監視員体制は,昭和2年4月14日庁中達として水道監視服務規程ができたことに始まる。全市水道時代の水道監視服務規程は,昭和7年9月17日に庁達第24号として発布されている。
この規程には,監視員の任務として量水器の点検,水道開閉栓の事務,共用栓の鍵と鑑札再交付時の調査,配水本支管とその付属器・消火栓の維持管理,消火栓の開閉,給水装置の点検,給水栓使用戸の家族数の確認,給水条例違反の発見など,重要なものだけでも7つ記載されている。
そのため,水道監視員は,公務に関係する者たちの具体的な人物として情実を避け,品位を保持し,応対には充分に気を使うことが要求されている。
水道監視服務規程
昭和7年9月17日庁達第24号
昭和11年3月31日同第2号改正
第1条 水道監視ハ上司ノ指揮ヲ承ケ水道ノ保護取締,違反者ノ処分其ノ他給水ニ関スル事務ニ従事スルモノトス
第2条 水道監視ノ担当区域ハ水道課長之ヲ定ム
第3条 水道監視ノ勤務時間左ノ如シ但シ事務ノ都合ニ依リ時間外勤務又ハ視察ヲ命スルコトアルヘシ
自3月1日 至10月31日 午前8時ヨリ午後5時迄
自11月1日 至2月末日 午前9時ヨリ午後4時迄
第4条 水道監視ハ施行通知書ニ依リ第1号様式原簿ヲ作製シ爾後異動アル毎ニ速ニ整理シ置クヘシ
第5条 水道監視ハ量水器点検ノ場合ノ外1名宛在庁シ水道開閉栓ノ事務ニ任シ且標準異動照査並共用栓鍵,鑑札再交付ニ関スル調査ヲ為スヘシ
第6条 水道監視職務執行中ハ必ス其ノ制服ヲ着用スルノ外標章並手帳ヲ携帯スヘシ
第7条 水道監視ハ常ニ担当区域内ニ於ケル配水本支管及付属器具ノ位置,給水状況並非常時ニ処スヘキ制水弇,消火栓ノ開閉方法等ヲ熟知スヘシ
第8条 水道監視ハ其ノ巡回中水道設備,用具等ノ異状,給水ノ濫用,盗用,分与其ノ他給水条例ニ違背シタル行為ヲ発見シタルトキハ応急処置ヲ執リ此ノ旨水道課長ヲ経テ市長ニ報告スヘシ
第9条 水道監視ハ毎月20日ヨリ其ノ月末日ノ間ニ於テ担当区域内量水器ヲ点検シ之ヲ量水器点検表ニ登記シ同時ニ水量点検票ニ記入捺印ノ上水道使用者ニ交付スヘシ
前項量水器点検表ハ遅クモ翌月5日迄ニ其ノ計算ヲ了シ捺印ノ上一括シテ徴収係ニ送付スヘシ
第10条 水道監視ハ其ノ取扱ヒタル事件ヲ監視日記ニ記載シ遅クモ翌日午前中上司ニ提出スヘシ
第11条 水道監視ハ毎月1回以上相当区域内ニ於ケル給水装置並使用者ノ戸数,人員其ノ他給水ニ関スル事項ヲ調査シ(第4号様式)ニ依リ翌月8日迄ニ水道課長ニ報告スヘシ
第12条 水道監視ハ火災其ノ他変災ニ際シテハ直ニ現場ニ出動シ制水弇,消火栓ノ開閉等ニ付消防組ト協力スヘシ
第13条 水道監視ハ職務執行上情実ヲ避ケ且吏員タルノ品位ヲ保持シ水道使用者ニ対シテハ常ニ応対ヲ懇切ニシ苟モ驕慢ノ行為アルへカラス
付則
第14条 本規程ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第15条 昭和2年4月14日庁中達水道監視服務規程ハ本規程施行ノ日ヨリ之ヲ廃止ス
給水条例の違反とは,同7年条例の第43条によると11項目ある。
1 恣ニ導水装置ヲ為シ又ハ給水装置ヲ移動,変更,撤去若ハ加工シタルトキ
2 給水装置ニ障害ヲ及ホス虞アリト認ムル施設ヲ為シタルトキ
3 恣ニ止水栓ヲ開閉シタルトキ
4 故意ニ量水器毀損シ又ハ其ノ作用ヲ妨ケタルトキ
5 給水装置ノ修繕手続ヲ怠リ漏水ヲ放任シタルトキ
6 消火ノ目的ニ非スシテ恣ニ私設消火栓ノ封緘ヲ破損シ又ハ消火以外ノ用途ニ使用シタルトキ
7 恣ニ給水装置ヲ種別ノ異リタル用途ニ使用シタルトキ
8 給水ヲ濫用シ又ハ恣ニ分與,販売シタルトキ
9 共用栓ノ鑑札,鍵ヲ貸興又ハ譲渡シ若ハ之ヲ連繫セスシテ使用シタルトキ
10 本條例ニ依リ納付スヘキ給水料,工費,手数料其ノ他ヲ期限内ニ納付セサルトキ
11 水道係員ノ職務執行ヲ拒ミ又ハ妨害シタルトキ
このように,水道創設期においては,施設の能力不足と使用者の理解不足からくる問題が多発した。これを早期に解決し,給水体制を維持する必要があって,市内を積極的に巡回する係員を設置することが,一般的傾向であった。
とくに,この係が努力したのは,給水の乱用を防止することであった。水戸市の全市水道は飲料第一主義で,当然のことながら他の利用は全て排除している。明治45年の水道給水条例が「噴水,泉池,撒水,原動力等ニ要スル給水ハ当分許可セサルモノトス」(第2条)は,昭和4年給水条例にも引き継がれている。それが同7年給水条例では,計量栓3類の中の第3類として「噴水,泉池,滝等娯楽用及工事用其ノ他臨時使用スルモノ」として,許可の対象に入っている。ただ,その第1類とされた営業,学校,官庁,病院などが1か月基本水量15立方メートルで使用料1円20銭(旧区域は60銭),第2類の湯屋が基本水量30立方メートルで使用料を1円20銭(旧区域は60銭)とされたのに,第3類は10立方メートルを基本水量とされ,その使用料は新旧区域の区別なく3円とされた。第1類と実質的に比較すると,第3類はその3.75倍になる高い使用料である。
昭和11年給水条例では,給水装置5つの中の3番目に特別栓の規定がある。それは「噴水,泉池,滝等娯楽及工事用其ノ他臨時使用ニ供スルモノ」であって,基本水量は10立方メートルとされ,使用料は新旧区域とも3円とある。このとき,一般の給水栓である専用栓は基本水量が15立方メートルで1円20銭(旧区域は84銭),私設共用栓は10立方メートルで60銭(旧地区は39銭)、公設共用栓は6立方メートルで30銭(旧区域は18銭)である。これを1立方メートルで計算すると,その高価な状況は明確である。ここに水道経営者の給水に対する基本理念を改めてみることができる。ただ,この表は,単純な計算であって,専用栓と共用栓との比較は本質的にはできない。基本水量とは,それまで使用しなくても一種の責任水量であって,経営の分担金と同じで,超過は別として全額納入が義務付けられたものである。それが同じ飲料水利用家庭であって,基本水量に差がある所にこそ大きな意味がある。専用栓の基本水量は1円20銭であるが,私設共用栓で同水量は90銭,公設共用栓では75銭となる。