水道調査臨時委員会は,大正14年12月8日の第1回開催より岡田技師の報告を受け,各地の視察をもして具体的実際的検討をしてきた。大正15年5月29日には水源地を決定し,岡田技師に調査と設計案の至急提出を求めた。そのため実測作業は早まり,6月3日から7月18日の短期間で完了し,以後設計作業に入る。
9月19日の委員会で,送水方式について配水塔式と直送式の検討がなされ,同26日に東京の玉川水道株式会社や江戸川上水道町村組合を視察した。11月8日には,7月24日に県に申請していた水源予定地の那珂川渡里地先中洲の土砂利の採取禁止地の様子や国や県費の補助問題,市費負担に関係した財政問題について話し合われた。同18日には,岡田技師によって直送式と配水塔式の工事関係と経費についての比較研究が発表され,先の視察よりの感想なども参考にして,水戸市水道の送水は自然流下を基本とする配水塔式と決定する。また,谷主事より市当局が試算した20か年案の財政計画が提案されたが,委員からは市民負担の軽減を前提として30か年案の作成を要請された。
これら7回の水道調査臨時委員会の決定をもとに,岡田技師は昭和2年1月13日に実施設計案を鈴木市長に提出している。市では,早期布設のための手続きをするため,同26日に水道調査臨時委員会を開いて,岡田技師の設計案の検討と,問題解決の日程を決めた。
2月10日 公設共用栓ヲ設ケサル件付議
3月24日 全市水道収支計算ニ関スル件
4月21日 同上
6月7日 新旧区域水道費負担ニ関スル件
6月23日 同上
6月26日 同上
8月3日 旧水道ニ関スル件
9月10日 水道使用料ニ関スル件
10月10日 旧下市水道ニ対スル補償額ニ関スル件,給水料金基礎調査ノ件
11月12日 水道費戸数割新旧区域負担ノ件
11月16日 収支計算予定其他ノ件
12月3日 全市水道計画書ニ関スル件
12月20日 旧水道区域ノ控除額ニ関スル件,実施設計書
13回の委員会という1年間の研究によって,岡田技師作成の設計にともなう財政関係の調整ができ,12月20日に水道調査臨時委員会の報告書が完成し,市会に提出された。
この委員会で検討された全市水道財政計画案は,実につぎのように6回もあり,充分なる討論がなされ,35か年250万円と決定している。
水道実施設計の案
水道調査臨時委員会での決定は,「水戸市水道布設目論見書」と「全市水道実施設計書」である。
水戸市水道布設目論見書
第1 水道事務所ノ所在地
水戸市南三ノ丸 水戸市役所内
第2 水源ノ位置
茨城県東茨城郡渡里村大字渡里字芦山,那珂川中洲砂層ニ滲透セル伏流水ヨリ導水引用ス
第3 水道線路ハ前記渡里村ヲ基点トシテ歩兵第2連隊脇ヨリ袴塚ヲ経テ水戸市全部ニ達ス
第4 給水区域ハ水戸市全部トス,人口ハ4万6,488人(大正14年10月1日国勢調査)ニシテ水量1人1日最大給水量ヲ4立方尺トス
第5 人口増殖及多量ノ水ヲ用ユル製造場ニ対スル給水増加ノ見込
人口増殖ノ割合ハ統計ニ依リ平均毎年1,192人ノ増加ヲ示シ,水道完成後ハ其ノ増殖率多キヲ予想シ給水予定人口ヲ8万人トス
多量ノ水ヲ用ユル現在工場ノ著シキモノナシ
第6 水圧ノ概算
配水管内圧力ハ給水区域及各地盤ノ高低ニ依リ等シカラス,其ノ平均静水頭ハ上市ハ約120尺,下市(台町ヲ除ク)ハ約118尺トス
第7 工事方法
工事方法ハ設計説明書ノ通リトス(省略)
第8 起工ハ昭和3年4月
竣功ハ昭和6年3月
第9 工費ノ総額其ノ収入支出ノ方法ハ別紙ノ通リトス(省略)
こうして,水道布設の基本が作成された。8万人に対する給水として,水源の位置と種類,1人1日最大給水量を4立方尺とし1日32万立方尺の供給量を確保できる施設を,昭和3年4月から同6年3月までに建設するという案である。