4 資材の調達

383 ~ 391

 昭和5年12月3日,水道3委員会合同委員会で,布設に必要なる物品購入などの方法について協議し,より専門的に研究するため調査委員会を設置することになった。その案件は,物品出納規程・傭人被服貸与規程・物件購買及売払規程・傭員規程である。

 問題となった点は,水道部が提案した物品購入規程の第3条に「1廉((件カ))千円以下のものは技師長において随意契約を結ぶ事を得」と,傭員規程第5条の「傭員の採用及び解雇は技師長の内申により市長これを行ふ((う))臨時員は技師長これを専行する事を得」であった。臨時員とは,日給2円80銭の工夫のことである。

 12月6日の各委員会でも,これら技師長中心になる原案,その専横を助長する規定が論議の的になった。しかも水源地諸工事用器具として東京府下新玉川水道の払い下げを780円で購入する案が提出されて,市当局に対する市会水道委員会の態度は硬直し,険悪になった。委員長たちの努力で払い下げ品の購入は否決されたが,規程については前回での結論であった調査委員5人を選出し,検討を一任して散会している。

 9日に開かれた調査委員会で,市当局と協議して規程を市長中心に修正することになった。

 この案には,11日の市参事会も承認したが,当時の市会は同和会,公正会,そして下市中正会と3派によって運営されていたので,なかなか統一見解が形成されず少々混乱した。こうして12月18日の市会で決定されたのは,臨時水道物件購買売払及貸借規程などであるが,委員会の協力をもとに庁達としてつぎのものが公布されている。なお当時の規程は現存せず,改正されたものであるが参考に表示する。


昭和5年8月27日「いはらき新聞」

  水道工事用材料取扱手続[(昭和5年12月10日 庁達第10号改正/昭和8年3月31日 庁達第31号)]

第1条 本規程ニ於テ材料ト称スルハ工事費支弁ニ属スル工事用機械 器具ヲ除キタル諸品ヲ謂フ

第2条 材料ノ保管及出納ヲ管掌スル者ヲ材料出納吏トシ収入役ヲ以テ之ニ充ツ但シ必要アルトキハ材料分任出納吏ヲ置クコトヲ得

   材料分任出納吏ハ市長之ヲ任免ス

第3条 各係其ノ他必要ト認ムル工事現場ニ材料取扱主任ヲ置キ材料ノ受払及監守ノ責ニ任セシム材料取扱主任ハ市長之ヲ任免ス

第4条 材料出納吏ハ左ノ帳簿ヲ備ヘ材料ノ出納ヲ整理スヘシ

   1 材料出納簿      第1号様式

   2 鉄管出納簿      第2号様式

   3 材料生産整理簿    第3号様式

   前項ノ外必要ニ依リ補助簿ヲ設クルコトヲ得

第5条 材料取扱主任ハ左ノ帳簿ヲ備ヘ現場ニ於ケル材料ノ取扱ヲ瞭ニスヘシ

   1 材料受払簿      第4号様式

   2 鉄管受払簿      第5号様式

   3 材料生産整理簿    第3号様式ニ準ス

   4 材料亡失毀損整理簿  第6号様式

   前項ノ外必要ニ依リ補助簿ヲ設クルコトヲ得

第6条 材料取扱主任ハ第7号様式ニ依リ所要材料ヲ材料出納吏ニ請求スヘシ

第7条 材料出納吏材料ノ交付ヲ為ストキハ第8号様式ニ依リ材料送付票ヲ発スヘシ

第8条 材料取扱主任材料ノ交付ヲ受ケタルトキハ第9号様式ニ依リ領収証ヲ発スヘシ

第9条 材料取扱主任ハ毎月第10号様式ニ依ル材料受払月報ヲ調整シ翌月7日迄ニ材料出納吏ニ提出スヘシ

第10条 材料出納吏ハ毎月第11号様式ニ依リ材料出納月報ヲ調整シ翌月10日迄ニ市長ニ提出スヘシ

第11条 材料出納吏ハ年度経過後30日以内ニ第12号様式ニ依リ材料出納計算書ヲ調整シ市長ニ提出スヘシ

第12条 材料ヲ毀損 亡失シタルトキハ材料取扱主任其ノ事由ヲ詳記シ第13号様式ニ依リ材料出納吏ヲ経テ市長ニ報告スヘシ

   材料出納吏前項報告ヲ受ケタルトキ又ハ自己保管ノ材料ヲ亡失若ハ毀損シタルトキハ其ノ事実ヲ詳具シ市長ノ決済ヲ受ケ処理スヘシ

第13条 工事上不用ニ帰シタルモノ又ハ使用ニ堪ヘサルモノアルトキハ材料取扱主任ハ第14号様式ニ依リ材料出納吏ニ返納スヘシ

第14条 材料取扱主任其ノ取扱ニ係ル材料ニシテ振替ヲ要スルモノアルトキハ第15号様式ニ依リ材料出納吏ニ報告スヘシ

   材料出納吏其ノ保管ニ係ル材料ニシテ所定以外ノ費目ニ流用セムスルトキハ予算ニ関スル手続ノ為其ノ調書(第15号様式ニ準ス)ヲ庶務係ニ送付スヘシ

   庶務係ニ於テ前項予算ニ関スル処理ヲ了シタルトキハ第16号様式ニ依リ関係先へ通知スヘシ

第15条 現場ニ於テ製作変形シタルモノ又ハ一旦工事ニ使用シタル材料及工事施行ノ結果生産シタル物件アルトキハ第17号様式ニ依リ材料出納吏ニ報告スヘシ

   前項材料又ハ物件ヲ直ニ工事ニ使用セムトスルトキハ第6条ノ手続ヲ為スヘシ

第16条 本規程ニ拠ルノ外物品出納規程ヲ準用ス

  付則 本規程ハ発布ノ日ヨリ之ヲ施行ス

(様式は省略)


  水道課物品出納規程[(昭和5年12月10日 庁達第6号/昭和8年3月31日 庁達第29号改正)]

  第1章 総則

第1条 本規程ニ於テ物品ト称スルハ水道課ニ属スル文書 有価証券及工事材料ヲ除キタル備品(機械 器具ヲ含ム)消耗品其ノ他一切ノ動産ヲ謂フ

第2条 物品ノ出納ハ年度ヲ以テ区分シ毎年4月1日ヨリ翌年3月31日ニ至ル12月ヲ以テ1年度トス但シ所属年度ハ出納シタル日ニ依リ区分スヘシ

第3条 物品ノ保管及出納ヲ掌ル者ヲ物品出納吏トシ収入役之ヲ担任ス

第4条 市長ニ於テ必要アリト認ムルトキハ各係ニ物品取扱主任ヲ置キ物品ノ受払及監守ノ責ニ任セシム

   物品取扱主任ハ市長之ヲ任免ス

第5条 前条物品取扱主任ヲ命シタルトキハ之ヲ物品出納吏ニ通報スヘシ其ノ交替シ又ハ代理ヲ置キタルトキ亦同シ

第6条 物品出納吏 物品取扱主任交替ノ場合ハ速ニ其ノ保管ニ係ル物品ノ受授ヲ了シ最終記帳ノ次ニ合計高及交替年月日ヲ記載シ且前任者 後任者連署シ其ノ旨市長ニ報告スヘシ

第7条 物品出納吏 物品取扱主任死亡其ノ他ノ事故ニ依リ自ラ引継ヲ為スコト能ハサル場合ハ市長ハ他ノ吏員ニ命シ前条手続ヲ為サシムへシ

第8条 物品取扱主任ヨリ物品出納吏ニ提出スル書類ハ総テ水道課長ヲ経由スヘシ

  第2章 出納

第9条 物品出納吏ハ市長ノ命令アルニ非サレハ物品ヲ出納スルコトヲ得ス

第10条 物品ノ買入 生産其ノ他物品出納吏ノ保管ニ属スルヲ納トシ 消耗 売却 廃棄及生産ノ為ノ消費其ノ他保管ヲ離ルルヲ出トス

第11条 物品出納吏前条保管ニ属スヘキ物品ヘ受持スルトキハ物品出納簿ニ登記スヘシ返納品アリタルトキ亦同シ

第12条 物品取扱主任ニ於テ物品ノ交付ヲ受ケムトスルトキ若ハ修理ヲ要スルトキハ物品請求簿(第1号様式)ニ依リ物品出納吏ニ請求スヘシ

第13条 物品出納吏物品ヲ交付スルトキハ物品請求簿当該欄ニ領収印ヲ徴スヘシ但シ浄水場係ニ属スルモノニ在リテハ送付書(第6号様式)ヲ発行シ物品取扱主任ヨリ領収書(第7号様式)ヲ徴スヘシ

第14条 交付ヲ受ケタル物品ニシテ不用ニ帰シタルモノ又ハ使用ニ堪ヘサルモノ在ルトキハ物品取扱主任ハ返納書(第2号様式)ニ現品ヲ添ヘ物品出納吏ニ返納スヘシ

第15条 物品ニシテ売却又ハ棄却ヲ要スルモノアルトキハ物品出納吏之ヲ審査シ其ノ手続ヲ為スヘシ

第16条 物品出納吏ハ左ノ帳簿ヲ備ヒ物品ノ出納ヲ整理スヘシ

 1 備品出納簿  (第3号様式)

 2 消耗品出納簿 (第4号様式)

 3 備品配与簿  (第5号様式)

 前項ノ外必要ニ応シ補助簿ヲ設クルコトヲ得

第17条 物品取扱主任ハ前条区分ニ遵ヒ物品受払簿ヲ備ヘ物品ノ受払ヲ明ニスヘシ

第18条 前条ノ帳簿ハ其ノ証憑書類ニ基キ遅滞ナク登記シ証憑書類ハ順次編綴整理スヘシ

  第3章 保管責任

第19条 貯蔵物品ハ物品出納吏 供用物品ハ物品取扱主任 専用ノ物品ハ各自之ヲ保管スヘシ

第20条 物品出納吏ハ既ニ交付シタル物品ト雖其ノ取締上ニ関シテハ総テ監督ノ責任アルモノトス物品取扱主任ノ各自保管物品ニ於ケル亦同シ

第21条 第19条ニ依リ保管ノ責アル者其ノ物品ヲ故意又ハ怠慢ニ因リ亡失若ハ毀損シタルトキハ賠償ノ責ニ任スヘシ直接保管ノ責ナキモノ雖故意又ハ怠慢ニ依リ物品ヲ亡失毀損シタルトキ亦同シ

第22条 物品ヲ亡失又ハ毀損シタルトキハ物品取扱主任ニ於テ直ニ保管者若ハ当事者ヨリ事由書ヲ徴シ物品出納吏ヲ経テ市長ニ報告スヘシ

第23条 物品出納吏前条ノ場合又ハ自己保管ノ物品ヲ亡失若ハ毀損シタルトキハ其ノ事実ヲ詳具シ市長ノ決裁ヲ受ケ処分スヘシ

  第4章 計算検査

第24条 物品取扱主任ハ毎年3月31日現在ニ於ケル保管備品ノ現在高ヲ4月7日迄ニ物品出納吏ニ報告スヘシ

第25条 物品出納吏ハ毎年度其ノ施行シタル物品ノ出納計算書(第8号様式)ヲ調整シ4月末日迄ニ市長ニ報告スヘシ

第26条 市長ハ毎年度1回以上物品出納ノ整否及現品ヲ検査スヘシ物品出納吏若ハ物品取扱主任交替シタルトキ亦同シ

  付則

第27条 本規程ハ公付ノ日ヨリ之ヲ施行ス

第28条 本規程施工上必要アルトキハ市長ニ於テ細則ヲ定ムルコトヲ得

第29条 工事用材料ノ出納ニ撃シテハ本規程ニ準シ市長ニ於テ之ヲ定ム

(様式は省略)

 資材のなかでもっとも金額の高いものは鉄管で,約60万円の予算が見込まれていた。その購入方法は入札によるとされた以外,具体的な方法が未確定であったため,各種の売り込み運動が活発に展開されるようになった。そこで水道庶務委員会は,12月2日に入札の方法について,指名入札にするか一般公募の公入札にするか検討をした。その結果,鉄管の入札は,鉄管製造の工場を所有する者を有資格とする公開入札に決定された。

 同月17日,市役所において鉄管購入の入札が,市長・市会の各部委員長と庶務委員立会で行われた。異形鉄管は,東京栗本鉄工所が入札参加者15名中最低価格(9,692円15銭)であったため落札し,制水弁は東京の久保田鉄工所が入札者12名中最低価格(7,918円)のため落札した。もっとも高額の鋳鉄直管は,隅田川製管所・永瀬鉄工所・久保田鉄工所・栗本鉄工所・広島鉄工場などの入札者で進められたが,2回の入札でも市の見積り額を大幅に超過するため不調として再検討することになった。

 翌日,入札を中止して随意契約に変更し,最低価格札を入れた栗本鉄工所と商談を始めた。39万6,357円96銭,39万2,920円,38万5,400円と市の条件変化によって価格も変化し,17日の夕刻には37万8,292円40銭と予定額より低い数字がでて契約が成立した。これは先の入札最低価格より1万8,065円56銭も安く,実施予算57万5,028円からしても19万6,735円60銭が節約できたことになる。


鉄管試験所工営所の職員

 なお,6年1月6日には,鉛・セメント・麻についても入札があった。麻は2,000貫を2,340円で落札となったが,鉛とセメントは予定額より高かったため後日の再入札とされた。このように水道布設事業の関係者が,全ての物品購入に際して,労を惜しまず交渉を重ねて価格を抑え,市民負担の軽減に努めたことが各種の資料のなかに数多くみられる。

 以上のような経過で購入された主なものは,つぎのようなものである。


主要材料の購買


主な機械器具の購買

 昭和5年12月2日,水道庶務委員会が開かれ,鉄管について入札問題とその試験所の設置が話し合われた。もともと工事に使用する材料などは,それぞれの工営所において試験をして利用するのが理想であるが,鉄管の場合は量も多く,種類も多様で,その試験にも特別な技術と施設を必要とすることから,鉄管試験所を特設することになった。その場所として,千波湖内堀埋立地と杉山河岸が候補地となり,庶務・経理・工務の委員会で実地調査をして決定することになった。その結果は,那珂川駅の構内とそれに隣接する民有地など約2,000坪を借り受けることが,鉄管の運搬にも便利であると決定した。

 昭和5年12月18日付臨水第103号で,東京鉄道局長吉田浩に鉄道省用地借用願を提出した。内容は,水戸那珂川駅構内616坪を鉄管試験及び材料置場として,昭和7年12月31日まで使用したいとある。理由として,水道布設に使用する鉄管・セメントなど器械類の重量が8,000余トンになり,これが運搬には多大な経費がかかり,経費節減のために鉄道線路に接近した土地が必要と説明している。当時この土地は,鉄道省より水戸合同運送株式会社が借用していたが,その返還同意書を付けた借用申請であった。

 鉄道省よりは返事がなかったので,翌6年2月21日付で,再度借用願を提出している。これを受けた東京鉄道局は,4月16日付東保未第377号の4で,水戸保線区主任の指揮監督下における土地使用の承認をした。


鉄管試験所関係

 水戸市は,建坪40坪の試験所,1坪の便所・水槽1,井戸1と材料運搬用として軌幅2呎の軽便軌条を設け,つぎのような土地をも借用して3月1日より作業を開始した。


借用地

 昭和6年6月12日には,木造平屋13坪5合と既設建物の増築改築を申請して,同年7月3日に許可された。こうして,鉄管以外にも,県庁に依頼して試験していたセメント類も,独自の体制で検査できるように整備し,7年3月31日に全ての材料の試験が完了した。そのため同時に試験所も使命を達成して閉鎖している。


鉄管試験の合格品