水戸市参事会は,昭和5年8月15日に開催して,8月市会に提案する水道布設にともなう案件をつぎのように決定した。全市会議員を水道臨時委員に任命して,市会の全面的支援体制を確立すること。初年度の事業費借り入れは,20万5,000円を大蔵省預金局より利率年4分8厘,29万5,000円を簡易保険局より利率6分でとすること。
こうして8月22日の市会には,市当局より水道関係はつぎの3件が提案された。「第29号議案水戸市水道臨時委員規程設定ノ件」,「第30号議案水戸市水道布設ニ関スル臨時職員規程設定ノ件」,「第31号議案水戸市水道布設ニ関スル諸給与条例設定ノ件」である。それぞれの議案は,専門的な側面もあって全体での検討も不可能であったことから,市会内に存続していた水道調査臨時委員会(7人委員会)に調査が付託された。
全市水道3部会の部長
8月25日の7人委員会では,第29号議案は原案通り,第30号議案と第31号議案は一部の修正を加えることに決した。このとき,水道部の新設はしても部長は倉持助役の兼任として専任制はとらないこと,3課制を採用しても課長は他関係担当者の兼務とする。内定しつつあった顧問も経費節減のため否定し,技手11人制を6人制とし,それぞれ月給額も10円程度引き下げる修正案を作りあげた。
26日に開催された継続市会で,7人委員会の修正案が報告され,修正反対の少数意見はあったが,多数決によって決定した。その内容はつぎのようである。
水戸市水道臨時委員規程
第1条 本市ハ全市水道布設事業ノ為市制第83条ニ依リ水道臨時委員ヲ置ク
第2条 委員ハ30名トシ市会議員ヨリ市長ノ推薦ニ依リ市会之ヲ定ム
第3条 委員ノ任期ハ全市水道布設事業完成ノ日迄トス
第4条 委員ノ職務ニ関スル細則ハ市長之ヲ定ム
付則 本規程ハ発布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
水戸市水道布設ニ関スル臨時職員定員規程設定ノ件
第1条 本市水道布設ニ関スル吏員ノ定員左ノ通リ定ム 但シ事務ノ都合ニ依リ市長ハ予算ノ範囲内ニ於テ之ヲ増減シ又ハ他ノ市吏員ニ兼務ヲ命スルコトヲ得
水道技師長 1人
水道技師 1人
水道技手 6人
水道雇 16人
第2条 前条吏員ノ外市長ハ必要ト認メタル場合ハ予算の範囲内ニ於テ顧問技師及技術員ヲ嘱託スルコトヲ得
付則 本規程ハ発布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
水戸市水道布設ニ関スル諸給与条例
第1章 総則
第1条 本市水道布設ニ関スル顧問技師同職員及兼務吏員ノ諸給与ニ関シテハ本庁ノ例ニ據ルノ外凡テ本条例ノ定ムル所ニ據ル
第2章 報酬及手当
第2条 顧問技師ノ報酬及職員ノ給料ハ予算ノ範囲内ニ於テ市長之ヲ定ム
第3条 臨時水道事務ノ兼務ヲ命シタル吏員ニ対シ市長ハ勤務ノ状況ニヨリ手当ヲ支給スルコトヲ得
第4条 市長ハ水道職員ニ対シ左表ノ範囲内ニ於テ月額手当ヲ支給スルコトヲ得
水道技師長 月額金40円以内
水道技師 月額金30円以内
水道書記 月額金20円以内
水道技手 月額金20円以内
水道雇 日額金50銭以内
前項ノ手当ハ左記ノ場合ニ於テハ日割計算ニ依リ之ヲ支給ス
1 旅費ヲ支給スル場合
2 欠勤1ケ月ヲ通シ5日以上ノ場合
3 中途任免シタル場合
第5条 前項ノ月額手当ハ毎月5日迄ニ前月分ヲ支給ス 但シ中途解任シタルモノニ対シテハ其ノ際之ヲ支給ス
第3章 旅費
第6条 旅費ハ顧問技師水道技師長ニハ本市旅費支給規則別表1等額ヲ 水道技師ニハ同2等額ヲ 水道書記水道技手ニハ同3等額ヲ 水道雇ニハ同4等額ヲ支給シ兼務吏員ニハ各本職相当額ヲ支給ス
第7条 第4条ノ月額手当ヲ受ケタルモノ事業区域ニ出張若ハ外勤シタル場合ト雖旅費ハ之ヲ支給セス
第8条 水道職員ニシテ宿直シタルトキハ本庁ノ例ニ依リ賄料ヲ支給ス
付則 本条例ハ発布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
これをもとに市長は,つぎのような水戸市水道臨時委員職務に関する細則を告示した。
水戸市水道臨時委員職務ニ関スル細則
第1条 本市水道臨時委員ヲ左ノ3部門ニ分チ其ノ所属ハ委員ノ互選ヲ以テ之ヲ定ム
1 庶務部 8人
2 工務部 17人
3 経理部 5人
第2条 前条各部ノ職務分掌ノ概目左ノ如シ
庶務部
1 市債並借入金ニ関スルコト
2 各種入札ノ執行及契約ニ関スルコト
3 土地及工作物ノ買収借入補償ニ関スルコト
4 其ノ他他ノ部ニ属セサル事項ニ関スルコト
工務部
1 工事ノ設計及施行ニ関スルコト
2 工事ノ材料及機械器具ニ関スルコト
3 工事ノ出来形ニ関スルコト
4 其ノ他工務ニ関スルコト
経理部
1 経理ニ関スルコト
第3条 各部ニ部長1名副部長1名ヲ置キ其ノ部委員ノ互選ヲ以テ之ヲ定ム
第4条 部長ハ其ノ部ニ属スル事項ヲ掌理ス 部長故障アルトキハ副部長之ヲ代理ス 部長ハ他ノ部ノ議事ニ参与スルモノトス
第5条 各部委員会ハ市長之ヲ召集ス
付則 本規程ハ発布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
この規程や細則によって市会内の各会派は,全員がいずれかの部会に参加するために,それぞれの現有勢力をもとに割り当て数を算出し,市長に任命される準備に入った。当時の市会議員の定数は30であったが,2名の欠員があって28名の在職であった。この28名中1名だけが無所属で,他は3つの会派に分裂していた。議員の元老格であり,議長を勤めていた島村次男が所属する同和会が12名,小沼操が率いる公正会が9名,水道問題に積極的姿勢をもっている森司馬彦の属する中正会が6名となっていた。この時代は中央政界から県政界まで,民政党や政友党の対立があり,それが市会内3派の運動とも重なって複雑な情勢もみられた。
各会派内での委員の割り振りが市長に報告されたことから,8月30日に市会が開催された。議案は水戸市水道臨時委員推薦の件で,表のような案が市当局より提出され,議決されている。そのとき部長と副部長も,各部内での互選によって決定された。同和会が多数会派の強さで部長席2つと副部長席1つ,公正会は第2会派として副部長席2つ,少数派の中正会は部長席1つという割り当てとなっている。
このことを,新聞は「全市水道建設の単なる諮問機関でなくして実質的に212万円の大工事を料理する実権を与へられてゐ((い))るだけ各派は比率について各自の現有勢力を維持すべく努力するところあり」(「いはらき新聞」昭和5年8月31日)と伝えている。