 水道費諸収入
金 1,687円63銭 一般市費ヨリ繰入
支出
金 20,364円63銭 総工費
内訳
金 2,144円 水源工事費
金 16,354円63銭 配水工事費
金 1,050円 雑費
金 500円 予備費
金 316円 賠償費
大正3年9月の予算総額1万6,242円60銭が,大正4月10月には2万364円63銭と増額されたが,起債額1万500円には変更はなかった。
これらに対する政府の詮議は慎重であった。特に起債に関しては市の負債額や償還状況,各種租税の賦課,その1戸1人当りの負担額など詳細な調査をし,その上で決定するという。これら基本調査に数か月は必要であるが,提出書類に不備があればその分も時間がかかることになる。市当局は,申請の可否は説明用資料の状況によると,その完全を期して作成した。
下市の水道延長反対実行委員会は,その間隙をぬって県庁に,中央官庁にと延長工事延期の陳情請願を展開した。そのための運動費は,下市共有金より500円と各町割当て徴収の500円の1,000円が計上された。