8月26日市会で可決された第30号議案を受けて,鈴木市長は布設に関する事務処理の細則をつぎのような規程で発布した。
水戸市水道布設ニ関スル處務規程
第1条 本市水道布設ノ為本市役所ニ臨時ニ左ノ課ヲ置キ事務ヲ分掌セシム
水道庶務課
水道工務課
水道経理課
第2条 課ニ課長ヲ置キ水道職員又ハ市吏員中ヨリ市長之ヲ命ス
第3条 技師長ハ上司ノ命ヲ承ケ技術ヲ掌リ工事ニ関スル一切ノ責ニ任ス 課長ハ上司ノ命ヲ承ケ其ノ課ノ事務ヲ整理シ所属課員ヲ指揮監督ス
課員ハ課長ノ命ヲ承ケ担任事務ニ従事ス
第4条 各課ノ分掌事務左ノ如シ
水道庶務課
1 文書ノ収受発送ニ関スルコト
2 職員以下ノ進退ニ関スルコト
3 諸規程ノ設定改廃ニ関スルコト
4 会議ニ関スルコト
5 予算決算ニ関スルコト
6 市債及借入金ニ関スルコト
7 工事請負人夫供給其ノ他物品購入不用品売却ノ入札執行及契約ニ関スルコト
8 土地及地上物件工作物ノ買収借入補償ニ関スルコト
9 当直ニ関スルコト
10 職員以下服務及取締ニ関スルコト
11 其ノ他他課ニ属セサル事項ニ関スルコト
水道工務課
1 測量製図及工事設計ニ関スルコト
2 工事ノ執行及監督ニ関スルコト
3 工事材料及機械器具ノ検査受渡保管ニ関スルコト
4 工事出来高検査及報告ニ関スルコト
5 既成工作物ノ維持管理ニ関スルコト
水道経理課
1 収入支出ニ関スルコト
2 事務用需要用品ニ関スルコト
3 物品ノ保管受渡ニ関スルコト但シ工務課ニ属スルモノヲ除ク
4 入札及契約保證金ニ関スルコト
5 其ノ他経理ニ属スル事項ニ関スルコト
第5条 本規程ニ定ムルモノノ外総テ本市役所處務規程ヲ準用ス
付則 本規程ハ発布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
これら以前の8月1日には臨時水道部を設け,その部内に庶務・経理・工務の3課を置く方針を発表した。これに関した全市水道調査臨時委員会の8月25日の会合では,新設の水道部には専任部長を置かず,倉持助役が兼任し,庶務課長は谷庶務課長の,工務課長は後藤土木課長の,経理課長は山口収入役の,それぞれ兼務体制と決定した。
これに対して市会では,公正会が反対をしたが,同和会と中正会が賛同して多数決により,部長の兼務は市長にすると可決している。その理由は,専任部長を設置すると市に首脳部ばかりが増加して命令も複雑となり,人件費もかさむことになる。また,人選には困難が多く,市会の混乱が予想され,のちには市長派や部長派なども生じて布設そのものに障害となる恐れもあるとあった。
9月25日,全市水道布設のための臨時水道部の職員名が発表され,市役所2階の一部に事務所を開設した。これを伝える新聞(「いはらき新聞」昭和5年9月26日)によると,全市水道設計者の岡田卯之助を水道技師長(年俸3,600円)とし,技手に後藤鶴松(月俸100円)と斉藤治男(月俸100円),書記に田所熊次(月俸50円),雇に後藤武雄(月俸48円)と鈴木銀次郎(月俸55円),大高實(月俸5円),収入役山口新を経理課長兼務,技師後藤直彦を工務課長兼務,主事谷伴夫を庶務課長兼務とし,書記の住谷三次郎と大高鉄次を水道庶務課兼務,書記の植木安五郎と技手の柏原宇之吉と浅野鉄松そして道路技手の宮田正を水道工務課兼務,書記の大内義雄と長沼忠を水道経理課兼務にそれぞれ発令した。
臨時水道部の首脳陣
なお,『水戸市水道誌』より作成した表によると,臨時水道部職員の任命で一番早いのは9月22日の8人であり,25日以前に組織作りが始まっていたと思われる。
12月20日には,市役所構内の火ノ見櫓下に新築された木造二階建に移転した。階下は大広間方式で,庶務・経理そして工務の3課が同居した。二階は大小の2室になっていて,大部屋は製図作業用で,小部屋は技師長などの事務室であった。
技師長となった岡田卯之助は,下市水道の柵町延長工事を完成し,大正13年より全市水道調査をしていた人物で,水戸の水道事情に通じ,顧問になった茂庭忠次郎博士とも25年間の交流があった。その岡田が,布設認可を知ったとき,「水源を求めて(各地)踏破してから約15ケ年間水戸水道実現の夢を見てゐ((い))ました」と語り,喜んで技師長に就任したという。
運営の面では,つぎのような組織となった。技師長は,各課長の上役であって技術に関する判断と指揮をするが,事務上の処理については各課長が,市長に直結して専断する。とくに経理課長は,出納吏として市長の出納命令で,取扱主任は主管課長か工営所主任の受払命令で,分任出納吏は特に下命された範囲でと,それぞれ命令系統が明確になっていた。各職務についても責任体制が確立され,工事の進度状況は常に把握されていた。