昭和6年3月31日の国庫補助決定の付帯条件に,「工事落成シタルトキハ本(内務)大臣ニ届出テ完了認定ヲ申請スヘシ」とあることから,水戸市では昭和9年6月30日付給水第582号で,つぎのような水道布設工事落成届を提出した。
本市水道布設ニ関シ昭和5年7月29日付内務省茨衛第1号並昭和8年11月30日付内務省茨衛第47号ヲ以テ御認可ヲ得 右工事施行中ノ処本年5月31日落成致候条此段御届候也
昭和5年7月29日付内務省茨衛第1号とは,全市水道条件付施行認可のことであり,同8年11月30日同第47号とは常磐地区などに対する拡張工事認可のことである。このように,全ての水道布設工事が,昭和9年5月31日に完了したとあった。昭和5年11月7日の起工式より3年7か月,昭和7年7月15日の竣功式より約1年10か月で,技術的経理的な国の検査に耐えられる整理ができたのである。
それは,臨時水道部の組織で理解できるように,事務系と技術系の責任分担が明確で,1事業ごとに事務処理と物品管理が完全にできたことによる。各工営所主任が工事を推進し,出納吏が現場まで出張して物品材料を管理し,その竣功明細書を完全に作成してきた。これらの積み上げによる資料の整理で,落成届が早く提出できた。
参考
竣功報告書調整心得
総括
1 「予算高」ハ原予算額「増減」ハ追加更正ニ依ル増減ヲ「現計」ハ原予算額又ハ追加又ハ更正ニ依ル増減額ヲ差引タル予算額ヲ記載シ 尚追加若ハ更正ノ場合ハ其ノ理由ヲ「備考」ニ説明シ又費目ハ予算書ノ区分ニ依ルヘシ
2 「摘要」ニハ昭和5年7月29日付ヲ以テ主務省認可ニ係ル茨城県水戸市水道布設工事費継続費予算ノ費目ヲ款・項・目・節ノ順序ニ記載シ 最後ニ総計ヲ付スルモノトス
3 竣功高ハ種目別ニ列記シ 「前年度ハ累加額ヲ又本年度」ハ起工案ニ依ルモノハ工作物ノ全部又ハ一部ヲ構成シタル額及修繕其ノ他補修等ヲ為シタル額ヲ記載シ決算額ト一致スヘシ未払其ノ他ノ理由ニ依リ決算書ノ金額ト一致セサルトキハ 其ノ金額並理由ヲ備考ニ付記スヘシ
4 現在物品代価ハ起工案ニ依ル購買品生産品(砂利砂ヲ生産スルカ如キ或ハ製作生産ノ如キモノ)ノ使用残材料ノ代価其ノ他起工案ニ依ラサル直接費目ヨリ支弁セル物品代ニシテ現ニ残存セルモノ等一切ヲ記載スヘシ
5 「残額」ハ 予算現計ヨリ竣功高ト現在物品代価トヲ控除シタル額ニシテ将来使用シ得ル予算残額トス
6 「備考」ニハ現在物品代価ノ内,翌年度ニ繰越使用シ得ヘキ生産品代及残材料代又,他所属ヘ組替ノ場合ハ其ノ所属名 其ノ年度以前購入ニ係ルモノハ其ノ旨 亡失毀損不用等ノ為,払出シタル物品価格其ノ他厘位未満切捨等ノ為,決算額ニ対シ差違ヲ生スルモノハ其ノ金額・事由ヲ記載シ総工費ニ対スル支出歩合ヲ記載スヘシ
竣功内訳
1 設計高ハ予算書ニ掲ケタル実施設計中 当該年度迄ニ着手セル「節」ノ金額ヲ記載スルモノトス
2 「摘要」ハ種目・節・工種・設計ノ順序ニ記載シ 尚工種ノ形質寸法等ヲ掲記スヘシ
3 「竣功高」ハ予算書ニ掲ケタル称呼ト同様ノ工種ニ限リ記載シ 然ラサル工種ハ朱書シ数量其ノ他ハ黒書スヘシ
4 「備考」ニハ 各節ノ設計概要及残材料代価ヲ掲記スヘシ
起案設計竣功内訳
1 「設計高」ハ起工案工種ノ数量金額ヲ 又設計変更シタル場合ハ変更増減現計ヲ記載シ尚変更理由ヲ「備考」ニ説明シ 工種ハ設計書ノ区分ニ依ルヘシ
2 「摘要」ハ節ニ属スル起工案工事名順序ニ記載シ各計ヲ付シ且工種ノ形質寸法用途ノ概要ヲ掲記スヘシ
3 竣功高「前年度」ニハ起工案ノ設計ニ依ルト否トヲ問ハス其ノ竣功高ノ全部ヲ「本年度」ニハ前年度ト同一方法ニ依リ本年度竣功高ノ全部ヲ記載スヘシ
4 「備考」ニハ起案設計ノ概要,請負,直営ノ区別又ハ設計変更ノ事由・着手・竣功年月日及生産品代価残材料代価トヲ記載スヘシ
5 前年度購入ニ係ル繰越材料ハ数量・金額共黒書 生産品数量ハ黒書 金額ハ朱書 掘上品ハ数量・金額共朱書トシテ本年度竣功高ニ掲記シ尚其ノ区分ヲ備考ニ記入スヘシ
生産工事ハ全部黒書トシ普通工事ト同様掲記シ他(起案別)ニ転用シタル場合ノ数量ハ黒書シ金額ハ朱書スヘシ
6 部分請負ニ係ルモノハ其ノ請負金額ヲ掲ケ 交付材料アルトキハ其ノ金額ヲ掲記スヘシ
7 無代価品ノ見積価格ハ之ヲ朱書シ 亡失・毀損及不用品ハ竣功内訳中 各工種ノ末ニ記入シ其ノ事由ヲ備考ニ記入スヘシ
8 報告書調整ヲ為シタルトキハ其ノ内容ヲ関係書類ニ照合シ換算済認印ノ上提出スヘシ
9 傭員費ハ各費目ニ振向ケルコト
この時までに整理できた水道布設費の歳入歳出の決算は,つぎのようである。
歳入では,5年度・6年度・7年度の3か年間に,補助金が1万8,400円,一般市費よりの繰入金が2万4,299円,預金利子や不用品売却代・過年度収入・入札違背没収金など雑収入が3万1,530円3銭,特別税戸数割が10万5,306円54銭,水道費公債が156万2,800円で,合計174万2,335円57銭となる。中心は市債で,これが89.7パーセントを占め,のちの償還で市民が苦労するものになる。2位は6.04パーセントとなり比重としては大きくないが,特別税戸数割という市民の直接負担するもので,問題のあったものである。
歳出の総額は,161万5,862円5銭で歳入の92.74パーセントにあたる。支出は,昭和5年度に7.76パーセント,6年度に63.35パーセント,7年度に28.89パーセントで,経費的面からは6年度が事業の中心であった。布設費の項目別では,用地費が2.6パーセント,工事費が78.7パーセント,建設費が1.8パーセント,機械器具費が2.2パーセント,測量及び製図費0.2パーセント,検査費が1.2パーセント,電話費が0.3パーセント,事務費が13.0パーセントとなっている。
工事費だけでみると,118万543円61銭の47.5パーセントは配水工事費で,つづいて浄水場築造費が12パーセント,ポンプ場費が10パーセント,配水塔工事費が10パーセント,送水管工事費が9.5パーセント,水源工事費が8パーセント,調整池築造費が3パーセントとなっている。
つづいて8月31日には,内務大臣に給水第758号として水道工事完了認定申請を,国庫補助水道布設費精算一覧表,同内訳書,残余材料調,竣功明細図面を添付して提出した。精算には5年度から7年度までのものと,8年度のものと2通りある。8年度分は,全市水道精算残額をもとにした常磐村合併にともなう水道布設拡張費の精算額である。
これに対して,9月14日付で内務大臣官房会計課長より,10月8(月)・9(火)・10(水)・11(木)の4日間に「上水道布設費国庫補助工事会計実地検査」を通告してきた。検査は清水至副検査官と入戸野書記・窪田書記の3人とあった。そのときに提出を要求された書類は,事業実施状況説明書(水道施設全地域図・施工過程表示図面等添付),収支予算及決算対照表,5,000円以上ノ工事調,事業関係各建造物調(位置図及平面図添付),用地買収及物件移転其他補償費調,主要器具機械及工事材料購入調,主要工事材料受払数量調,1,000円以上ノ運送契約調,年額料金500円以上ノ物件貸借調,100円以上ノ物件売払調,不用ニ帰シタル器具機械及余材料処分調,補助基本外トシテ整理セル各費目別金額調,水道工事精算書であった。
検査の結果は,つぎのように9項目によって指摘され,1から7までは特別の事由がない場合は国庫補助基本額より完全に対象外として控除する。8と9の項目については,請負工事の決定額の説明を要求している。
1 昭和5年12月18日付ヲ以テ栗本鉄工所ト購買契約シタル鋳鉄直管各種4,739屯387ノ単価ハ1屯ニ付80円ナルモ 別途同人ヨリ一般市費ニ寄付名義ヲ以テ前記鉄管1屯ニ付2円ノ割合ニテ9,478円余ヲ収入シタルモノアリ 右ハ事実上鉄管代金ノ値引ヲ為シタルト同一ノ結果ヲ生スルモノト認メラルルニ依リ 之カ寄付相当額ハ国庫補助基本額ヨリ控除スヘキモノト認ム
2 本件水道布設費支弁ノ建物 器具機械及材料中左記物件ハ工事中途又ハ竣功後不用ニ帰シ売払ヲ為シ之カ代金計2,880円ヲ水道布設費特別会計歳入ニ収入セルモノナリ 仍テ右ニ相当スル金額ハ本件水道布設費トシテ実際ノ負担トナラサリシモノナルヲ以テ 水道布設費支出精算額中国庫補助基本額ヨリ控除スヘキモノト認ム
3 建築費支弁ノ諸費目中左記工事ヲ施行セルモノアリ
右ノ内事務所建築関係経費ニ付テハ其ノ構造永久的ニシテ 水道布設工事施行ニ要スル仮設物ト看做シ難ク 公舎建築関係経費ニ付テハ水道職員ノ住居ニ専用スルモノ又是等建築物ニ付帯スル移転 修繕及模様替等工事費モ其ノ主体経費ト同一ニ取扱フヲ必要トスルモノナルヲ以テ孰レモ補助基本額中ヨリ控除スルヲ相当ト認ム
4 用地費中前項公舎建設ニ関聯シ購入ニ係ル敷地(渡里村下久弥所在畑352坪)買収費645円32銭は前項同断
5 事務所費雑給賞与中左記ノ如ク市理事者ニ対シ支出セル賞与又ハ竣功賞与ハ 水道布設工事ニ関シ市理事者トシテ当然之ニ関与スヘキ職務ニ在ルモノナルヲ以テ 従ヒ本費ヲ以テ支出シタルトスルモ補助基本額中ニ計上スルハ妥当ナラスト認ム(左記ハ別表)
6 器具機械費中曩ニ購入ニ係ルシボレー幌型乗用車ト交換ニダツチブラザース箱型乗用車1台ヲ購入シ 交換差金4,650円ヲ支出セルモノアリ 右交換ヲ為セルハ7年7月ニシテ本件水道布設工事ノ大半ヲ完了セルノ後ニアリ 従ヒ新車購入ノ要アリトスルモ之カ購入ノ目的ハ主トシテ将来ノ用途ニ充テントスルモノナルヲ以テ右交換差金相当額ハ本件国庫補助基本額ヨリ控除スヘキモノト認ム
7 事務所費需要費雑費中(1)昭和5年度支出ニ係ル起工式関係ノ与興手当及酒肴其他費計466円8銭 (2)昭和7年度支出ニ係ル水道新旧委員40余名ニ対スル竣功記念品購入代金5,778円50銭合計6,244円58銭ハ本件国庫補助基本中ヨリ控除スヘキモノト認ム
8 導水鉄管布設工事ハ5年11月株式会社大林組ノ請負ニ付シ施工シタル集水埋管其他水源諸工事ト関聯施行ノ要アリトシ 6年2月同会社ニ特命契約シタルモノナルニ依リ之カ価格ハ集水埋管其他水源諸工事ノ価格ヲ比準トシテ決定スルヲ相当ト認メラルルニ右ノ内鉄矢板ニ関シ
(1)集水埋管其他水源諸工事(1,488枚)ニ於テハ損料1日1枚ニ付5銭ナリシモノ導水鉄管布設工事(500枚)ニ於テハ之ヲ7銭ト為シ2銭高価ニ協定シタル事由
(2)導水鉄管布設工事ニ使用シタル鉄矢板ハ集水埋管其他水源諸工事ニ使用シタルモノヲ転用シタルモノニシテ該工事ニ於テ既ニ1枚ニ付1円674ノ運搬費ヲ積算シアルニ 更ニ運搬費1枚ニ付2円ヲ必要ト為シタル事由
(3)鉄矢板打込及抜取工事費ハ1間分ニ付集水埋管其他水源諸工事ニ於テハ那珂川中洲ニ於ケル水中作業ナルニ歩掛鳶6人1単価2円20 人夫7人32単価1円50トシ24円40ナルニ導水鉄管布設工事ハ陸上ニシテ前者ニ比シ作業容易ナリト認メラルルニ鳶8人○単価2円人夫8人○単価1円20トシ25円60ト為シタルカ右ハ地質ノ相違ニ依ルモノナリトセハ両者ノ地質図添付之ヲ相当ト認メタル事由孰シモ説明アリタシ
9 ポンプ場築造工事ニ於テ一部株式会社大林組ノ請負ニ付シタル鉄矢板工事(161枚)ハ集水埋管其他水源諸工事ニ使用シタルモノヲ転用シタルモノナルニ 之カ契約単価ハ損料1日1枚ニ付7銭運搬費1枚ニ付2円40打込及抜取1間分ニ付歩掛鳶7人5単価2円 人夫7人5単位1円20トシ24円ト為シタルハ 集水埋管其他水源諸工事ノ水中作業ナルニ比シ陸上ニシテ作業容易ナルニ堪ヘ前項同様ノ理由ニ依リ高価ト認メラルルニ依リ之ヲ相当ト認メラレタル事由ヲ説明シ尚ホ前2項ニ対スル鉄矢板関係ノ各請負金額(計算ノ基礎ヲ明ニシタル内訳調書)及代金支払年月日調提出アリタシ
つづいて,昭和13年には内務省検査官による第2次実地検査があった。国費関係は内務省安藤兵吉・同和泉賢治と内務技手大井博和で,県費関係並立会として県の道路主事滝川勧則・道路技師佐藤義正・道路書記前田豊が検査官となつて来庁している。2月22日に全般的概括検査,同23日に細部検査,同24日午前中は物品材料検査,午後は工事現場検査の日程で,会計検査院審理書並答申など書類をもとに実地検査をした。
昭和13年7月14日に,内務大臣と厚生大臣によって,同9年8月31日に水戸市が提出した水道布設工事完了申請は認可され,国庫補助額は36万5,855円59銭と決定された。その交付年度割は,つぎのようにされた。
この決定について,茨城県経済部長が,布設総支出額より157万9,891円10銭より国庫補助対象外とされた項目や内容を説明し,国庫補助基本額が146万3,422円39銭とされたことを連絡している。この計算により,国庫補助認可条件の1つであった,「補助ハ其ノ市水道拡張費210万4,940円ニ対シ補助スルモノトス」と「工事ニ剰余アリタルトキハ第1項補助ノ割合ニ依リ之ヲ返還セシムルコトアルヘシ」により,補助割合が支出額のうちの対象項目の25パーセントであったことより,補助は36万5,855円59銭となった。
なお,国庫補助の対象額外とされたものには,給水戸に対する配水補助管とされる特典工事費,市長や助役の賞与と吏員の竣功賞与程度の超過分,起工式や通水式そして竣功式経費の一部,水道委員や顧問に対する完成記念品など,関係者のなかで問題となっていたもの昭和9年9月の実地検査で指摘されていたものであった。
以上の認可指令は,事務処理上の関係があったためにか,水戸市には約1か月後の8月18日に通告された。水道調査臨時委員会規程が,大正14年8月23日に市会に設けられてから12年目,全市水道布設工事が昭和5年7月29日に認可されてから7年目にして,完全に手続きの面からも完成したのである。市民の飲料水が,市民の手によって確保できる時代がきたのである。
なお,県費補助については15年度で完結し,水道布設費・水道費の決算書によると,つぎのようであった。