8 必要電力の調査

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 全市水道に関する電力について,その供給が可能であるかどうか,大正15年11月1日水土第228号,同月19日水土第240号によって東部電力株式会社茨城支店に照会した。

  水土第228号

    大正15年11月1日                 水戸市長 鈴木文次郎


    東部電力株式会社茨城支店御中

  水道動力設計上必要有之候ニ付左記各項ニ就キ至急回答相煩度此段及御照会候也

     記

  1 大正18,19年後ニ於テ,不断ニ約100乃至260キロヲ供給シ得ラルルヤ否ヤ

  2 供給ヲ受ケ得ラルルトセバ,其ノ電力ノ周波数即チ「サイクル」ハ幾何ナルヤ,又受電圧ハ3,300「ボルト」ヲ受ケ得ラルルヤ否ヤ

  3 電力ヲ要スル予定地ハ東茨城郡渡里村大字渡里(圷渡船場下流百間那珂川沿岸地)ニシテ,之レニ供給セラルル変電所ハ現在ノ杉山変電所ヨリ受クルコトヲ得ルヤ,又別ニ変電所ヲ設置スル必要アリヤ,若シ別ニ設ケルトセバ其ノ概略ノ位置如何

  4 電力ハ間断ナク予定ノ量ヲ供給シ得ラルルヤ

  本件ハ工事費ニ至大ノ関係アルニ付,特ニ慎重ノ御調査願度

 このように全市水道計画案作成上,各種の資料の収集をしたが,なかなかそれが当事者の満足するような内容と時期には提供されなかったらしい。電力調査は,最初の依頼日より18日後に再度回答を要請するなどしていることからも,関係者の熱意というより少々焦せりが感じられる。東部電力では,再度要請された日に会社としての正式な回答を送って来た。

  大正15年11月19日

  水戸市長 鈴木文次郎殿                東部電力株式会社茨城支店

    水戸市水道用電力ノ件

  本月1日水土第228号ヲ以テ御照会ニ相成候題記ノ件ニ関シ左記ノ通リ御回答申上候也

     記

  1 電力100――260「キロ」電力ハ不断ニ供給可能ナリ

  2 電圧及周波数3,300V 60(サイクル)

  3 供給変電所 現在杉山水戸変電所ヨリ別ニ配電線ヲ新設シテ供給ス

  4 電力ハ間断ナク予定ノ通リ供給シ得ヘシ

 こうして,水戸市水道が必要とする電力についての心配もなくなり,昭和6年5月13日の市会で「電力需給契約ニ関スル件」として市長より提案された契約書が可決され,即日つぎのような内容が成立した。

    電力需給契約書

水戸市(以下単ニ甲ト指標ス)ト東部電力株式会社(以下単ニ乙ト指標ス)両者間ニ於テ電力需給ニ関シ契約スルコト左ノ如シ

   第1条 乙ハ甲ノ経営スル水道用ノ電力トシテ最大250「キロワット」ヲ甲ニ供給スルモノトス

       前項電力量ハ需給開始ト同時ニ最大80「キロワット」トシ爾後甲ノ所要状態ニ応シ甲乙両者協議ノ上其ノ電力量ヲ変更スルモノトス

   第2条 電気方式ハ3相交流3線式60「サイクル」トシ 電圧3,500「ヴオルト」乃至3,300「ヴオルト」トス

       前項電圧ニシテ低下ノ場合ハ乙ニ於テ所定ノ電圧ニ調制スルノ外,之カ防制ニ付適当ナル設備ヲ為ス義務アルモノトス,「サイクル」ノ変化又ハ変更ノ場合亦同シ

   第3条 電力需給ノ場所ハ茨城県東茨城郡渡里村大字渡里921番地ノ2所在甲ノ変電所トス

   第4条 乙ハ天災事変其ノ他不可抗力(渇水ヲ除ク)又ハ官庁ノ命令ニ依ル場合ヲ除キ,昼夜間断ナク送電シ,甲ノ電力使用目的ニ支障ヲ来サシメサル義務アルモノトス

   第5条 送電上ノ責任分界点ハ,第3条ノ変電所内ニ甲ノ設置セル引込口開閉器トス

   第6条 第4条ニ依リ停電シタル後一部復旧ノ場合ハ,乙ハ他ノ供給ニ先タチ甲ニ送電スル義務アルモノトス

   第7条 送電線路ハ甲ノ費用ヲ以テ乙之ヲ施行シ,其ノ所有権ハ甲ニ帰属ス

       前項送電線路ノ管守補修ニ関スル一切ノ費用ハ乙ノ負担トス

   第8条 甲ノ使用電力料ハ毎月末日甲ノ変電所ニ設備セル積算電力計ニ依リ,甲乙両者立会ノ上決定スルモノトス

       前項積算電力計ハ,乙ニ於テ其ノ費用ヲ以テ購入据付ヲ為シ,爾後ノ検定保守其ノ他之ニ関スル一切ノ事項ハ乙ニ於テ負担スルモノトス

   第9条 前条積算電力計ニ故障ヲ生シタルトキハ,乙ニ於テ直ニ他ノ検定済積算電力計ト引換ヲ為スモノトス,此ノ場合ニ於ケル其ノ月使用電力量ハ,前後ノ事情ヲ参酌シ,両者協議ノ上之ヲ決定スルモノトス

   第10条 電力料金ハ1「キロワット」時ニ付金2銭トス

   第11条 需給最大電力80「キロワット」ノ当時ニ於ケル甲ノ1箇月最低責任使用量ハ,左記算式ニ依ル,若シ第8条ノ実際消費電力量カ之ニ達セサルトキト雖之ニ相当スル料金ヲ乙ニ支払フモノトス

      80kW×720h×55%=31,680kW/h

      最低責任使用量ハ,需給最大電力ノ増加スル毎ニ前項同比率ヲ以テ為スモノトス

   第12条 甲ハ其ノ月電力料金ヲ翌月5日迄ニ乙ニ支払フモノトス,此ノ場合甲ニ於テ第13条ニ依リ徴スヘキ違約金アルトキハ,本電力料金中ヨリ之ヲ控除ス

   第13条 乙ハ第4条ノ義務ニ違背シ停電シタルトキハ,左ノ各号ニ依リ甲ニ違約金ヲ支払フモノトス,但シ甲ニ於テ予メ承認シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス

      1 1日ニ付1回停電連続1時間以上ニ亘ル場合金5円

      2 同上2時間以上ニ亘ル場合ハ,其ノ超過時間1時間毎ニ金10円

       前項ノ外左ノ場合ハ,甲ニ於テ各種ノ事情ヲ斟酌シ其ノ損害額ヲ算定シ,相当ト認メタル金額ヲ乙ハ違約金トシテ甲ニ支払フモノトス

      1 乙ニ於テ本契約ヲ履行セサルトキ

      2 電力ノ供給ヲ怠ルトキ又ハ怠ケタルトキ

      3 第2条第2項ノ義務ニ違背シタルトキ

   第14条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ハ,甲ハ本契約ヲ解除スルコトヲ得

      1 甲ニ於テ電力使用ノ必要ナキニ至リタルトキ

      2 甲ニ於テ自ラ発電ノ設備ヲ為シタルトキ

      3 乙ニ於テ本契約ヲ履行セサルトキ但シ此ノ場合ト雖甲ノ前条ノ損害賠償請求ヲ妨ケサルモノトス

   第15条 天災又ハ不可抗力(渇水ヲ除ク)ニ因リ甲ニ電力供給ヲ為シ能ハサル場合ハ,乙ハ其ノ責ニ任セサルモノトス

   第16条 本契約期間ハ契約締結ノ日ヨリ昭和11年3月31日迄トシ,実際取引ハ甲ニ於テ水道供給開始ノ日ヨリトス,但シ甲カ水道供給開始ニ至ル期間ハ本契約ニ準シ取扱フモノトシ,其ノ最低責任使用量ハ甲ノ受電設備ノ多少ニ依リ其ノ都度協定ヲ為スモノトス

   第17条 本契約満了1月前ニ契約当事者相互ニ何等申出ナキ場合ハ,契約満了ノ翌日ヨリ仍1年有効ニ継続スルモノトス爾後此ノ例ニ拠ル

   本契約締結ノ証トシテ本書2通ヲ作成シ各自其ノ1通ヲ所持スルモノトス

       昭和6年5月13日

         甲 水戸市

           水戸市長 鈴木文次郎

         乙 東京市麹町区丸之内2丁目6番地

           東部電力株式会社 取締役社長 橋本万之助

 その内容は,水道用電力供給に関するもので,最大250キロワットとし初期の段階では60サイクルで80キロワットを3,500から3,300ボルトの電圧で3相交流3線式により,渡里の水道施設の変電所まで供給すること。電力料金は1キロワットが1時間で2銭とし,最低責任使用量は契約量の55パーセントで3万1,680キロワット時とし,その料金は633円60銭とされた。電力会社には,停電が1日に連続して1時間以上のときは5円,2時間以上のときは超過1時間ごとに10円の違約金支払を義務付けている。送電線路の建築は水戸市が費用を出し,その工事は会社が行い,その後の保守管理は経費も含めて全て会社の責任とされた。

 このような契約書の外に,つぎのような覚書も付属していた。

  水戸市(以下単ニ甲ト指称ス)ト東部電力株式会社(以下単ニ乙ト指称ス)トノ間ニ,昭和6年5月13日付締結ニ係ル電力需給契約(以下単ニ本契約ト指称ス)ニ関シ左記ノ各項ヲ協定ス

      記

  1 甲ハ乙ヨリ水道用電力トシテ受電スル為メ,乙ノ水戸変電所ヨリ本契約第5条記載ノ責任分界点ニ至ル間ノ単独配電線路竝関係工作物ヲ,甲ノ負担ヲ以テ乙之ヲ建設スルモノトス

  2 甲ノ建設スル配電線路ハ,乙ノ設計ニ係ル鉄柱線路トシ,甲ノ負担ヲ以テ乙之ヲ建設シ完成後ハ乙ノ費用ヲ以テ一切ノ管理補修ヲ為スモノトス,但シ本工作物ノ所有権ハ甲ニ帰属ス

  3 乙ハ本配電線路ニ支障アル場合ハ,其ノ他送電上ノ万全ヲ期スル為メ,昭和7年6月末日迄ニ予備線路トシテ別箇ノ1回線ヲ乙ノ負担ヲ以テ建設スルモノトス

  本協定ノ証トシテ本覚書2通ヲ作成シ,各自其ノ1通ヲ所持スルモノトス