水道調査臨時委員会は,付託された全市水道の試案が完成したため,昭和3年6月25日の市会に報告書を提出した。市当局はこれを整理してつぎのような議案としている。
1 第40号 水道布設工事施行ノ件
1 第41号 水道布設費起債ノ件
1 第42号 水道布設費補助ノ件
1 第43号 自昭和4年至同5年市水道費継続年期及支出方法
1 第44号 水道費特別税戸数割並水道使用料新旧区域負担割合ノ件
出席した市会議員は39人中22人で,市当局は市長以下9人であった。
この議会の進行状況については,『水戸市水道誌』につぎのように記述されている。
午後2時34分,会議室に於いて師岡議長のもとに開く,日程に入いり第40号議案について鈴木市長提案理由を説明する所あり,議員との間に左の質疑応答があった。
市長 全市水道計画ニ就テハ長イ間,皆様ノ御配慮ヲ煩シタガ漸ク市会ニ提案スルノ運ビニナツタ,宜シク御審議ヲ願ヒタイ。
本計画ノ工事設計ニツイテハ後刻技術者ヨリ御説明イタスガ,収支計算予定ニ就テ一応申シ述ベタイ,ソノ計画年次ハ35ケ年間デ総工費ハ金250万円デアル,収入ノ部デハ国庫補助ハ総工費ノ4分ノ1即チ62万5,000円ヲ見タ,他市ノ例ニ倣ヒ各年度ノ収入ヲ見積ツタ次第デアル。
借入金ハ金225万円ヲ借入レル見込ミデ之レハ工事期間中ハ補助モ少額ノ見込ミデアルカラ支払上ノコトモ考慮シ此ノ金額ヲ借入ル見込ミデアル。
次ニ市財産繰入デアルガ補助金ノ収入,工事ノ状態等ヲ見計ヒ成ルベク年々ノ戸数割ニ大ナル差異ナキヨウ按排シタ次第デアル。戸数割ニ就テハ不均一ノ割合ヲ以テ賦課スル見込デアル。最モ苦心シタ補償額ハ既設総工費カラ一般市費繰入金新区域負担ヲ差引キ残額金25万9,475円65銭ト決シタ,比ノ補償額ハ15ケ年間ニ新区域カラ旧区域ニ補償スルモノデ,其間戸数割賦課ガ新旧区域ニ依テ不均一ノ賦課トナル次第デアル。16年目カラ新旧両区域ガ同一賦課率トナル計画デアル,尚旧水道デハ繰入金償還未済額ガ4万9,431円13銭アルガ,コレハ一般市費ヨリ繰入レ償還財源ハ給水料デ年賦償還スルコトニ市会ノ決議ヲ経テカラ,コノママ一般市費ニ移シテ同費カラ償還スル。
給水料ハ15年間ハ新旧区域各ソノ料金ヲ異ニシ,16年目カラ戸数割賦課ト同様同一率ヲ以テ賦課スル見込ミデアル。ソノ他ハ雑収入若干ガ見込ンデアルガ主トシテ工事不用品ノ売却代デアル。
支出ノ部デハ工事費ハ250万デ維持費ハ第3期ニ予定シ,第1期昭和19年度迄トシ毎年度金5万5,000円宛,第2期ハ昭和32年度トシ毎年7万円宛,第3期ハ昭和38年度迄トシ毎年度8万9,000円宛ト予定シ昭和36年迄ハ毎年度収支均衡ヲ得テ差引過不足ナク昭和37年度以降ハ収入過トナル。
公債償還ノ方法ハ3ケ年据置30ケ年賦償還ノ見込デアル。繰入金ハ市財産金ヲ繰入レテカラ3ケ年据置キ第4年ヨリ戻入ヲナス。宜シク御審議ヲ願フ次第デアル。
神永 全市水道計画ハ有力ナ調査委員ガ長時間研究シコレ以上調査ノ方法ハナク完全ナルモノト信ジ本案ニ賛成スル。タダ計画ハ来年カラ実施シ税金モ来年度カラ賦課スルコトニナツテイル。
借入金ヤ補助金ハ年度ガオクレテモ収受シ得ルガ戸数割ハ実施年度ガ遅レテモ賦課徴収シ得ルカ,次ニ本市ハ計画ヲ希ンデイルガ全市水道計画ハ都市計画ト密接ノ関係ヲ有ス,都市計画ハ数年ヲ経過シ水道計画モ1・2年ニ完了ヲ見ナイカラ起債方法補助金ニ就テ充分ノ研究ヲ要スル,殊ニ昨今地方財政逼迫ノタメ内務省ハ成ルベク起債ヲ許サヌ方針デアルカニ聞ク,1・2年デハ許可ヲ見ナイカモシレヌ,又都市計画ト全市水道計画トハ同一時期ニ於イテ実施スル考カ,又水道計画ヲ現在ノ儘ニシテ実施スル考カ。
次ニ本事業完成ニハ補助金ヲ多額ニ得ネバナラズ,補助金ナシデハ成立ノ見込ハナイ,當局ハコレニ就テ縣當局又ハ内務省ニ就テ確メタカ,財政計画ニ確信ガアルカ。
市長 全市水道計画ノ実施ハ来年デアル。幸ニ本案ガ議決ニナレバ速ニ其筋ニ申請シ其ノ許可ガ1年後カ2年後カ予断シ得ナイガ若シ昭和4年度ニ許可ニナラヌ場合ハ假令昭和4年度ヨリ戸数割賦課ノ予定ヲシテ置イタニセヨ賦課年度ヲ延期スル外ナイト思フ。全市水道計画ト都市計画トハ一致スルハ希マシイガ都市計画ガ遅クレレバ水道計画ヲ先ニ実施スル考デアル。県費国費ノ補助問題ハ未ダ正式ニ交渉セヌガ,本案議決後速ニ許可申請ヲナシ,皆様ト共ニ交渉シタイ。
神永 工事施行許可アルモ補助金ノ交付ヲ見ザルコト往々アリ,工事施行許可前ニ補助金ノ交付許可アルカ否カヲタシカメル要ガアリハセヌカ。
市長 工事施行申請ト共ニ補助申請ヲナシ各員ト協力目的ノ貫徹ヲ期シタイ。
横山 那珂川ハ時ニ川身ノ變更アルカニ聞ク,コレガ善處ノ方策ガアルカ,給水量ハ4立方尺デ充分デアルカ,工事費中先ニハ建築費ハ金3万5,000円トアリ,今回ノ提案ニハ5万2,100円トアリ増額ノ理由ハ何處ニアルカ,収入ニ於テ市基本財産金76万50円繰入ルコトニナッテ居ルガ何種目ヨリ繰入ルカ,利子で繰戻スカ,斯ル財源トセバソノ要ナキヨウデアル。
岡田技師 水源地ハ充分調査シ變更ナシト確信スル。1人當給水量4立方尺トシテアルモ,コレハ1日ノ平均ヲ見タルニ過ギズ実際ハコノ1倍半ノ6立方尺トナッテイル。(工事方法工事費ニ就テ詳細説明ス)
瀧 原案ヲ適當ト認メ賛成ス
横山 補償額25万5,475円65銭ニ就テハ本員ハ反対デアル,調査委員ハ満場一致原案ヲ認メタカ。
瀧 本案ハ既ニ市会協議会ニ於イテ内定シタ問題デアル。速ニ決議スルガ市民ニ忠実デアル。
神永 本案ハ協定シアルコトダカラ深ク議論セズ,却シテ補助交付ニ努メル必要ガアル。
師岡議長 本件ハ屢々協議ヲ重ネタ問題ダカラ成ル可ク簡単ニ願ヒタイ。
横山 補助金25万9,000円ヲ提案スル理由ハ如何,尚水道委員ソノ他必要ノ機関ヲ設クル意志ハナイカ。
市長 委員会設置ハ追テ協議シタイ。補償金ハ数回協議ヲ経テ協定シタモノ故,御諒承ヲ願ヒタイ。
ついで秋山議員と岡田技師の間に配水塔に就いて質疑応答あって原案を可決,第41号,第42号,第43号の3案いずれも満場一致でアッサリ原案を可決。第44号議案については新旧区域の負担割合について横山議員と市長の間に問答あり,本多議員は
市ノ大勢カラ見テ水道戸数割ノ負担ニ堪ヘヌトハ思ハレナイ,33ケ年度ノ間ニ於イテ新旧区域ニ於ケル負担ノ相違スル所ハアルガ33ケ年中,最モ多額ノ戸数割ヲ負担セネバナラヌ額ハ8万1,000円デアル。コノ多イ時ノ負担率カラ考ヘ8万1,000円ノ戸数割ハソノ最高最低ヲ除キ中産階級ノ者ヲ計算スルト約66円,旧区域ノ者ハコノ3割8分位ノ負担デアルカラ敢テ負担ニ堪ヘヌコトハナイト信ズル。尚諸物価モ下落シ予算ヨリ少額デ完成ヲ見ルト思フ,今日ハ実施ノ絶好ノ機会デアル。
と賛成を表明する所あり。横山議員は補助金並に給水料の新旧区域不均等を難じ反対を表明して退席し,4時11分,議長休息を宣し同15分再会,横山議員は前言を改めて當局に対する警告とすると述べる所あり満場一致で原案を可決し市長から全市水道調査臨時委員並に市会議員各位の熱誠なる尽力に対し謝辞をのべ4時17分閉会した。