高区配水塔の築造工事は,基礎工事と塔建設工事,場内整備の3部分よりなる。
基礎工事は,昭和6年4月20日に請負業者が着手し,工期の通りに7月14日には終了した。その間,基底盤の地耐力を検査するため杭打試験で荷重試験を行い,安全を確認して基礎支柱の工事も完了した。
塔の建設については,昭和6年5月11日に,入札にもとづいて福島県石城郡平町字搔槌小路の堀江工業株式会社と工事請負契約書が交換された。竣功期限は昭和6年12月31日とされるが,正式には同7年5月に予定している市の水圧試験に合格することによるとされた。
ところが昭和6年6月24日 配水塔工営所主任の後藤技手が,高区配水塔築造工事の遅れを心配して,つぎのように臨時水道部事務に照会している。工事の竣功期限が12月31日であり,工事用の基礎工事も終了しつつあるが,契約後40日以上も経過しているのに材料の搬入もなく,着手届けや工程表の提出もない。これは怠慢と思われるので,取扱いについて指導されたいという内容である。
この指示を受けた請負者が6月26日に,「鉄材料ノ儀ハ其取合セ工作御打合セ並官民製鋼分野協定等ノ為照会ニ手間取リ注文発送遅延致シ」ようやく本月10日に決定したが,入荷が不確定であったため工程表の提出が遅れて本日になったと連絡してきた。
実際には7月10日に着手され,12月19日には「竣工延期願」が出された。それによると,夜間作業までして工事を急いだが,タンクの規模が大きくて工作に時間がかかったこと,工場内で1度仮組立をして検査し,分解して運搬し,再度組立てをするので手数がかかったことで工期限の完成ができない。昭和7年2月の末日まで,竣功日を延期してほしいというものであった。
竣工延期願
1 工事名 高区配水塔建設工事
契約締結 昭和6年5月11日
(契約第51号)
1 工期 昭和6年12月31日
右工事ノ儀ハ本年内ニ完成ヲ期シ極力竣工方取急キ最近約1ヶ月ハ夜間迄作業ヲ延長罷在候ヘ共何分稀ナル御規模ニテ微細微密ナル御設計ノ為工作ハ最丁寧トスルノ要アリ又組立後ノ完全ヲ期シ半球形水槽底及屋根材ノ如キ至難ノ工作ハ工場内ニ仮足場ヲ設ケ一々全部ノ組立取付ヲ為シタル後発送致候様ノ手数ヲ成リ候為意外ノ日子ヲ要シ遂ニ本年末迄ニ完成致兼候間来ル昭和7年2月末日迄特別ノ御詮議ヲ以テ竣工延期御許可被下度此段相願候也
昭和6年12月19日
その後の12月24日,技師長の岡田卯之助は工事出来高検査員として,8分7厘以上の出来高と証明している。昭和7年3月1日には,水槽部のペイント塗料を,アルミニュームペイントに変更する設計変更をした。アルミニュームペイントは,普通のペイントより防錆力強大で断熱効果もあり,寒暑による水槽内水温の変化も少なく,外観も優秀であるとしている。これ以前にタンクの屋根も変更しており,完成までにはいくつかの変更があった。
工事出来高検査によると,2月15日には9分5厘の状況によって工期内完了は不可能と,再度2月29日の延期願いが承認されて3月31日竣功とされた。なお,2月には水槽の水圧試験があり,水が少々漏れ出た。水を汲み上げてないことでもあり心配したが,水質試験で化学的に無害の良水と判定されている。ところが,4月8日の検査でも9分9厘の出来高とされ,水槽漏水止め水管取付作業と足場解体を理由にして4月20日に,5月15日までの延期願いを提出している。
このように本体工事の完成が延びたこともあって,敷地内の柵や門・植樹など整備は,請負業者に市の都合として7月10日まで着手の延期を依頼している。
こうして,高区配水塔の工事は本体が7年5月15日,その他の付属工事が同年8月には完了した。
低区配水塔工事は,昭和6年7月6日に直営で,敷地の整地と試掘で始まった。その後杭打ちや荷重試験が良好であったため,10月6日に高砂鉄工株式会社の請負いで工事が着手され,昭和7年7月10日に完了した。
低区配水塔が,水戸市のモダンな名所として完成したのは,技師後藤鶴松の設計と工事監督があったからである。後藤は津市の水道工事を始めとして鶴見・熱海・真鶴の工事に監督として関係し,水戸には昭和5年9月22日より勤めた。同6年10月6日の低区配水塔の起工式の日に,女子が誕生し,それを記念して塔美子と名付けるほどの工事熱心さであった。
なお,配水塔には給水区域内に給水する水量を計量記憶するため,高区には18吋用,低区には14吋用のベンチュリーメーターを購入することになっていた。設計の段階では,ケントとシーメンスのそれぞれの会社から1組づつとされていたが,昭和6年11月11日にはシーメンス社製品にと変更された。その代理店である富士電機製造株式会社と11月25日に契約し,同7年5月15日に納入する約束をした。
この口径18吋の購買仕様書は,つぎのようであるが,14吋では第1条の2,4,5,6,7と,第2条の納入先に1部相違がある。
内径18吋ヴェンチュリーメーター購買仕様書
第1条 購入スヘキヴェンチュリーメーターハ獨逸シーメンス会社製ニシテ本市高区配水塔構内ニ於テ内径18吋配水本管ニ設置スルモノニシテ左記條項ニ適合スルモノタルヘシ
1 所要数 1基 機械的装置ノモノ
2 鉄管内径 18吋
3 型式 別紙図面ノ通
4 鉄管中心ニ於ケル静止水圧 最大127.5尺 最小97.5尺
5 表示器室床面ニ於ケル静止水圧 121.5尺 最小91.5尺
6 表示水量1時間ニ付最大500立方米 最小 36立方米
7 ヴェンチュリー管ト表示器トノ距離ハ約50米トス
8 本器ハ表示器室ニ設ケ18吋ヴェンチュリー管ノ設置場所ヨリ導圧管ヲ用ヒテヴェンチュリー管ノ差動圧力ヲ受ケ之ニ依ツテ配水主管内ヲ通ル右ノ瞬間ノ水量ヲ表示スルモノトス
9 機械的流量指示記録積算器MSZ6型ハヴェンチュリー管内ノ瞬間ノ流量ヲ指示記録積算スルモノトス
10 本器ノ指針並記録ペンハ流量ノ変化ニ伴ヒ右水平ニ運動シテ瞬時流量ヲ指示スルモノトス
11 本器ノ記録紙ハ其有効幅員120粍ニシテ時計仕掛ニ依リ運進セシムルモノニシテ1時間当20粍ノ速度ヲ以テ記録紙ヲ運行スルモノトス,記録紙ハ1週間巻トシ立方米ヲ以テ図示シ毎週月曜日午前8時ヲ以テ記録ヲ始ムルモノトス
12 圧力記録計ハ上流管内ノ圧力ヲ記録スルモノニシテブリストル型トス
13 流量指示計ハMA6型ニシテヴェンチュリー管内ノ流量ヲ明瞭ニ指示スルモノトス
14 表示器ハ上等木製箱ニ格納シ前面硝子張トシ透視ニ差障ナキモノタルヘシ
15 本器ノ誤差ハ正負3パーセント以内トス
16 ヴェンチュリー管ハ供給会社ノ特許品ニシテ流量ヲ正確ニ表示スヘク製作所ニ於テ適当ニ設計製作セルモノニシテ毎平方吋ニ付200封度ノ水圧試験ニ耐ヘ何等ノ缼点ナキモノニシテフランヂ接続トス但フランヂノ寸法ハ別紙図面ノ通トス,記録用紙ハ前各単位ヲ明記シ且水戸市水道部ノ表題其他ヲ英文ヲ以テ表示スヘシ
17 付属品トシテ各記録用紙ハ4年分,インキ5瓶,ペン5本及所要水銀等必要ナル付属品ヲ供給スヘシ
18 本器ハ総テ優良ナル材料ヲ用ヒ堅牢ニ製作シ叮寧ニ仕上ヲ為スヘシ
第2条 本器購入契約後3月以内ニ設計図ヲ提出シ契約期限以内ニ本市高区配水塔詰所倉庫ニ納入スヘシ但ヴエンチユリー管ハ本市細谷杉山鉄管試験所ニ於テ管体及水圧ノ試験ニ合格シタル後納入スヘシ
第3条 本器ノ据付ニ対シテハ詳細ナル説明書ヲ提出スヘシ
第4条 本器ノ取付及据付ハ本市ニ於テ施行スルモ供給者ハ経験アル技術者ヲ派遣シ本市係員ト協調監督シ通水試験ニ立会スルモノトス
第5条 本仕様書ニ疑義アルトキハ総テ本市ノ判定ニ従フモノトス 以上