3 浄水場

417 ~ 426

 浄水場内の築造・建設は,事務所やポンプ・電気系統など一部を除いて,同所に設けられた浄水場工営所を中心に直営工事でなされた。那珂川右岸の堤内の地5,767坪7を,過去の大洪水の水位より約1尺高い地盤とするため6尺も盛土し,その周囲に3尺高の土堤をめぐらした。場内よりの排水は自然流下式になっているため,逆流の防止ができるようにその管の人孔井に摺動扉を設けた。


浄水場工事の全景(昭和6年7月)


浄水場施設断面図

 工事の着手と工期・竣功の状況は,表のようで昭和6年8月から同7年4月までに集中していた。7年3月30日の時点で,各種工事が遅れていて市当局の通水予定までの完成に不安があり,表のように延期の理由を明確にして問題点の解決に努めている。それまでにも,請負業者には市長名でつぎのような内容の通知をして,工期を守られるようにしていた。

  臨水第191号

  昭和7年3月14日

   (省略)殿

                                水戸市長 鈴木文次郎

   喞筒場建築其他工事ノ件

  標記工事竣工期限厳守方ニ就テハ 客月27日付臨水第148号ヲ以テ及御注意置候處 其後ノ工程ヲ観ルニ依然トシテ著シキ進捗ヲ観ス 斯クテハ喞筒据付 配電盤工事等ニモ甚シキ影響ヲ及ホシ 為ニ水道通水予定ヲ遅延スル虞レモ有之 万一如斯事態ヲ醸成スルコトアラハ容易ナラサル次第ニ付 右事情御了察ノ上必ス竣工期限内ニ竣工スル様 特ニ御配慮相煩度為念此段及御通知候也


浄水場内工事の着手・工期・竣功状況


昭和7年3月30日時点での浄水場内諸工事延期の事情

 低揚ポンプ場は,浄水場内断面図に見るように,もっとも深く掘り下げられた。地表下15尺まで掘ったとき,細砂層が露出した。そのため地質調査をすると,基礎工事に必要なる深部まで崩壊しやすい砂層であることが明確となり,湧水も多く,工事に困難な状況であることが理解された。そこで,集水埋管工事と同じシートパイル工法で,周囲の土砂の崩壊を防止しながら掘り下げる工法に変更した。なお,湧水はポンプにて排水したが,このとき付近住宅の井戸が枯れて飲料水不足が問題となった。応急措置としてポンプ排水された水を簡易ろ過装置で浄化して給水した。これは,工事完了で地下水位が回復するまで続けた。

 高揚ポンプ場の基礎工事のために掘り上げた土砂は,低揚ポンプ場基礎の埋め戻し用に使用した。高揚ポンプ場の埋め戻しには,調整池の基礎工事に掘り上げた土砂を利用するなど,土砂の置場や運搬作業の省力化に努め,経費を節減した。


浄水場の事務所全景


浄水場内の低揚ポンプ場及調整池工事


浄水場建設現場


ポンプ場の内部


吸水井(低揚)の内部

 ポンプ場上家は,大きく高揚ポンプと配電盤室,低揚ポンプ室,そして付属事務室の3室に区分されている。その内部に設置された設備は,表のようである。


ポンプ室内の主な設備

 ろ過池の築造工事は,全体として2期に分割されて施行された。第1期工事は第1号と第2号のろ過池,第2期工事は第3号ろ過池の築造であった。ろ過層は厚さ平均5尺1寸で,その下方4寸はレンガを積んで集水溝を作り,その上に2尺2寸の砂利層,最上部2尺5寸をろ過砂層とした。ろ過砂は,高萩市松原の高萩海岸の砂で,1ミリメートルから0.3ミリメートル径のものを,質が堅く,容易に分解しないものとして選んでいる。第2期工事のときには,浄水場内砂置場の完成が遅れて狭くて納入を一時中止していたため,他工事終了後に搬入を開始したことから竣功は1か月遅れた。


ろ過池の工事

 調整池の工事は,2次に分割して施行された。第1次はポンプ場基礎の掘り上げ工事と同方法で同時に施行し,第2次は単独に施行した。この工事の埋め戻しや盛土の土砂などは,請負いで購入する予定としていたが,直営工事で採取すれば経費の節約になると,近くの田畑所有者と交渉した。畑地は1立坪50銭,田地は同30銭とし,浄水場周囲土堤用に畑地586坪8を293円40銭で,調整池築造用に畑地120立坪1,田地178立坪5の計298立坪6を113円60銭で購入した。これら作業は時間がかかり,竣功が少々延びている。


調整池の鉄筋組立工事

 以上の工事以外では,分水井を兼ねる量水井工事と,ポンプ場から配水塔までの送水鉄管布設工事があった。送水鉄管の工事は,接合部だけが市の直接雇用した職工による以外は請負いによった。高区配水塔までは内径18吋鉄管が392間余で,その間に10吋泥吐と排気弁が1か所ずつ,両端に18吋の制水弁を2か所設けた。低区配水塔までの送水鉄管は内径14吋で2,927間で,その間に8吋泥吐と排気弁が2か所ずつ,14吋制水弁が3か所設けられた。

 なお,昭和6年11月25日に,水道技師長岡田卯之助は市長に,浄水場内の整備と風致のため藤棚や樹木の植え付け,花壇の設置を上申した。また,その理由の一つには,「外観的ニ清潔ト稚麗ヲ誘致シ浄水ノ観念ヲ普及スル」の目的をも記している。その提案が認められ,12月15日には浄水場築造費中の雑工事として,第1次植樹工事費492円60銭の支出が決定されている。

 「浄水場内整備概要」では,つぎのような9項目を掲げ,整備図を作成している。(最後の項目は施行と精算についてであり,省略する)

1 場内整備ノ目的ハ,上水道意識ヲ充分徹底セシムル為,衛生的且ツ美観的施設ヲナシ,以テ本水道事業ノ健全ナル発達ヲ計ラントスルモノナリ

1 浄水場ノ主景ハ,後背那珂川ノ清流ニ沿ヒテ深緑ナル保安林ヲ有シ,喞筒場及事務所ノ主体ト場内中央ヲ占ムル濾過池,調整池等ノ平面的施設トニシテ,是ニ適当ナル庭園的配景ヲ為シ,多数人士ノ散策教養ニ資セムトスルモノナリ

1 場内通路地割ハ,正門ヨリ喞筒場ニ向フ主要道路敷ノ外,場内者ノ作業道及夫レヨリ連絡スル散策観賞小道ヲ設ケタリ

1 植栽トシテハ,正門入口付近ハ「シヒ」「モチ」「ヒノキ」等ノ植込ヲ為シ,事務所周囲ハ「ヒバ」「コーヤマキ」ヲ主トシテ,ソレニ緑蔭樹系ノモノ及灌木類ヲ配シタル植込ト為シ,喞筒場前面ニハ「シイマツ」「サワラ」「イチイ」等ヲ主トシテ高層建築物ニ添ハシメ,濾過池調整池及砂洗場付近ハ「印度杉」ノ点植ト為シ,場内周囲ハ「サワラ」「シヒ」等常緑樹ヲ配シタルモノトス

1 事務所東側北広場ニハ「シュロ」ノ寄植ト為シ,「ユッカ」類ノ下草ヲ添ヘ品位アル装景ノ中心トス

1 正面突当リニハ,自然美ト人工美トノ融和ニ成ル美的情趣ト平安トヲ生ム「愛ノ池」ヲ設ク,池ハ半円形ノ瀟洒ナルモノニシテ,奥中央ニハ曲線ノ融合ヨリ湧ク泉ヲ設ケ,「ソレナ」「ツワブキ」「ノシメラン」「ユッカ」等ヲ配植ス

1 池ノ左ノ主要道ヲ隔テテ,清ラカナル浄水ヲ供給スベキ水飲場「水戸ノ泉」ヲ設ケ,之ヨリ小高キ処ニ趣味性ニ富メル藤棚ヲ造リ,広濶ナル場内施設ヲ眺望シ,休息ニ資セムトス

1 事務所裏広場ノ一部ニ花壇ヲ設ケ,明快ナル色調ヲ配置シテ,事務所建築周囲ニ対照セシムルモノトス


浄水場内整備(部分)図


愛の池