昭和6年4月25日の「いはらき新聞」に,「水道工事の土工連 待遇改善を要求 夜間手当第3項提示 市当局でも考慮を約す」と題して,つぎのような内容が記述されている。
水道工事のうち浄水場のろ過池工事の掘り上げは,水道部の直轄経営でなされた。その労働力は,市の職業紹介所より毎日約60人の人夫が送られたが,工事着手が遅れたこともあり,工事は夜間作業もするほどになった。
23日,それらを労働条件の悪化と考えた作業員たちは,職業紹介所の鹿島所長に,市水道部に対するつぎのような3つの要求の連絡を依頼した。
1 夜間作業の特別手当支出の件
2 工事場での傷害に対する保証の件
3 日当80銭など待遇の改善をする件
以上のような人夫の紹介をした職業紹介所は,大正10年8月23日市会議決の「水戸市職業紹介所処務規定」によると,つぎのようにある。
第1条 職業紹介法ニ依ル職業紹介ニ関スル事務ヲ掌ラシムル為水戸市職業紹介所ヲ設置シ水戸市役所社会課ニ付属セシム
第2条 水戸市職業紹介所ハ之ヲ水戸市柵町ニ置ク
第3条 職業紹介所ニ左ノ職員ヲ置ク
所長 1名
書記 3名
第4条 所長ハ主事ヲ以テ之ヲ充ツ
第5条 所長ハ市長ノ命ヲ承ケ所務ヲ掌理シ所員ヲ指揮監督ス
(以下省略)
これらと,同年同月同日に「水戸市職業紹介所職業紹介規程」が議決されている。
第1条 水戸市職業紹介所ハ職業ノ紹介ヲ為ス基ノ職業ノ種類ノ職業紹介法施工規則別表ノ職業分類ニ拠ル
第2条 職業ノ紹介ヲ受ケムトスル者ハ本人出頭ノ上申込ムヘシ 但書面又ハ電話ニテ申込ヲ為スコトヲ得
第3条 求職者書面ヲ以テ申込ヲ為サムトスルトキハ左ノ各号ノ事項ヲ記載スルヲ要ス
1氏名,1生年月日,1現住所,1本籍地及戸主トノ関係,1保証人住所氏名,1保証人トノ関係,1当地在住日数,1前雇主ノ住所氏名職業,1前職務,1前勤務時間,1前給料,1教育,1技能経験,1扶養家族,1配偶,1失業日数,1失業原因,1希望条件(職務 給料 住込通勤 其他)
求人者書面ヲ以テ申込ヲ為サムトスルトキハ左ノ各号ノ事項ヲ記載スルヲ要ス
求人者(氏名 職業 住所 途筋 電話 屋号)
雇入条件〔職務 人員 期間 年令 保証 教育 経験 時間 夜業 給料 住込(日給 月給 歩増)通勤(日給 月給 食事)〕
(中略)
第7条 紹介ハ申込順序ニ依ル但特別ノ資格ヲ備ヘ若クハ扶養スヘキ家族ヲ有スル求職者ニアリテハ此限リニアラス
第8条 紹介ヲ為スニハ別ニ定メタル職業紹介書ヲ以テス
職業紹介書ハ職業紹介所ニ於テ交付ス職業紹介書ハ之ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得ス
(以下省略)
所長は,以上のような立場で,人夫が顔面に負傷した事件などもあったため,待遇に関する要求は考慮の余地があると判断して,市の関係機関に連絡した。市当局は市会水道委員会などの意見も求め,1と2の要求については完全に承認した。ただ,3番名の要求の待遇改善は,直接的には賃金の問題であったが,これは他種目の賃金などとの関係もあるからと検討事項にされた。