昭和3年6月25日の市会で議決されたなかで水道調査臨時委員会の提案と異なるものは,第8の起工と竣功の年月と第10の追加であった。すなわち「水道布設目論見書」の第8の「起工ハ昭和3年4月,竣工ハ昭和6年3月」を,1年遅れの「起工ハ昭和4年4月,竣工ハ昭和7年3月」と改められた。また,第10の追加は「水料ノ等級価格水料徴収ノ方法及経常収支ノ概算別紙ノ通リトス」の文であるが,その内容は不明である。
以上の布設目論見書を展開した「水道布設工事設計説明書」は,水道調査臨時委員会案がそのまま議決された。その内容構成は3部よりなり,第1は水道設計説明,第2は工事方法,第3は工事費である。
第1部の水道設計説明は,計画の大要,水源地における水量,取水量の決定,水源における水質,給水区域人口,1日中ノ最大給水量,動水圧,配水幹線,消火栓などの項目よりなる。その内容はつぎのようである。
水戸市水道布設工事設計説明書
第1 水道設計説明
1 計画ノ大要
水戸市ノ地勢ハ,東南部ハ一般ニ低ク之ニ反シ西北部ハ高地ニシテ其ノ高低ノ差約80尺アリテ,之ヲ同一喞筒ヲ用ヒテ給水スルコトハ運転経済上不利益ナルヲ以テ,上市(棚町及宮下ノ如キ低部ヲ除ク)ヲ高区給水地トシ,下市及上市ノ一部ヲ低区給水地トシ各区別ニ所要ノ喞筒ニテ汲ミ上ケ給水スルモノトス。
低区給水地ノ内常盤線路ヲ境界トシ其ノ南部ノ区域ノ約7分ハ既成水道ニ依リ給水セラルルモ,其ノ施設簡易ニシテ元ヨリ其ノ静水圧最高25尺ニ過キス,近年人口増加ノ為水量ニ不足ヲ告ケ,現今夏季ニ於テハ屢々断水ノ虞アリ。此ノ如キ圧力ニ於テモ水量ヨリ見ルモ早晩高圧水道ヲ設クル必要アリ。然ルニ既設水道管ハ管径小ニ且高圧ニ堪ヘサルヲ以テ,既設水道区域ニ於テモ別紙平面図ノ如ク旧管ニ併行シテ新管ヲ埋設シ給水及防火ニ備フ。而シテ旧管ニハ多数ノ給水用分水工事ヲ施工シアルヲ以テ,今後ノ新給水者ニハ新管ヨリ分水工事ヲナスモ,此ノ際従来ノモノヲ全部新管ニ改メ廃管トナスハ経済上不利益ナルカ故ニ,或ル期間内ハ減圧管ヲ以テ新管ヲ取付ケ水圧ヲ減殺シテ旧管ニ流入セシメ住宅ニ給水セントス。
本計画ノ水道水源ハ,東茨城郡渡里村大字渡里字芦山地内那珂川ノ伏流水ヲ取ル計画ニシテ,那珂川ノ中洲ノ砂利層中ニ集水管ヲ埋設シ,其ノ中央ヨリ丁字形ニ鉄管ヲ布設シ堤内ノ浄水場ニ導キ,揚水喞筒ニテ各濾過池ニ喞筒送水シ,濾過サシタル浄水ハ調整池ヲ通過シテ高揚喞筒ノ力ニヨリ,同村同大字小山ノ上ノ高区配水塔ニ一部ハ水戸市上市三ノ丸ノ低区配水塔ニ揚水シ,自然流下式ニテ全市ヘ配水スル計画ナルモ,必要時ニハ直接市内ニ喞筒配水(直送式)ヲナシ得ル設備ヲナシタリ。
2 水源地ニ於ケル水量
水源トナスへキ伏流水ハ,未タ精((正カ))確ナル調査ヲ遂ケサルモ,豫定地ニ直径4尺深8尺ノ試験井ヲ掘鑿シ,之ニ口径3吋ノ離心動喞筒ヲ据付ケ4馬力ノ発動機ニヨリ揚水スルニ1昼夜4万立方尺アリ。元来取水地ハ那珂川ノ中洲ニシテ,地質ハ砂利層ニ加フルニ該川ノ流域広大ナル為,仮令測定当時ヨリ那珂川ノ水量減スルモ予定ノ長サノ集水管ヲ埋設セハ,必スヤ其ノ伏流ノ大ナルヲ認知スルニ難カラス。而シテ本市水道ノ最大計画水量(人口8万人)ハ僅カニ毎秒3.7立方尺ニシテ,伏流水ノ僅カニ一小部分ニテ充分ナリトス。其ノ他下流灌漑水及舟筏通航等ニ於テモ少シモ影響ナシ。
3 取水量ノ決定
取水量ハ左記水量ヲ標準トシテ決定シタリ,
1 給水人口 8万人
1 1日ノ給水量 32万立方尺 (1人1日ノ最大給水量4立方尺)
1 毎秒給水量 3.7立方尺
4 水源ニ於ケル水質
水質ノ試験ハ茨城県警察部衛生課ニ委嘱シ,分析検鏡ノ結果極メテ良好ナル成績ヲ得タリ
(検査成績表ハ略ス)
5 給水区域人口
標準給水量戸口及調査本市水道区域ハ水戸市全部トス。現在市街ヲ成ス区域ヨリ給水ヲ開始シ,漸次人家疎ナル個所ニ及ホシ,尚将来市街地ノ発展ニ応シテ次第ニ給水ヲ普及セシムルモノトス。大正15年末ノ人口ハ4万7,983人ナレトモ将来水道完成後ハ益発展ヲ来ス見込ナルヲ以テ,本計画ニ於テハ人口8万人ニ対スル施設トス。
日々ノ消費量ハ季節ニヨリ異ルハ勿論,天候及温度ニ依リ増減アレトモ概シテ夏季ニ多ク冬季ニ少キヲ常トス。1ケ年中最多ク水ヲ使用スル夏季ニ於ケル1人1日ノ給水量ハ,防火用水ヲ含ミ4立方尺トス。
6 1日中ノ最大給水量
1人1日中ノ最大給水量ヲ平均4立方尺ト定メタレトモ,配水管ハ此ノ給水量ノ時々刻々ノ変化ニ応シ,1時間ノ最大給水量及防火用水トヲ運ハサルヘカラス。然ルニ1時間ノ最大給水量ノ1倍半トシテ,此ノ水量ヲ毎秒5.55立方尺トシ,防火用水量ハ1分時65立方尺即チ毎秒1立方尺トス。火災ハ通常冬季ニ多ク殊ニ夜間使用水量ノ少ナキトキニ起ルヲ常トスルヲ以テ,多クノ場合前記以上ノ水量ヲ防火用ニ充ツルコトヲ得ヘク,更ニ制水弇開閉ニ依リ他区域ノ給水ヲ制限シテ火災地ニ多量ノ給水ヲ集注セシムルコトヲ得ヘシ。
7 動水圧
市内ノ動水圧,即チ有効水頭ハ場所ニヨリ異ナルモ,平均80尺以上ヲ目途トシテ管ノ口径ヲ定メタリ。
8 配水幹線
幹線ハ可及的直路市ノ中枢ニ導キ,主要ナル建造物ヲ有シ且繁華ナル街路ニハ口径大ナル配水管ヲ配置シ,其ノ区域ニ於ケル防火ノ能力ヲ大ナラシムルト同時ニ,各配水区画ニ分布スヘキ鉄管ヲ成ルベク経済的ニ之ヲ選定セリ。而シテ幹線ハ其ノ末端ヲ口径8吋管ヲ以テ相連絡シ,其ノ一部ノ故障ニ際シ管末ノ方向ヨリ逆ニ給水スルニ便セリ。
9 消火栓
消火栓ハ概ネ街路ノ交叉点其ノ他必要ナル地点ニ設置シ,其ノ間隔ヲ約50間トシ。高区配水地ニ総数224個,低区配水地ニ総数188個ヲ設ク,而シテ出火ノ際其ノ付近配水管ニ水圧不充分ナルトキハ,制水弁ノ開閉ニヨリ圧力ヲ増加セシム。