1 水道公債の発行

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 起債は,低利率の地方貸付金と簡易生命保険積立金を利用し,市民の負担軽減に努力している。しかし,これら政府資金の償還は,公企業経営にとって不利な均等割であり,事業収入の増減とは無関係に返還しなければならなかった。そのため国庫や県費の補助があっても,それだけでは事業の推進は不充分で,当初から特別税戸数割や水道使用料の長期に及ぶ過大な負担が予定されていた。

 鈴木文次郎市長は,早期布設着工を主としたため,低利起債の実現はできずに,昭和7年7月1日の全市給水後の8月11日に任期満了で退陣した。9代目の市長に就任した中崎俊秀は,布設工事整理段階にあって,市全体の財政的見地より事業そのものを検討することになった。また,金融界が低金利時代に入ったこともあって,財政的再検討は順調に進展した。昭和3・4年の起債は年利7分時代であり,同5年に年利6分で大変に低利率であると利用した逓信省の簡易生命保険の積立金も,昭和8年になると市場は5分時代となって,実情に合わなくなってきた。

 水戸市が,簡易生命保険積立金より融資された債務は,昭和5年度に水道布設費として29万5,000円,同6年度に教育関係で小学校建築費支弁4万8,000円・高等女学校建築費支弁に1万3,800円の計6万1,800円と,水道布設費に59万円,同7年度には水道布設費だけ21万9,400円で,利率は6分2厘から6分であった。これらを低利債に借替えることになり,各種の銀行や会社と交渉を重ねた。


昭和8年9月2日「いはらき新聞」

 水戸市の借入れの条件がきびしかったので,なかなか交渉は進まず,ようやく住友信託株式会社との間に学校債は4年間の短期として5分,水道債は19年間の長期として5分2厘の利率で合計116万6,200円の引き受けの協定が成立した。そのときの水道債についての契約書はつぎのようなものである。


  契約書

水戸市水道公債ヲ発行スルニ付其ノ引受ニ関シ,水戸市(以下単ニ市ト称ス)ト住友信託株式会社(以下単ニ会社ト称ス)トノ間ニ左ノ契約ヲ締結ス

第1条 市ハ左ノ要項ニ依リ水戸市水道公債ヲ発行シ,会社ハ其ノ総額ヲ引受クルモノトス

(イ)発行総額     額面110万4,400円

(ロ)各市債ノ金額   5,000円,1,000円,500円及100円,4種類トシ無記名利札付トス

(ハ)発行価額     額面100円ニ付100円

(ニ)利率       年5分2厘

(ホ)償還期限及其ノ方法 本公債ノ元金ハ自昭和8年度至昭和26年度19箇年度間ニ 別ニ定メタル償還年次表ニ依リ抽籤ヲ以テ毎年之ヲ償還ス 但シ市財政ノ都合ニ依リ繰上償還ヲ為シ又ハ償還年限ヲ短縮スルコトアルモノトス 償還スヘキ市債ノ種類及番号ハ其ノ都度之ヲ官報ニ公告スルモノトス

(ヘ)利子支払い方法  毎年3月31日,9月30日ノ両度ニ其ノ当日迄ノ前6箇月分ヲ利札ト引換ニ支払フモノトス

            但シ発行又ハ償還ノ場合ニ於テ6箇月未満ノ端数利子アルトキハ其ノ6箇月間ノ日割ヲ以テ計算ス

(ト)元利金支払場所  住友信託株式会社本支店

(チ)発行期日     昭和8年8月1日

第2条 会社ハ昭和8年8月1日本市債総額ヲ市ノ指定スル方法ニ依リ払込ムモノトス

第3条 市ハ予メ会社ノ要求スル種類及数量ニ従ヒ証券ヲ作製シ 市債発行期日ニ於テ払込金ト引換ニ会社ニ之ヲ交付スルモノトス

第4条 市ハ本市債引受手数料トシテ発行総額ニ対シ額面100円ニ付金1円40銭ノ割合ヲ以テ計算シタル金額ヲ会社ニ交付スルモノトス

第5条 市債証券調整費ハ市ニ於テ之ヲ負担シ市債売出ニ関スル公告料及其ノ他ノ費用ハ会社之ヲ負担スルモノトス

第6条 市ハ本市債元利金支払事務ヲ会社ニ委託スルモノトス

第7条 前条ニ依ル元利金支払事務ニ関シテハ左ノ通リ之ヲ定ム

1 市ニ於テ本市債全部償還ノ場合ハ其ノ額面金額及償還期日ヲ又一部償還ノ場合ハ右ノ外当籤証券ノ種類,番号ヲ償還日ノ相当期間前ニ会社ニ通知スルモノトス

2 市ハ元利金支払資金トシテ支払期日2日前ニ相当金額ヲ会社ニ交付スルモノトス但シ此ノ資金ニハ利息ヲ付セス前項支払資金ニ不足ヲ生シタル為会社カ一時之ヲ立替ヘタル場合ニ於テハ市ハ会社ノ請求ニ依リ直ニ之ヲ返済スヘキモノトス

前項立替金ニ対シテハ市ハ其ノ当時ニ於ケル日本銀行公定当座貸越利子歩合ヲ以テ立替ノ日ヨリ返済ノ前日迄ノ日数ニ応シ計算セル利息ヲ会社ニ支払フモノトス

3 会社ニ於テ本市債元利金ヲ支払ヒタル場合ハ当該市債,証券又ハ利札ニ支払済印ヲ押捺シタル上元利金支払報告書及支払資金受払表ト共ニ市ニ送付シ市ハ之ヲ認メタル上会社ニ対シ承認証ヲ交付スルモノトス

4 市ニ於テ盗難其ノ他ノ事由ニ因リ支払ヲ停止セムト欲スル市債証券又ハ利札アルトキハ遅滞ナク之ヲ会社ニ通知スルモノトス

 右通知到着前会社カ為シタル善意ノ支払ニ因リ生シタル損害ハ総テ市ノ負担トス

5 市ハ元利金支払手数料トシテ元金償還ノ場合ニハ償還元金額ノ1,000分ノ1,利子支払ノ場合ニハ支払利札券面金額ノ1,000分ノ2ヲ会社ニ交付スルモノトス

6 本市債ノ最終償還期日後6箇月ヲ経過シタルトキハ未償還分ノ有無ヲ問ハス会社ハ本市債ニ属スル元利金支払事務ヲ市ニ引継クモノトス

第8条 本契約ハ本市債発行ニ関スル市会ノ議決並監督官庁ノ許可ヲ得タルトキ其ノ効力ヲ生スルモノトス

右契約ノ証トシテ本証書2通ヲ作製シ市及会社ニ於テ各其ノ1通ヲ保有スルモノトス

    昭和8年6月17日              水戸市

                          水戸市長 中崎俊秀

                         住友信託株式会社東京支店

                          副長   斎藤繁太郎

 以上の準備が整ったこともあって,6月29日の市会に「低利債借替市債発行ノ件」「公債条例設定ノ件」とした議案を提出し,市当局の見解を表明した。市会は市民負担の軽減の可能性を確認すると,市当局の原案を議決し,その実現に協力することを決定している。そのときに議決されたのはつぎのようなものである。

議案第73号 低利債借替市債発行ノ件

水道布設費起債ノ内簡易保険局ヨリ借入タル6分債金110万4,400円也ヲ低利債ニ借替ノ為左記ニ依リ「水戸市水道公債」ヲ発行スルモノトス

 昭和8年6月29日提出・同日議決

          記

 1 借替金額           金110万4,400円

 2 公債発行価格         額面100円ニ付金100円トス

 3 公債利率           年5分2厘

 4 償還期限並償還方法      自昭和8年度至同26年度迄ニ於テ別紙償還年次表ノ通元利金ヲ償還ス

 5 公債発行手数料        額面100円ニ付金1円50銭也

 6 公債元利金支弁代理事務取扱者 住友信託株式会社

 7 公入債発行引受者       住友信託株式会社東京支店

 水道公債償還年次表  元金110万4,400円(利率年5分2厘)

 議案第75号 水戸市公債条例

第1条 本市左記旧債ヲ低利ニ借替ノ為第1回水戸市公債金4万8,000円並金1万3,800円

   水戸市水道公債金110万4,400円ヲ募集スルモノトス


[表]

   前項ノ公債ハ債権発行ノ方法ニ依リ住友信託株式会社東京支店ヲシテ之ヲ引受ケシム

第2条 本公債ニ対シテ発行スル証書ハ無記名利札付ニシテ1万円,5,000円,1,000円,500円,100円ノ5種トシ其ノ様式ハ市長之ヲ定ム

第3条 本公債利子ハ第1回水戸市公債年5分水戸市水道公債年5分2厘ノ割合トシテ毎年9月 3月ニ於テ前6月分ヲ水戸市役所又ハ住友信託株式会社本支店ニ於テ之ヲ支払フモノトス 但シ繰上償還ノ場合ニ在リテハ元金ト同時ニ支払フモノトス

   前項利子ニシテ証書発行又ハ償還ノ場合 6月ニ満タサルトキハ日割ヲ以テ利子ヲ支払フモノトス

第4条 本公債発行価格ハ額面100円ニ付金100円トス

第5条 第1回水戸市公債ハ昭和9年度ヨリ同12年度ニ至ル4年間 水戸市水道公債ハ昭和8年度ヨリ同26年度ニ至ル19年間ニ於テ 別紙償還年次表ニ依リ之ヲ償還スルモノトス 但シ財政上ノ都合ニ依リ定額以上ノ償還ヲ為シ又ハ償還年限ヲ短縮シ若ハ低利債ニ借替ヲ為スコトアルヘシ 此ノ場合ニ於テ公債所有者ニ損害ヲ及ホスコトアルモ市ハ之カ賠償ノ責ニ任セス

第6条 本公債元金ハ毎年9月 3月ニ抽籤ノ方法ニ依リ之ヲ償還ス 但シ買入銷却ヲ為ス場合ハ抽籤ニ依ラサルコトヲ得

   前項ニ依リ買入銷却ヲ為ス場合ハ随意契約ノ方法ニ依ルコトヲ得

第7条 第1回水戸市公債元利金ハ授業料収入及市費一般歳入ヲ以テ之ヲ支弁シ 水戸市水道公債元利金ハ水道使用料及水道費一般歳入ヲ以テ之ヲ支弁ス

第8条 本公債ノ元利金ハ公債証書又ハ利札引換ニテ持参人ニ之ヲ支払フモノトス

第9条 本公債証書又ハ利札水火災等ニ由リ消滅シタルトキハ 直ニ之ヲ市長ニ届出テ代証書若ハ代利札ノ交付ヲ請求スルコトヲ得 此ノ場合市長ニ於テ其ノ消滅ノ証跡明確ナリト認ムルトキハ代証書若ハ代利札ヲ交付スルモノトス

第10条 本公債証書又ハ利札ヲ盗難若ハ紛失シタルトキハ 其ノ旨直ニ市長ニ届出ツヘシ之ヲ発見シタルトキ亦同シ

   前項紛失ノ届出アリタルトキハ之ヲ公告シ満1年ヲ経テ代証書又ハ代利札ヲ交付セルモノトス 但シ故障ノ申立アリタルトキハ裁判所ノ確定判決アルニ非サレハ之ヲ交付セス代証書又ハ利札交付ニ関スル一切ノ費用ハ紛失者ノ負担トス

第11条 本公債証書又ハ利札ヲ汚染毀損シタルトキハ 代証書又ハ代利札ノ交付ヲ請求スルコトヲ得

   前項ノ場合ニ於テ証書又ハ利札ノ真偽判明シ難キモノハ紛失証書ノ例ニ準シ汚染毀損ノ証跡明確ナルモノハ代証書又ハ代利札ヲ交付ス 但シ其ノ実費ハ之ヲ徴ス

第12条 前3条ノ場合ニ於テハ代証書又ハ代利札ノ交付ヲ了スル迄之カ元利金ノ支払ヲ停止ス

第13条 代証書又ハ代利札ヲ交付シタルトキハ前ニ交付シタル証書又ハ利札ハ無効トス

第14条 本公債ノ元金ヲ償還スル場合ニ於テ其ノ債権ニ付属スル利札ニシテ未タ支払ヲ開始セサル利札中欠除アルトキハ 之ニ相当セル金額ヲ償還元金ノ内ヨリ控除スルモノトス

   前項利札所持人ハ其ノ利札ヲ提出シテ控除金額ノ償還ヲ請求スルコトヲ得

第15条 本条例施行ニ関シ必要ナル細則ハ市長之ヲ定ム

      付則

第16条 本条例ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス

 市会が議決すると同時に,即日,事務当局は内務大臣と大蔵大臣に対して旧債借替債の許可申請を,つぎのように提出した。

 給水3176号

  水道布設費起債償還方法変更ニ付許可申請

本市水道布設費ニ充当スル為昭和5年7月29日付内務省茨地第12号ヲ以テ金190万円也起債ノ件御許可ヲ得右工事ヲ施行シ去3月31日全部終了致候処 其ノ起債額156万2,800円ノ内簡易保険局ヨリ借入金6分債金110万4,400円也ヲ低利債(年利5分2厘市債発行)ニ借替ヲ為スト共ニ其ノ償還方法ヲ別紙償還年次表ノ通変更シ以テ特別税戸数割其ノ他負担ノ軽減ヲ致度候条特別ノ御詮議ヲ以テ御許可相仰度関係書類相添ヘ此段及申請候也

 追テ本低利債借替市債ハ年5分2厘トシ住友信託株式会社東京支店ヲシテ引受セシムル見込ニ有之候条 併セテ御承認煩度申添候

  昭和8年6月29日                    水戸市長  中崎俊秀

  内務大臣 男爵 山本達雄殿

  大蔵大臣    高橋是清殿

 添付書類

1 水道布設費起債償還年次表変更書

1 起債並起債方法利息ノ定率及償還方法

1 低利債借替市債発行ノ件

1 昭和8年度水戸市水道費歳入歳出追加更正予算書

1 昭和8年度水戸市水道費歳入歳出予算書

1 水戸市水道費財政計画書

1 借替理由書

1 借替ニ関スル引受者ノ文書

1 水戸市公債条例

 この6月29日には,市債を利率6分より5分2厘に借替えることによって,水道布設での起債額の利子支払いが1日24円も節約できると内務省地方局長に緊急決定を願い出ている。翌6月30日には,逓信省簡易生命保険局長に水道布設の借入れ110万4,400円(3口分)を含んだ総額116万6,200円の期限前償還を申請すると,7月4日付で許可の回答があった。ただ,貸借契約条項により未償還元金の100分の1に相当する1万1,662円の損害金を支払うよう指示された。

 高利債を低利債に借替える準備は全てできたが,内務省が提出した財政計画について慎重な審査を加え,市の水道課長などの出頭を求めて再三再四の説明を要請して修正をさせるため,確定はできなかった。それでも書類は7月19日には内務省より大蔵省に転送され,8月1日付で内務省茨地第54号で両大臣の許可が出た。その正式通知は,茨城県内務部長より8月10日に,地方理財両局長より新起債とし,債券発行は現金と引換に交付するようにとの注意を付けて伝えられた。

 市当局は,7月15日に予定していた発行を延ばし,許可日の8月1日付で水戸市公債条例と同施行手続を公布し,水道公債110万4,400円と第1回水戸市公債6万1,800円を発行して逓信省簡易生命保険局に償還した。


昭和8年8月2日「いはらき新聞」

 なお,「水戸市公債条例施行手続」は,庁中一般(役所内)に庁達第35号として,つぎのような内容で施行された。

  庁達第35号        庁中一般

  水戸市公債条例施行手続別紙ノ通定メ昭和8年8月1日ヨリ之ヲ施行ス

  昭和8年8月1日                     水戸市長  中崎俊秀

       水戸市公債条例施行手続

  第1条 水戸市公債ノ取扱ニ関シテハ総テ本手続ニ拠ル

  第2条 水戸市水道公債金110万4,400円並第1回水戸市公債金6万1,800円ノ種類並員数左ノ如シ


水戸市水道公債


第1回水戸市公債

  第3条 収入役ハ公債台帳(第1号様式)ヲ備置キ公債ノ発行及銷却ヲ登記スヘシ 公債台帳ハ之カ保全ノ為必要アリト認ムル場合ノ外之ヲ庁外ニ搬出スルコトヲ得ス

  第4条 本公債ノ元利金ハ元利金支払事務取扱者住友信託株式会社(以下単ニ会社ト称ス)ヲシテ支払ハシム

     受託者タル会社ニ対シ元金償還ノ場合ニハ償還元金額ノ1,000分ノ1利子支払ノ場合ニハ支払利札券面金額ノ1,000分ノ2ニ相当スル元利金支払手数料ヲ交付ス

  第5条 元金ヲ抽籤ノ方法ニ依リ償還スル場合ハ遅クモ償還期日前15日迄ニ収入役立会ノ上庶務課長ニ於テ抽籤ヲ執行スヘシ其ノ当籤決定シタルトキハ直ニ抽籤調書(第2号様式)ヲ作成シ市長ニ報告ノ上確定スヘシ

     当籤確定シタルトキハ前項抽籤調書謄本ヲ会社ニ交付スルト共ニ公告ノ手続ヲ為スヘシ

  第6条 前条公告ハ本市公告式条例ニ依ルノ外官報ニ之ヲ広告ス但シ本市ノ都合ニ依リ官報ノ外東京市及大阪市ニ於テ発行スル新聞紙ニ其ノ概要ヲ広告スルコトアルヘシ

  第7条 前条抽籤ノ結果ヲ公告シタルトキハ主管課長(第1回水戸市公債ニ在リテハ庶務課長,水戸市水道公債ニ在リテハ水道課長ヲ謂フ)ニ於テ当該公債台帳ヘ償還期日ヲ記載シ且「当籤」ノ印章ヲ押捺スルコトヲ要ス

  第8条 経済界ノ情勢カ公債ノ買入銷却ニ有利ナリト認ムル場合又ハ本市ノ都合ニ依リ(水戸市水道公債ニ在リテハ水道常設委員会ノ承認ヲ経)買入銷却ヲ為シタルトキハ其ノ種類,額面金額ノ種類,員数,番号並買入銷却総額ヲ公告スヘシ

     前項買入銷却方法ニ付会社カ全然関興セサル場合ハ其ノ公告ノ要領ヲ速ニ通知スルコトヲ要ス

  第9条 本市ノ都合ニ依リ公債元金ノ全部ヲ償還ヲ為サムトスル場合ハ遅クモ償還期日前10日迄ニ其ノ種類 額面金額ノ種類 番号及償還期日ヲ会社ニ通知スルト共ニ公告ノ手続ヲ為スヘシ

     前項公告ハ第6条ノ例ニ拠ル

  第10条 主管課長ハ元利金償還期日前5日迄ニ元利金支払調書(第3号様式)3通ヲ作製市長ニ報告スヘシ

     前項調書ノ甲片ハ会社ニ対スル資金前渡ノ支出命令書ニ充当シ乙片ハ収入役ニ於テ現金送付ノ際照査憑トシテ会社ニ送付シ丙片ハ調書作製者ニ於テ控分トシテ保全スルモノトス

     前項現金ハ元利金償還期日前2日迄ニ会社ニ於テ領収シ得ル様手配スルコトヲ要ス

  第11条 前条前渡資金ニシテ不足ヲ生シタル為会社ニ於テ一時立替支払ヲ為シタル場合ハ会社ノ請求ニ依リ直ニ立替払トシテ正当支出ヲ為スヘシ此ノ場合会社ノ立替金ニ対シテハ契約ニ依ル利息ヲ支払フモノトス

  第12条 会社ニ於テ公債元利金ヲ支払ヒタル場合ハ当該市債証券又ハ利札ニ「支払済」印ヲ押捺シタル上元利金支払報告書(第4号様式)及前渡資金受払表(第5号様式)ト共ニ遅クモ翌月末日迄ニ市長ニ提出スルコトヲ要ス

  第13条 会社ヨリ前条ニ依ル証憑書類ノ提出アルトキハ主管課長ハ公債台帳ニ照査シ之ニ支払ヲ了シタル旨記入整理スルコトヲ要ス

     公債台帳ト照査シ正当ナリト認メタル場合ハ主管課長ニ於テ此ノ旨市長ニ報告シ遅滞ナク承認証ヲ会社ニ交付スルノ手続ヲ為スヘシ

  第14条 水戸市公債条例(以下単ニ条例ト称ス)第9条又ハ第10条ニ依リ代証書若ハ代利札ノ交付ヲ請求セムトスルトキハ其ノ請求書ニ左ノ各号書類ヲ添付スルコトヲ要ス

     1 証書若ハ利札ノ喪失ヲ証スルニ足ル官公署証明書

     2 市民ニ於テ適当ナリト認ムル保証人連署ニ係ル請書(第6号様式)

     3 請求者並連帯保証人印鑑証明書但シ本証明書ハ其ノ証明ヲ受ケタル日ヨリ起算シ2月以内ノモノニ限ル

     前項連帯保証人ハ2年以上同一市町村ニ現住シ且直接国税年額50円以上ヲ納ムル者タルコトヲ要ス

  第15条 条例第11条第1項ニ該当シ代証書又ハ代利札ノ交付ヲ受ケムトスル場合ハ第7号様式請求書ニ印鑑証明書ノ添付ヲ要ス

  第16条 前2条ニ依リ代証書若ハ利札ノ交付セムトスル場合ハ予メ之ヲ会社ニ通報シ其ノ意見ヲ徴スルコトヲ要ス

  第17条 代証書若ハ代利札ノ交付実費ハ1通ニ付金1円50銭トス但シ本金額ニハ条例第10条第3項ニ依ル費用ヲ包含セス

  第18条 左ノ各号ノ1ニ該当スルトキハ公債ノ種類 額面金額の種類 番号 員数並届出人氏名ヲ公告スルト共ニ其ノ要領ヲ会社ニ通知スルコトヲ要ス

     1 公債ニシテ盗難其ノ他ノ事由ニ因リ元利金ノ支払ヲ一時停止セムトスルトキ

     1 代証書若ハ代利札ヲ交付シタルトキ

  第19条 主管課長ハ前条ニ依ル公告要領ヲ遅滞ナク公債台帳ヘ登記スルコトヲ要ス

          付則

  第20条 本規定ハ昭和8年8月1日ヨリ之ヲ施行ス  (編者注…様式は省略する)

 以上のような「財政処理によって,図のように市債の償還年次額は大きく変化した。そのもっとも特徴的なことは,政府関係資金の導入による均等割償還体系から,収入実績に対応するような償還が可能であった民間資金の利用を主にするようになったことである。また,そのため,当時水道課長であった高橋六郎が「上水道の経営と特別税に就いて」(水道第91号)において,表を示して市民の負担が軽減されたことを説明できるようになった。たしかに,実施更正財政計画に比較しても,特別税戸数割は8年度に5,000円,9年度に1万円も減額でき,10年度以降は全廃できる計画になっている。


市債償還年次額の変化


起債別償還額


公債発行後に於ける税負担(更生計画と比較)

 ところが,昭和9年になると地方債の利率はまたも低下し,市場は4分の時代に入った。そこで水戸市も昭和9年4月5日に第2回水戸市公債条例,第2回水戸市水道公債条例を市会で議決し,5月1日に告示して,低利に再度借替えた。引受先は山一証券株式会社で,公債は4年間で4分,水道公債は18年間で4分5厘であった。水道公債の金額は,第1回の公債償還の昭和8年後期分が元金6,400円と利子2万8,714円40銭の合計3万5,114円40銭が支払い完了していたので,その未償還分の109万8,000円とされた。

 このため,特別税戸数割は8年度は2万8,944円49銭,9年度は2万6,985円28銭,10年度は2万2,394円12銭であったものが,11年度は全廃された。


第2回水戸市水道公債償還年次表

 11年には,市場の金利が大きく低下したため,水戸市は水道公債の借替えを再度計画し,東京金融界に相談した。最初,再々の借替えに反対していた山一証券株式会社も発行引受け時の約束により協力することになり,他4証券株式会社を加えて,その代表として第3回水道公債を引受けることになった。

 その金額は,第2回水道公債に10年後期の未償還額である108万6,000円とし,昭和11年6月16日の市会で第3回水道公債条例を議決した。

     水戸市条例第75号

     水戸市第3回水道公債条例

第1条 水戸市第2回水道公債ヲ低利ニ借替ノ為水戸市第3回水道公債額面108万6,000円ヲ発行スルモノトス

   前項公債金額ヲ日興証券株式会社 小池証券株式会社 野村證券株式会社 藤本ビルブローカー証券株式会社及山一証券株式会社ヲシテ引受シム 但シ山一証券株式会社ニ於テ代表ス

第2条 本公債ハ無記名利札付ニシテ額面金額ハ100円 500円 1,000円及5,000円ノ4種トシ其ノ証書様式ハ市長ニ於テ之ヲ定ム

第3条 本公債ノ発行価格ハ額面100円ニ付金100円トス 但シ水戸市第2回水道公債ヲ以テ代用払込ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於ケル価格ニ付亦同シ

第4条 本公債ノ元金ハ別紙償還年次表ノ通昭和26年度迄ニ額面金額ヲ以テ之ヲ償還スルモノトス 但シ財政上ノ都合ニ依リ定額以上ノ償還ヲ為シ又ハ償還年限ヲ短縮シ若ハ低利債ニ借替ヲ為スコトアルヘシ

第5条 本公債元金ハ毎月9月・3月ニ於テ抽籤ノ方法ニ依リ之ヲ償還ス 但シ買入銷却ヲ為ス場合ハ此ノ限リ在ラス

   前項ニ依リ買入銷却ヲ為ス場合ハ随意契約ノ方法ニ依ルコトヲ得

第6条 本公債利率ハ年4分1厘トス

第7条 本公債ノ利子支払期ハ毎年9月・3月ノ2回トシ 其ノ当月迄ノ6月分ヲ支払フモノトス 但シ公債発行又ハ償還ノ場合ニ於ケル端数利子ハ日割計算ノ方法ニ依ル

第8条 本公債元利金ハ日興証券株式会社 小池証券株式会社 野村証券株式会社,藤本ビルブローカー証券株式会社 山一証券株式会社本支店及水戸市金庫ニ於テ支払フモノトス

第9条 本公債ノ元利金ハ水道使用料及水道費一般歳入ヲ以テ之ヲ支払フ

第10条 本公債ノ元利金ハ公債証書又ハ利札引換ヲ以テ持参人ニ之ヲ支払ウモノトス

第11条 本公債証書又ハ利札水火災等ニ由リ消滅シタルトキハ直ニ之ヲ市長ニ届出テ代証書若ハ代利札ノ交付を請求スルコトヲ得 此ノ場合市長ニ於テ其ノ消滅ノ証跡明確ナリト認ムルトキハ代証書若ハ代利札ヲ交付スルモノトス

第12条 本公債証書又ハ利札ヲ盗難若ハ紛失シタルトキハ其ノ旨直ニ市長ニ届出ルヘシ

   之ヲ発見シタルトキ亦同シ前項紛失ノ届出アリタルトキハ 之ヲ公告シ満1年ヲ経テ代証書又ハ代利札ヲ交付スルモノトス 但シ故障ノ申立アリタルトキハ裁判所,確定判決アルニ非サレハ之ヲ交付セス

第13条 本公債証書又ハ利札ヲ汚染・毀損シタルトキハ代証書又ハ代利札ノ交付ヲ請求スルコトヲ得

第14条 前3条ノ場合ニ於テハ代証書又ハ代利札ノ交付ヲ了スル迄之ヲ元利金ノ支払ヲ停止ス

第15条 代証書又ハ代利札交付ニ関スル一切ノ費用ハ喪失者ノ負担トス

第16条 代証書又ハ代利札ヲ交付シタルトキハ前ニ交付シタル証書又ハ利札ハ無効トス

第17条 本公債ノ元金ヲ償還スル場合ニ於テ其ノ債券ニ付属スル利札ニシテ未タ支払ヲ開始セサル利札中ニ欠除アルトキハ之ニ相当スル金額ヲ償還元金ノ内ヨリ控除スルモノトス

   前項利札所持人ハ其ノ利札ヲ提出シテ控除金額ノ償還ヲ請求スルコトヲ得

   付則

第18条 本公債発行期日ハ市長ニ於テ別ニ之ヲ定ム

第19条 本条例施行ニ関シ必要ナル細則ハ市長之ヲ定ム

第20条 本条例ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス


第3回水戸市水道公債償還年次表

 18日には内務省と大蔵省の承認を受け,20日には第2回水戸市水道公債の金額繰上償還を利子について明記して告示した。

  告示第69号

  第2回水戸市水道公債ハ低利債ト借替ノ為 昭和11年7月10日金額繰上償還ス其ノ端数利子左ノ如シ

  昭和11年6月20日 水戸市長中崎俊秀

     記

  500円券 金6円22銭

 1,000円券 金12円45銭

 5,000円券 金62円26銭


第2回公債残存枚数(昭和11年6月20日現在)

 7月10日には条例にもとづいて,水道公債要領が発表された。公債証券は無記名利札付で,4種類の額面がある。利子は1年100分の4.1で,毎年3月31日と9月30日に6か月分を支払う。元金は,11年度より26年度までの16年間に,抽籤によって証券の種類と番号を指定して償還するとあった。これによって発行された公債枚数は,つぎのように389枚であり,抽籤によって償還が決定したものは官報に公告された。


第3回水道公債債券の枚数


水戸市第3回水道公債の償還公示


官報(昭和12年9月6日)掲載の広告


時代性を反映した官報広告料の請求書

 その後の公債費償還の状況は,つぎの表のようになる。


決算書に見る公債費償還額