昭和7年2月27日の市会は,水道布設事業の完成を前提にして,給水普及のため給水工事費市負担という特典事項を議決した。
市会議案第33号
給水工事ニ関スル件
標記ノ件左記要領ヲ以テ施行スルモノトス
昭和7年2月27日提出 同日議決
記
1 特典
イ 申込期間 自昭和7年3月1日至同7年4月末日
ロ 件数限度 2,000戸
ハ 道路地下部分 最長30間以内 但シ申込1戸ヲ増ス毎ニ其ノ延長3間以内ヲ逓増ス(配水補助管)
ニ 邸宅内 道路境界線ヨリ水栓柱ニ至ル最短距離7間以内(給水補助管)
ホ 支分引用 支分岐点ヨリ7間以内
ヘ 制限 前2号延長ヲ超エタル部分並水栓柱及付属具ハ給水装置請求者ノ負担トス
2 工事費総額
1金4万3,289円以内
内訳
金2万1,012円 配水補助管費
金2万2,277円 給水補助管費
3 財源
工事費ハ水道布設費経済(配水工事費)ヨリ支出充当スルモ給水補助管費ニ限リ之ヲ「補助外支出」ノ整理ヲ為スモノトス
以上のもとになる規程が,つぎの「水戸市水道給水ニ関スル特別規程」である。この規程は,昭和11年11月30日発行の「水戸市例規」によると昭和7年2月23日に決定されて施行された。なお,昭和9年5月15日発行された『水戸市水道誌』には,昭和7年7月21日公布とあり,それが給水条例の第47条また第46条によるとされているのは,誤まりである。
第1条 水戸市給水条例第51条ニ拠リ給水工事費ノ一部負担並使用料ノ免除ニ関シテハ本規程ノ定ムル処ニ拠ル
第2条 本規程ニ於テ配水補助管ト称スルハ配水本管ヨリ分岐シ公道又ハ之ニ準スル地下部分ニ属スルモノ(分水栓ヲ含ム)ヲ謂ヒ給水補助管トハ配水補助管ノ未端ヨリ起算シ長7間迄(止水栓ヲ含ム仍支分引用ノ場合ハ其ノ分水栓ヲモ含ム)ヲ謂フ但シ水栓柱及之ニ属スル部分ハ之ヲ包含セス
第3条 配水補助管(口径3吋以上ノモノヲ除ク)及給水補助管ニ要スル費用ハ予算ノ範囲内ニ於テ本市之ヲ負担ス但シ官公署,学校,病院,銀行,会社其ノ他市長ニ於テ其ノ要ナシト認ムルモノ及第4条ノ限度ヲ超ユルモノハ此ノ限ニ在ラス
第4条 前条市費負担ハ本規程実施ノ日ヨリ昭和7年4月30日迄ニ給水申込ヲ受理シ且其ノ順位第2,000番迄トス但シ其ノ期限内ト雖2,000番ニ満チタルトキハ之ヲ打切ルコトアルヘシ前項市費負担ノ限度左ノ如シ
1 1戸1線ニ限リ配水補助管最長30間以内但シ申込1戸ヲ増ス毎ニ其ノ延長3間以内ヲ追加スルコトヲ得
2 1戸1栓ニ限リ道路ノ境界線ヨリ邸内水栓柱(其ノ位置ハ市長ニ於テ指定ス)ニ至ル給水補助管最短距離7間以内
3 他ノ給水補助管又ハ他人ノ給水管ヨリ分岐シテ給水設備ヲ為スモノハ其ノ支分岐点ヲ基本トシ前号ノ規定ヲ適用ス
第5条 配水補助管ニシテ私道地下部分ニ属スルモノアルトキハ給水装置請求者ニ於テ土地所有者ト占用ノ協議ヲ遂ケ其ノ承諾ヲ本市ニ提出スルノ外仍左ノ各号ニ付請書ヲ提出セシム
1 道路其ノ他ノ工事ノ為配水補助管ノ移転,改造若ハ撤去ヲ要スルトキハ其ノ費用ヲ負担スヘキコト給水工事其ノ他水道経営上必要アルトキ亦同断タルコト
2 配水補助管布設箇所ニハ建物其ノ他ノ工作物ヲ設ケサルコト
第6条 給水開始ノ日ヨリ昭和7年7月31日迄ハ給水料並量水器使用料ヲ免除ス
第7条 第4条ニ依リ配水補助管費又ハ給水補助管費ノ市費負担ヲ受ケタル者前条免除期間後4月以内ニ於テ水道使用ノ中止若ハ廃止ヲ為スモ其ノ間水戸市給水条例第31条ニ拠ル最低料金ヲ徴ス
前項期間ヲ経過シ仍引続キ水道ヲ使用セサルトキハ給水装置撤去又ハ没収スルコトアルヘシ
付則
本規程ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
これには,水道栓とその付属器具は自己負担であったが,給水は5月上旬より7月31日まで無料とされていた。なお,特典期間終了後の給水申込みは,1間当たり1円50銭程度の工事費が徴収されると説明されていた。
申込初日の3月1日の午前中には49件あり,午後には市の公用栓の手続きもあって78件となった。同日には,町務委員300余人を招集し,水道申込みの斡旋を依頼しポスターや宣伝ビラを配布し,27日には市役所で水道展覧会を開催して宣伝をした。このため22日には1,500件となり,4月4日には1,970件,4月30日には2,478戸となった。これに下市水道の旧区域給水戸数3,293戸を合算すると5,771戸となる。市の給水栓取付作業は,予想以上の作業量となり,工事は7月までかかった。そのため,遅れた給水戸については無料給水を8月31日までとし,9月より徴収するなど応急対策をした。
その後も給水の申し込みはあったが,10月現在で市内戸数1万の約半分にしか普及せず,井戸利用からくる衛生上の心配も続いた。10月26日の水道経理委員会で第2回目の給水工事特典を決定し,市長が同月31日に市会に提出して議決された。11月1日より1か月間の給水申込1,000件について,その工事費を基準によって補助するものであった。
市会議案第62号
給水工事ニ関スル件
給水工事施行ニ関シ来ル11月1日ヨリ「水道給水ニ関スル特別規程」ヲ準用シ左記要領ニヨリ之ヲ実施スルモノトス
昭和7年10月31日提出 同日議決 水戸市長 中崎俊秀
記
1 補助件数 1,000件但シ予算ニ残余アル場合ハ本限度ヲ超ユルコトヲ得
2 補助期間
イ 申込 昭和7年11月30日迄
ロ 工事費払込 昭和7年12月25日
ハ 制限 前2号ノ内何レノ期限ヲ超エルモ補助ヲ為ササルモノトス
3 補助範囲 新・旧区域共
イ 公道地下部分 30間迄
ロ 公道ニ準スルモノ 1戸15間迄仍2戸以上共同シテ申込ヲ為シ且同時ニ給水工事費ヲ払込タル場合30間迄
ハ 宅地内最大延長 7間迄
ニ 現ニ共用栓ヲ使用スルモ専用栓又ハ計量栓ニ変更スル場合前各号ニ準ス
4 受益者ノ義務 受益者ニシテ本給水工事竣功スルモ水道ノ使用ヲ開始セサルトキ又ハ4月以内ニ於テ使用ノ中止又ハ廃止ヲ為ス場合ハ4月間水道最低使用料ヲ徴ス
このときには,「もう2度とない」などと記された宣伝チラシなども配布されたが,翌8年3月末日でも給水戸数は6,127戸であって,前回より346戸しか増加していない。それが,同年の11月末には399栓増加して4,950栓となり,戸数では179戸増加しているが人口では1,429人減少とある。そのためか使用水量は9,813立方メートル減少との推定になっているが,その内容は一定傾向を示さない。