11月11日市会での議決をもとに,11月27日に内務大臣に対してつぎのように提出済の水道布設認可申請書の変更を届け出た。
水工第600号
昭和4年11月27日
内務大臣 安達謙蔵殿
水戸市長 鈴木文次郎
水道布設工事認可稟請書中変更ノ件
客年7月5日付水土第176号ヲ以テ許可申請至置候 本市水道布設工事貴省ノ御指示ニ依リ書類下戻ノ上 再調中ニ有之候処其後物価日々ニ下落ノ傾向ヲ示シ最近ニ於テハ工賃及材料単価ニシテ1割以上モ下落セシモノモ有之 旁々公私経済緊縮ノ折柄ニモ有之候ニ付設計工法ハ其ノ儘トシ諸費単価ニ於テ厳密ナル調査ヲ遂ケ 其ノ結果約1割ノ減額トナリ之レカ為メ戸数割ヲ軽減スルコトヲ得ヘク被存候間 別冊計画書ノ通リ変更致度市会ノ議決ヲ経候条 前設計書ト御引替ノ上本設計ニ依リ御認可相成度此段稟請候也
添付書類 水戸市水道布設設計書
このときの設計書とは,昭和3年7月5日に申請したものを,今回の11月11日に財政関係だけ変更したものであった。なお,この申請は県を経て内務省に提出されるシステムだったため,県内務部の調査があり,12月6日付で添付書類について「別冊符箋ノ箇所再調査」し,9日には係員が出頭するようにと指令された。驚いた市当局は,早々に検討を加え,指摘された個所について訂正をして,再提出をしている。
以上のような経過で布設のための認可申請作業は完了したため,つづいてこれにともなう起債の許可申請を同4年12月24日に,つぎのように提出した。
水庶第1401号
昭和4年12月24日
内務大臣 安達 謙蔵殿
大蔵大臣 井上準之助殿
水戸市長 鈴木文次郎
起債許可ノ儀申請
水道布設費支辨ノ為起債ノ件 市会ノ議決ヲ経候条御許可相成度 市制第167条ニ依リ関係書類相添 此段申請候也
添付された書類には,つぎの43種があった。1.理由書,2.起債議決書,3.起債関係一覧,4.水道費継続年期及支出方法,5.水道工事施行議決書,6.最近10ケ年水戸市戸口調,7.水戸市内戸数人口増加推定調,8.昭和4年度茨城県水戸市水道布設費歳入歳出予算,9.昭和5年度茨城県水戸市水道布設費歳入歳出予算,10.昭和4年度茨城県水戸市水道費歳入歳出予算 11.昭和5年度茨城県水戸市水道費歳入歳出予算,12.自昭和4年度至昭和28年度水戸市水道費財政計画書,13.自昭和4年度至昭和28年度水戸市水道費財政計画書(国庫補助ナキ場合),14.水戸市内戸数及水道供給戸数推定調,15.水道使用料収入予定調,16.放任専用給水使用料収入予定調,17.共用給水使用料収入予定調,18.計量給水使用料収入予定調,19.諸官衛公署其他計量給水使用料予定調,20.水道費戸数割新旧区域負担表,21.同上(国庫補助ナキ場合),22.水道使用料不均一徴収並水道費特別税戸数割ヲ不均一ノ税率ヲ以テ賦課スル理由書,23.特別税戸数割各年度負担ニ関スル件,24.自昭和6年度至昭和28年度23年間水戸市水道維持費調,25.基本財産調,26.市基本財産繰入並繰戻方法,27.売却スベキ市有地ノ売却代金計算書,28.市有地売却代金年度別収入見込調,29.売却スベキ市有地調書,30.市有地売却済調,31.市有地売却方法,32.水戸市水道給水条例,33.給水料不均一徴収理由書,34.諸税負担一覧表,35.昭和4年度茨城県水戸市歳入歳出予算,36.昭和5年度茨城県水戸市歳入歳出予算,37.自昭和4年度至昭和28年度財政計画書,38.市債償還計画調,39.水戸市負債ニ関スル調書,40.水戸市運用金ニ関スル調書,41.基本財産等運用金積戻調,42.納税成績調,43.滞納整理方針。
添付書類中の理由書はつぎのようである。
理由書
輓近(バンキン)世運ノ進暢(シンチョウ)ニ伴ヒ,各種事業ノ勃興ハ勢ノ免レサル処ナリ。殊ニ本市ハ全市水道布設ノ急ナルヲ認メ,本年度ヨリ昭和6年度ニ至ル3箇年度継続事業ヲ以テ之カ完成ヲ期スルコトトシ,今回市会ノ議決ヲ経候処,其ノ工事額ハ金225万円ナルモ,其ノ他之ニ伴フ諸費金23万8,039円(公債利子22万5,750円維持費1万2,289円)合計金248万8,039円ヲ要スルヲ以テ之ヲ特別経済トシテ取扱ヒ,昭和4年度ニ於テ金62万2,319円,同5年度ニ於テ金98万2,250円,同6年度ニ於テ金88万3,470円ヲ支出スルコトニ致シ候。然ルニ本市本年度ニ於ケル市費歳出総額ハ金98万9,372円(内 経常部金43万899円臨時部金55万8,473円)ニシテ,之ニ伴フ歳入ニ在リテハ財産収入其ノ他税外諸収入ヲ合シテ金69万6,594円(内 校舎建築起債額17万9,000円ヲ含ム)ナルニ依リ,国税及県税ニ対スル付加税ハ勿論特別税戸数割ノ如キ何レモ既ニ知事ノ許可権内ノ制限外課税ヲナシタリノミナラズ特別税戸数割ニ在リテハ別途許可申請セル如ク,今回更ニ水道費特別税戸数割トシテ制限外課税ヲナスコトニ致シ,加エ最近財界不況ノ為此ノ上増加賦課スルカ如キハ到底市民ノ堪フル処ニアラザルヲ以テ,右経費総額金248万8,039円ノ内金11万5,000円ヲ市基本財産繰入金ニ求メ,使用料ニ於テ金2万6,867円,雑収入ニ於テ金1万200円,水道費特別税戸数割ニ於テ金15万1,672円,国庫補助ニ於テ金56万2,500円ノ内金1万5,000円,県費補助金45万円ノ内金6万9,300円,合計38万8,039円ヲ求ムルコトトシタリト雖,尚金210万円不足ナルヲ以テ止ヲ得ス之ヲ起債ニ求ムルコトトシタリ。即チ昭和4年度ニ於テ金50万円,昭和5年度ニ於テ金90万円,同6年度ニ於テ金70万円ヲ借入シ,之ヲ昭和6年度迄ハ利子ノミ支払其ノ元金ハ据置キ,昭和7年度ヨリ同28年度ニ至ル22箇年度間ニ割当テ償還ヲナシ,以テ本事業ノ完成ヲ図ラムトスル次第ニ有之候。然ルトキハ別紙(第14号表)水道費財政計画書及同(第16号表)水道費特別税戸数割新旧区域負担表ノ如クニシテ,本事業費支弁ノ為特ニ増加賦課スヘキ額ハ初年度タル昭和4年度ニ於テ僅1戸平均金5円92銭8厘8毛余ニ過キサルノミナラス,次年度以降遂年其ノ負担額逓減ヲ見ルカ故ニ敢テ負担ニ堪ヘサルノ憂無之,依テ茲ニ市公債ヲ起シ,該事業ノ完成ヲ期シ以テ市民ノ幸福ヲ増進セシメ本市ノ発展ヲ図ラムトスルニ在リ。
それは,3年間の支出が内容的に工事費と維持費で226万2,289円となる。これに対して可能なる収入は38万8,039円で,187万4,250円の不足となる。この分を起債で補充すると,その償還利子分の計上で支出は248万8,039円となり,試算では起債額は210万とせざるを得ない。これら経費を負担することになる市民も,初年度に1戸平均5円93銭程度であり,年とともに軽減できる計算であって,それに耐えられる状況にあると説明している。
この水戸市の起債願いは,県当局の審査を通過し,昭和5年3月20日県知事の副申が付けられ,内務省地方局長に提出された。その副申はつぎのように,水戸市にとって厚意のあるもので,中央官庁の心証も良かったらしい。
地収第2204号
昭和5年3月20日
内務省地方局長殿
茨城県知事
起債ノ件副申
管下水戸市ヨリ全市水道布設費支弁ノ為メ起債ノ件 別紙ノ通稟請ニ付調査候処右工事ノ緊急財政ノ状況別紙理由書ノ通リニシテ国税県税ノ付加税ハ何レモ制限ヲ超ヘ特別税戸数割亦既ニ制限外ノ賦課ヲ為シタルノミナラス 別途稟請ノ如ク更ニ水道特別税戸数割トシテ制限外課税ヲ為スノ結果1戸平均19円86銭4厘強ニ及ビ 此上ノ賦課ハ到底民力負担ニ堪ヘザル所ニシテ他ニ適当ノ財源ナキヲ以テ勢ヒ財源ハ起債ニ待ツノ外無之而シテ特別税戸数割ハ昭和4年度ヨリ同6年度ニ至ル3年間ハ財政上止ムヲ得ス市民ノ負担ニ得ル最高限度ヲ賦課スルコトトナシタルモ 此最高限度ノ負担ヲ永続スルコトハ市民ノ堪フル所ニアラサルヲ以テ 漸次軽減セシメタルモ其ノ他ニ於テハ本年度以降本年度ト同一ノ負担ヲ持続シ別紙年次表ニ依ル償還ヲナスハ市財政ノ状況ニ稽ヘ概ネ其極度ニ達スルモノトシテ相認候 故ニ償還年限ヲ7年度以降22ケ年ト為スハ適当ニシテ之カ負債ノ償還ハ主トシテ水道収入ヲ以テ財源ニ充当スルモノニ有之 負債償環ニ付テハ毫モ支障無之モノト被認候条御許可相成候様致度此段副申候也
追特別税戸数割不均一賦課及基本財産処分ノ許可ハ起債許可ヲ待ツテ許可スル見込ニ候