昭和5年2月ごろには,長かった水道布設認可申請の提出過程と進展しない内務省の検討に悲観し,市の直轄事業としては無理だったとする議論が市民のなかに生まれてきた。年度が変わろうとする時点で,許可とも不許可とも指示されずに,形式的な財政計画案の作成の回数は多くなり,その都度市会を中心に市民は期待し,希望を持った。しかし何の返事もなく,ヌカにくぎうつ感じを味わうことが多かった。
そのようなとき,市の事業ではなく県の直轄事業として委託するなら,認可も早く,工事費も1割程度安くなり確実であると市中のウワサになった。水道幹線を布設する所は県が管理している国県道であり手続も簡単,新たな技術者は雇わず兼任ですむ,器具も現在所有しているもので良く,材料の購入も他の工事用とともにするので安くなる。また,現在難行している政府との交渉にも有利な点が多いはずであるなどと,各種の意見がでてきたが,中止にしようというものはなかった。
通常議会に提案された昭和5年度の予算案には,水戸市の水道に対する1,000円の国庫補助が計上されていたが,解散によって不成立になってしまった。しかも,昭和恐慌時の内閣であり,緊縮を旗印にしていた内閣でもあるため,関係者は心配して再度の計上を願って請願に上京した。3月25日の閣議において決定した特別議会に提案される予算案中に,国庫補助の項目があることを知って,関係者は希望を持って内務大臣との交渉に入った。その中で国庫補助を要請している事業体が多く,全てに配分できないため,緊急の程度によって決定する方針であることを知らされた。
水戸市は,それまでの経過と市民生活の保障のため,どうしても昭和5年度には布設工事を実施しなければならないものと決意し,さっそくつぎのような緊急具申書を提出した。
水庶第414号 昭和5年4月8日付
内務大臣
大蔵大臣
水戸市長
水道布設ノ緊急ヲ要スル理由ノ追申
客年12月24日付水庶第1401号ヲ以テ 水道布設費起債ノ件許可申請中ノ処 同水道布設ノ緊急ヲ要スル理由別紙ノ通ニ付 本市ノ実情御洞察ノ上何卒該起債御許可相成度此段追申候也
水庶第415号 昭和5年4月8日付
茨城県知事宛
水戸市長
水道布設ノ緊急ヲ要スル理由ノ追申
本市水道布設費起債許可申請中ノ処其ノ緊急ヲ要スル理由別紙ノ通リ追申致候ニ付可然御進達被下度此段申進候也
水道布設ノ緊急ヲ要スル理由
市ハ低地部ト高地部トヨリ成リ,低地部ヲ下市ト称シ高地部ヲ上市ト称ス。下市部面ハ水質悪シク飲用水ニ乏シク,舊藩時代ニ於テ既ニ簡易水道ヲ布設シ庶民ノ飲用水ニ供シ,明治43年之レカ改築ヲナシ今日ニ至リタルモ,上市部面ハ従来ヨリ堀井ヲ使用シ日常ノ用ニ供シツツアル現状ニシテ,其ノ深サ平均60尺ヲ下ラス。中ニハ100尺ニ達スルモノアリ。其ノ不便不利ハ市民ノ等シク感スル所ニシテ,延テ家庭経済ニモ影響ヲ及ホシ,近年組合ヲ作リ動力ヲ利用シ簡易ナル水道ヲ設ケ給水シツツアリ。元来上市部面ハ平地ニ突出シタル丘陵地ナルヲ以テ地下水ナク,毎年冬夏季中降雨少キ時ニ於テハ直ニ井減退シ,汲取ノ際混濁ヲ来タシ濾過スルニアラサレハ使用スルコト能ハズ。近時市,発展ニ伴ヒ戸口増加シ,竹林ハ伐採セラレ畑ハ変シテ宅地トナリ,為ニ降雨ノ地下ニ滲透スル水量減少シ,剰ヘ道路ノ側溝改良ト共ニ雨水ヲシテ直ニ河川ニ流下セシメ殆ント地下ニ滲透スルノ暇ナカラシメタリ。而シテ家屋ノ増加ハ井戸数ノ増加トモナリテ,益々戸ノ井水ヲ減少セシム。井水ノ減少ハ直ニ混濁ヲ来タシ,直接市民ノ保健衛生ニモ影響シ,火災ニ対スル不安ノ念ヲ起サシムルト同時ニ,市ノ発展上ニモ大ナル関係ヲ及ボスヘキヲ察シ,大正12年市会ニ於テ上水道ノ布設ノ急ヲ認メ,之レカ調査着手セントスル際偶々市内ニ於テ約90名ノ腸室扶斯患者発生シ,其ノ翌年モ亦前年ニ優レル100余名ノ患者続発シタレバ愈布設ノ臍ヲ堅メ専門技師ヲ招聘シテ之レカ調査ニ着手シ,以来各地ノ水道ヲ実査シ実地ニ就キ之レカ研究ヲナシ,其ノ研究材料ニ基キ設計ヲ急キタルモ,小学校改築ノ為多額ノ市費ヲ之ノ方面ニ充当スル場合ニ立チ至リタルヲ以テ,市ノ財政上到底水道布設ヲ許ササルニ至レリ。然レトモ各戸ノ井水ハ漸次欠乏ト共ニ水質悪化シ,徒ラニ遷延スルハ市民ノ保健上将又市ノ発展上忽諸ニ付スヘカラサルヲ以テ,嘱託技師ヲシテ之レカ実施設計ヲ急処作成セシメ,昭和3年7月市会ノ満場一致ノ決議ニ依リ県ニ申請書ヲ提出スルニ至レリ。爾来市民ハ1日モ早ク此ノ実現ヲ期待シ,之ノ千載一遇ノ物価下落ノ好時期ヲ逸セス着手セラレンコトヲ熱望シテ止マス。
1 水量不足ト水質悪化
近年市内井水ノ減退ハ年ト共ニ増加シ,殊ニ大正15年ニ於ケル渇水ハ最モ甚シク市民ハ水量ヲ増サンカ為ニ競テ井戸ノ掘下ケヲナシタルモ,依然トシテ増加セス。其ノ当時市内1,823個ノ井戸ニ対シ調査ヲナシタルニ,飲用水ニ支障408個,雑用水ニ支障109個,使用ニ支障アルモノ188個合計705個ニシテ,支障アルモノ総個数ノ3割9分ニ当レリ。其ノ他ノ井戸ニ於テモ大部分ハ使用ノ節約其ノ他ノ方法ニテ辛フシテ日常ノ用ニ供シ得タルモノトス。如此殆ント其ノ大部ハ支障アリタルヲ以テ,市民ノ苦痛ト不安トハ想像以上ニシテ,市ハ其ノ応急策トシテ市費ヲ以テ飲用水ノ供給ヲ企図タルモ,市財政上之ヲ実現スルニ至ラス,偶一時ノ慈雨アリテ其ノ急ヲ緩和スルコトヲ得タリ。而シテ水量ノ減退ハ井水ノ混濁ヲ来タシ,水質迄影響ヲ及ホシ,試ニ昭和4年7月調査シタル井水水質検査表ヲ見ルニ,井数2,853個ノ内其ノ儘使用ニ適スルモノ735個ニシテ,僅ニ総数ノ1割9分ニ過キス。其ノ多クハ濾過若クハ煮沸スルニアラサレハ使用ニ湛ヘサル状態ニシテ,市民,保健上之レヲ看過スル能ハス。現在下市ノ一部ニ給水シツツアル簡易水道ハ,旧藩時ニ修築シタル水源池ニ多少改良工事ヲ施シタルモノニシテ,最近人口ノ増加ニ従ヒ水量不足シ,更ニ其ノ付近ノ山麓ヨリ湧出スル清水ヲ集合シテ之ヲ補ヒ給水ヲナシツツアルモ,近来山林ノ開墾其ノ他ノ為漸次水源涸渇シ,給水ニ不足ヲ生シ夏季渇水ノ際一時給水ヲ制限シ,或ハ一時断水等ヲナシ,当面ノ急ヲ凌キツツアリ。今後人口ノ増加ニ対応シテ水源池ヲ拡張シ水量ノ増加ヲ謀ラントスルモ,地形ノ関係上之レヲ許サス。仮令配水池ニ水量十分ナルモ,鉄管ノ口径現在ノ使用量ニ対シ送水能力ナク,為ニ末端付近ニ於テハ昼間殆ント断水状態ニシテ絶エス水栓ヲ開放シ居ルモ,所要ノ水量ヲ得ルコト能ハス,僅ニ夜間他ノ使用セサル時機ニ於テ之レヲ得ルノミ。従テ洗濯ハ那珂川ニテ之ヲナシ,浴場用水,殆ント之レヲ得ルニ由ナク,況ヤ其ノ付近区域外ノ市民ハ従来ノ井水ヲ濾過シテ辛フシテ日用ニ供シ居ル状態ニシテ,下市ノ発展セサルモ全ク飲用水欠乏ニ基因スルヲ以テ,水道布設ヲ痛感シ居ル次第ナリ。(第1・第2・第3表参照)――(以下省略)
2 伝染病予防
伝染病中腸室扶斯ノ如キハ不良井水ニヨリ媒介スルモノニシテ,水道布設ハ之レカ予防上最モ必要ナルハ勿論ナリ。最近10ケ年間ノ統計類ヲ見ルニ,大正9年ヨリ同13年迄ハ毎年増加シ,14年ヨリ漸次減少シ来レリ,之レ市ハ前年多数患者ノ続発スルニ鑑ミ一層予防ニ努力シタルト個人ノ自覚トニヨルモノニシテ,爾来之レカ防疫ニ就テハ極力努力スト雖モ之レヲ撲滅スルコト能ハス。昭和3年ニハ尚且32名ノ腸室扶斯患者ヲ出スニ至レリ,今10ケ年間ノ患者ヲ市内水道区域ト区域外トヲ区別シテ調査スルニ,殆ント毎年患者ハ区域外ノ方ニ多ク10ケ年ノ平均百分率ハ区域内0.0008ニ対シ,区域外0.0004ニシテ約8割多シ又其ノ患者発生個所ヲ調査スルニ区域内ハ点々発生シ,区域外ハ隣接シテ発生ス。之レ前者突発的ナルニ反シ,後者ハ連続的ナルヨリ見ルモ不良井水ノ使用ヨリ伝染スルモノト想像スルニ難カラス。而シテ水道ハ吾人衛生上殊ニ伝染病予防上必要ナル施設ニシテ,以上ノ統計ハ如何ニ其ノ必要ナルカヲ如実ニ物語ルモノニシテ,本市トシテ1日モ速ニ完全ナル水道ヲ布施シ,市民ニ純良ナル水ヲ供給シ,以テ一般市民ノ健康増進ヲ謀ルコトハ今日急務ナリト信ス。(第4表参照)
3 火災予防
本誌最近10ケ年間ニ於ケル火災ノ統計ハ,72回 焼失戸数379戸其ノ損害見積高225万2,760円ニシテ,其ノ発火期ハ大抵冬春季間ニ於テ最モ多シトス。本季間ハ東北風多ク屢大火ノ惨害ヲ被ムリタルコトアリ,元来本市ノ上市部面ハ高地ニシテ井戸ノ深度深ク一朝有事ノ際利用困難ナルヲ以テ,上市部面ニ82個ノ貯水池ヲ設置シタルモ,1個ノ貯水量ハ僅ニ80石及至100石ニシテ,昭和元年ノ上市向井町ノ大火ノ際ハ付近ノ貯水池ノ水ヲ悉ク使用シ尽シ,遥ニ拾数町ヲ隔ツル貯水池ノ水ヲ逓送的ニ之ヲ使用シタルモ,鎮火セシムルコト能ハス。付近ニ井戸アルモ之レ亦深度ノ関係上利用困難ニシテ,消防手器具ヲ擁シテ袖手傍観スルノ外ナク僅ニ破壊消防ニ依リ鎮火セシムルコトヲ得タリ。如此本市ノ火災ハ発火後5分間内ニ鎮火セシムルニアラサレバ,忽ニシテ大火トナルニ至ルハ統計表ノ示ス処ニシテ,其ノ火災ハ上市ニ多ク下市ニ少シ。之レ簡易水道ノ布設シアル賜ニシテ,水圧低キモ各戸ニハ給水栓アリ,道路上ニ消火栓アルヲ以テ之ヲ利用シ鎮火シ得レハナリ。最近10ケ年間ノ統計ヲ見ルニ,水道ノ布設シアル区域ハ発火回数19回,区域外ハ53回。1回ニ対スル焼失戸数ハ区域内3.6戸,区域外5.8戸,1回ニ対スル損害高ハ区域内ハ1,517円,区域外3万9,452円ニシテ,水道ノ布設シアラサル上市部面ハ火災ニ対シ如何ニ損害ノ大ナルカヲ立証スルコトヲ得ヘシ,今日消防組織ハ改善セラル器機ハ整備シ,更ニ常設消防部ヲ設置シタリト雖モ,常ニ用水ヲ十分ニシ置クニアラサレハ器械モ消防手モ何ノ用モナサス。之レヲシテ十分其ノ能力ヲ発揮シ市民ノ不安ノ念ヲ一掃スルニハ,水道ノ布設ノ外ナク,市民ハ1日モ早ク其ノ実現ヲ熱望シ火災ニ依ル損害ヲ軽減スルハ実ニ急務ナリトス。(第5表参照)
4 失業者救済
我国ノ経済界ハ近年漸次不況ノ傾向ヲ示シ,最近愈深刻ヲ極メ従テ産業ノ不振モ亦甚シク事業ヲ縮小スルモノ工場ヲ閉鎖スルモノ続出シ,為ニ多数ノ失業者ヲ出シ,地方ノ職業紹介所モ亦官憲其ノ他ト連絡ヲ通シ之レカ救済ニ全力ヲ傾注スト雖モ,世界的不況ノ時代ニアリテ到底其ノ目的ヲ達スルコト能ハス。本市ハ産業都市ニアラサルヲ以テ比較的失業者少キモ,帝都ニ接近シ居ルヲ以テ少シク大ナル土木工事ノ使用人夫ハ常ニ其ノ方面ヨリ集リ来ルヲ常トシ,最近ニ至リ俗ニ西行ト称スル各種人夫職工等ノ出入スルモノ多ク,目下市カ埋立工事ヲ施行シツツアル現場ニ日々数人宛時ニハ1小隊ヲ組ミ来ルヲ目撃スル状況ニシテ,中ニハ市ノ紹介所ニ就職ヲ申込ムモノ多数アルモ,到底一小都市ノ能ク多数ノ失業者ニ職ヲ与ヘ救済ノ目的ヲ達スルコト不可能ナリ。斯ク多数ノ失業者ノ出入ハ地方一般労働者ノ生活ニ不安ノ念ヲ起サシメ,延テ思想上ニモ悪影響ヲ及ホスコト明ナリ。最近本県ニテハ之レ等労働者ノ為土木工事ヲ起シ救済スル計画アリト聞ク,誠ニ時運ニ適シタル計画ニシテ多数ノ労働者ヲ救済スルニハ土木工事ハ最適当ナル事業トス。今本市ノ水道工事費金225万円中人夫諸職工(特殊職工ヲ除ク)賃金ハ41万2,800円ニシテ,平均賃金ヲ金1円50銭トセハ実ニ27万5,197人ヲ使役スルコト得,之レヲ2ケ年間ニ割当ツレハ1日377人ヲ使役シ得ルモノトス。今日多数ノ失業者ノ続出スル秋((時カ))ニ当リ,1日377人ヲ救済スルハ実ニ九牛一毛ニ過キスト雖モ,之レヲ地方的ニ見レハ稍其ノ目的ヲ達スルコトヲ得ヘク,又一面ニハ材料費金154万5,000円之レヲ全部純国産品ヲ使用スル計画ナルヲ以テ,間接ニモ失業者救済トモナルヘク,故ニ此ノ際水道工事ヲ起シ之レ等失業者ヲ救済スルハ社会政策上最モ緊要欠クヘカラザルモノト認ム。
その主要な内容は,市民衛生上よりする水量不足と水質の悪化であり,そのため心配な伝染病と火災について説明している。また,世界的不況からくる失業者増大に対する救済策,純国産品の材料を使用することを前提とした産業振興策をも理由としている。
統計では,大正9年から昭和4年まで10年間に,チフス患者の発生が下市水道区域では人口に対して0.0008パーセント,それ以外の市内では0.014パーセントとなり,水道がいかに衛生上重要であるか理解できる資料が提示されている。火災は10年間で72回あり379戸が焼失して,1回に平均5.3戸が焼失している。区域内は19回で69戸,1回平均3.6戸,区域外は53回で310戸,1回平均5.8戸となり,水道の存在は回数には関係はないであろうが,焼失戸数の面で大きく影響するように思われた。
6月26日に,東京駅から午後1時40分に出された一通の電報がとどいた。のちに水道技師長となる岡田卯之助より,内務省での審査が終了し,起債認可申請書類が大蔵省に廻送されたという内容であった。
こうして,大蔵省地方債課において調査が始まったのを知った市当局は,庶務課長谷伴夫と技師後藤直彦を上京させて説明させ,のちには鈴木市長も加わって促進運動を展開した。7月9日,鈴木市長は大蔵省各係官の好意ある言動に触れ,市民に大きなお土産品を持って帰水することができた。
以上のような申請作業の終了によって,認可は時間の問題であろうと楽観していたとき,またも難問が発生した。水戸市の特殊事情によって,給水料と水道費特別税戸数割は新旧区域による不均一の徴収や賦課が予定されていた。このような例は他の土地にはなく,関係当局としては,市民に不平等な負担を課すことになり,認可以前の問題であって,改正をする必要を認めるとあった。なお,それが改正できない場合は,検討の対象より除外するとまで指導された。これに対して水戸当局は,水戸においては他に例をみないほどの古い水道布設の実績があること。これら施設完成の経費を適切に評価し,その負担分を補償することなくしては全市水道布設事業の進展は不可能であることを説明した。その主たる根拠として,つぎのような理由書などを作成し,市会議員をはじめとした関係者で中央政界に働きかけた。
水道使用料不均一徴収並水道費特別税戸数割ヲ不均一ノ税率ヲ以テ賦課スル理由書
本市ノ一部ニ既設水道アリ,明治43年中其ノ区域民ノ一部負担ヲ以テ敷設シタル水道ニシテ,当分現在ノ儘ニテ給水スルコトヲ得ルモ其ノ水圧低ク消火栓ノ如キハ喞筒ヲ連接シテ使用スルノ状態ニアリ且ツ水量モ充分ナリト云フ能ハサルヲ以テ,今回新ニ水道敷設ヲナスニ当リ此ノ区域ヲモ抱含シテ布設スルコトトシタルモノナリ,元来前記既設水道ニ在リテハ,当該区域ニ於テノミ負担シ敷設シタルモノナルヲ以テ,新区域ト同一ノ負担ヲナサシムルハ権衡ヲ得サルヲ以テ,昭和4年度ヨリ同18年度迄15ケ年間,其ノ水道使用料ヲ別紙水道給水条例ノ通リ不均一ニ徴収スルコトトシ,尚今回新ニ水道布設ヲナスニ当リテハ旧水道区域民ノ負担シアリタル総費額金25万9,475円65銭ヲ,水道費特別税戸数割ニ於テ軽減負担セシムルノ至当ナルヲ認メ,之ヲ昭和4年度ヨリ同18年度迄15ケ年度間ニ割当テ1ケ年金1万7,298円37銭宛軽減負担セシメ,以テ全市水道布設事業ヲ円滑ニ進捗セシムルト同時ニ水道布設費負担ノ均衡ヲ得セシメムト為シタルモノナリ
特別税戸数割各年度負担ニ関スル件
特別税戸数割ハ起債年度ニ於テハ財政計画上已ムヲ得ス 市民ノ負担シ得ル限度迄コレヲ賦課スルコト為シタルモ コノ最大限度ノ課税ヲ永続スルコトハ到底市民負担ノ堪フル所ニアラス 依テ漸次コレヲ軽減セシメタリ 一面水道費起債ハ210万円ノ巨額ニ達スルヲ以テ 長期ニ亘リテコレヲ償還セサルヘカラズ 其ノ間多岐ニ亘ル市ノ施設及事業等ニ於テハ 予期セサル必要経費ノ支出ヲ見ル場合モ生スヘキニ依リ コレヲモ考慮ニ加へ漸次軽減セシメタルモノナリ 然レトモ本計画ノ実施ニ当リテハ 市ノ財政ト市民ノ担税能力トヲ慎重考察シ 機宣ノ方法ニ依リ繰上償還ヲ為シ可成ク短期間内ニ償還ヲ了セムトスル見込ナリ
なお,『水戸市水道誌』には,つぎのような理由書も送付したとある。
給水不均一徴収理由書
本水道ノ給水料ハ 其ノ経済状態ト全国各市水道ノ給水料トヲ参酌シ 私設専用栓給水料金1円30銭(1戸5人迄月額料金)ヲ標準トシテ各種別ノ給水料ヲ定メタリ 即チコレヲ新区域ノ給水料ト定メタルモ 旧区域ハ現在ノ水道ヲ以テ当分ノ内給水ヲ継続シ得ルモ 水圧低ク且水量充分ナリト云フヲ得サルニ依リ 今回ノ計画ニコノ区域ヲモ包含シテ水道ヲ布設スルコトト為シタルモノニシテ 一面コノ区域ノ布設費ハ当該区域ノ負担ヲ以テ支弁シタルモノナルヲ以テ 本事業ヲ円満ニ進捗セシムル上ヨリ旧区域ノ給水料ハ直ニ前記ノ給水料迄激増セシムルコトヲ避ケ 15ケ年間ハ私設専用栓給水料金65銭(1戸5人迄月額料金)即チ現在旧区域ノ給水料ニ5銭ヲ増額シ新区域料金ノ半額トシ コレヲ標準トシテ各種別ノ給水料ヲ定メ以テ旧区域ノ料金トナシ 新区域ト不均一ニ徴収スルコトト為シタルモノナリ
なお,7月15日には,小原事務官よりの要請によって,つぎのような参考資料を提出している。
旧水道区域負担総額調,既設水道工事費調,既設水道工事費財源調,既設水道工事費借入金利子調,既設水道一般市費繰入額新旧区域負担調,市基本財産繰入額内訳,水道費繰入金繰戻変更経過調,昭和4年度土地売払代歳入,現在水道調(昭和4年度)の9種類であった。
そのとき提出された下市水道の給水料は,つぎのようなものである。