6 2坪堀って60銭

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 工事に先だって,工事用の諸規定を整備したが,労働関係の規定や契約についても明確にしている。それは主として25条よりなる「労働供給契約書」と26条よりなる「工事請負契約書」からなる。

「労働供給契約」には,つぎのような規定があった。第3条に,「供給スヘキ職工人夫ハ身体強壮ニシテ充分労役ニ堪ヘ得ル年齢20歳以上50歳以下ノ者トス」とある。また,第7条で就業時間を,3月1日より10月31日までは午前7時から午後5時まで,11月1日より2月末日までは午前7時30分から午後4時30分と決めていた。第12条では,「早出居残ノ場合ハ就業1時間ニ付日額賃金100分ノ10ノ割合ヲ以テ計算シ増加賃金ヲ仕((支))払フ」ともある。同じような計算で,第13条には「中途退場セシメ又ハ中途就業セシメタルトキハ就業1時間ニ付日額賃金ノ100分ノ10ノ割合ヲ以テ」支払うとある。ただ,第14条によると,「工事ノ都合ニ依リ職工人夫ニ事業ノ割当作業ヲサシメ全部成就シタルトキハ就業時間内ニ退場セシルモ1回分ノ賃金支払フ」とある。

 なお,第10条には,「職工人夫中不適当ト認ムル者ハ現場吏員ノ指揮ニ従ハサルモノハ退場ヲ命スルコトアルモノトス」とあり,第20条の3項に「乙(労力供給者)又ハ其ノ代理人使用人等ニ於テ係員ノ指揮命令ニ遵ハス又其ノ職務執行ヲ妨ケ若ハ妨ケシメタリト認メタルトキ」にあると,「甲(水戸市長)ハ何等ノ手続ヲ要セス且何等ノ補償ヲ為スコトナク本契約ノ全部又ハ其ノ1部ヲ解除スルコトヲ得」とある。そしてそれをより具体的に記したのが,つぎのものでもある。

 工事請負契約書の第9条に,工事現場での従事者についてつぎのような規定がある。

 工事従事者左ノ各号ノ1ニ該当スト認メタルトキハ監督員ハ乙(請負業者)ニ其ノ者ノ退場ヲ求ムルコトアルヘシ

  1 怠惰ナルトキ

  2 作業拙劣ナルトキ

  3 他人ノ作業ヲ妨害シタルトキ

  4 工事作業ヲ粗雑ニ為シタルトキ

  5 監督員ノ指揮ニ従ハス又ハ其ノ職務執行ヲ妨ケタルトキ

  6 前各号ノ外不都合ノ所為アリタルトキ


 ところが,鉄管布設現場で働く者は,大変に低賃金で重労働であった。砂利を基準通りに選ぶための作業に,篩(ふるい)にかけてより分ける必要があった。この1坪分の請負い作業賃が2円とされたが,現場監督者が熱心で2回・3回とふるい直しを要求されるために,時間がかかり,実際の入手金は30・40銭程度にしかならなかった。また,埋管のための道路の掘り下げは,1日2坪で,その賃金は70銭とされた。そのため請負契約では労働時間が規定されていても,実際は時間に無関係で朝早くから午後は手元が見えなくなるまで働いて,ようやく基準量を達成するほどだったという。このような重労働のために,職業紹介所より送られてくる労働者は,作業が半日も続かなかったといわれた。