5 工事の請負問題

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 昭和5年10月7日,市会水道庶務・工務の合同委員会で,水道工事請負業務規程の話し合いがなされた。

 公入札については,全国請負業者を参加させるか,市内在住者に限定するか,指名入札にするか,一般公募にするかなどの基本的問題が続出した。完全公開にして全国の請負業者を参加させることを主張する委員は,認可されたときの条件が失業救済であり,総工費の約半額が県と国庫からの補助でもあることを理由にした。これに対して請負業者を市内に限定することを主張する委員は,総工費200万円から材料費・事務費などを差引いた実際の工費は20万か30万円程度であり,そのほとんどが土工費であるから全国より集める必要はない。国や県よりの補助があるというが,それも最終的には市民の財布から支出されるので,市民に還元するということからも請負は市内在住者に限定せよと主張している。

 最終的には,入札は工事の内容をもとに,その都度市会水道庶務委員会で協議して決定することで合意が成り立った。ただ,それが予算との関係もあって,最大限に利用され,入札のたびに請負関係者との間にトラブルとなるなど問題を残すことにもなる。

 5年11月15日,水道工務部委員会は,臨時水道部から提案された2案件を原案通りに可決した。

 1 東部電力会社より浄水場まで直流動力線架設の件。

 2 集水管埋設工事で,中州地表より深さ12尺の地点に埋設する予定を深さ16尺に訂正し,公入札とする件。

 これに対して水道庶務・経理の合同委員会は,同月16日に開かれ,公入札ではなく直接国税100円以上を納入している会社を有資格とする指名入札制と決定した。この決定にもとずき,水道部では,それまで入札参加を希望していた業者の中から,資格を確認して県内業者30,県外業者13の合計43業者を指名している。

 入札は11月25日に市役所で,水道工務委員立会いによって指名された業者全員の参加で始まった,集水管埋設工事は付帯の工事を含めて水源工事費とし,実施予算では10万6,910円であるが,最高入札額が9万6,000円で最低が当時の海門橋を完成した岳南組の3万2,000円であった。最低入札者が落札するのが当然ではあるが,設計をもとに作成された予算額との関係よりして必要なる工事を適切に遂行できないものと判断し,落札させず,4万3,700円の金額を記入した東京の大林組に決定している。

 ところが,このように当局が考える最低額を固辞することから,入札をめぐって少々のトラブルもあった。昭和6年3月にあった水道鉄管布設第1期(高区配水塔から馬口労町交番まで)工事の入札で,茨城土木請負業組合と市会と市当局の3者の意見が対立した。その対応策を協議するため,4月8日に市会水道委員全員会が開かれることになると,これを知った請負業組合(責任者椿松太郎)員10数人が市役所に押し寄せた。問題は,入札について委員会が,水道部直営工事なら予算8,400円の1割天引,業者の請負になるなら3割の天引額にすることを条件に承認したことに始まる。市当局は入札時に6,800円の最低札を入れた業者と,委員会決定の条件により,6,400円を目標にして随意契約の交渉をした。それができなければ工兵隊に頼むと係がいう。この経過を聞いた請負業組合側が,内務省の認可条件「失業対策」をもとに直営と請負での2割の差の理由について説明を求めたのである。

 4月27日には配水管布設第2期工事の入札を市会水道合同委員会の立会いで始めると,請負業組合の椿松太郎ら40人が,その延期を申し込んだ。入札が,市内の請負業者に限定した公入札でなく指名入札でもなく,地元業者の保護を少しも考える姿勢がないことを批難して,不入札同盟の成立を表明した。そのため入札者は東京の大林組だけであったが,その額が予算超過のため不調に終わった。

 また,高区配水塔の入札についても,関係者が身震いするような経過があった。基礎工事については4月13日に公入札で決定し,予定通りに完成して問題はなかった。が,その上に立つ配水塔の鉄骨とタンクの入札は,5月11日に全国の専門業者9社を指名してあった。開札の結果は4万3,680円で福島県平町(現いわき市)の堀江工業会社が落札した。鉄骨組立は6年7月10日着工の約束であり,基礎工事が7月15日には完全に終了する見通しもできたので,市当局は落札会社に着工の催促をした。それでもなかなか着工しないので,岡田技師長や原技師が会社まで出張して早期着工を求め,市会水道委員会でも6名の特別調査委員会を作って事情調査を始めるなど,工期の遅れを心配した。

 これらに懲りた関係者は,水道庶務委員会の承認をもとに,低区配水塔の工事については,集水管埋設で良心的工事をしている大林組に特命で請負いをさせようとしたが,実際には制度上その手段は取れなかった。