以上の対策として,放任給水の方法を根本的に改革することになった。いかなる取り締りの方法をしても散水や放流など不正使用は防止できないので,機械的に乱用を阻止し,使用量に応じた使用料を徴収する制度である。現在においては不自然でもないこの制度は,昭和11年当時においては,「水も自由に使へぬ水吐口へ出現する番人量水器」(「いはらき新聞」昭和11年3月1日)と表現される状態であった。
改革は,昭和7年3月15日告示の水戸市給水条例(昭和7年10月1日改正,同8年3月31日改正告示)を廃止して,新たに水戸市給水条例(昭和11年3月31日告示,同年4月1日施行)を作ることで始まった。
昭和7年条例は,給水方法が大きく量水器を使用しない放任給水とそれを使用する計量給水の両制度の併用であった。(第2条)放任給水は,1戸または1か所だけの利用である専用栓と,2戸以上が共同使用するため私費で設置した施設共用栓と公費で街路に設置し共同使用される公設共用栓とからなる。計量栓は,飲料・炊事・洗濯等普通家事用ではなく,営業用や官公署と学校・病院など多量に水を使用する所に設置された。(第3条)給水条例施行細則第26条には,「専用栓ニ携ルヘキ資格ノモノニシテ1戸7人以上又ハ居住人員一定セサルモノ」は計量栓にできるとある。そのため計量栓の量水器は使用料が徴収され,1か月口径13ミリの20銭から150ミリの3円まで10段階あった。(第4条)なお,量水器は完全なものが少なく,当時はよく故障したが,その異状を理由に試験を依頼すると,器具が正常のときは,口径13ミリは70銭で,75から150ミリは3円の試験手数料が取られた。
以上のように,計量栓が特別で,普通には1戸5人家族を基本にした定料金制度であった。これは,最初の段階では予定通りの収入が確保でき,経営の安定には大変に役立った。それも人びとが水道の便利さを知り,多方面に利用を始めると,定料金制は定量制でなかったことより,経営者の予想を大きく超えた水量が必要となってくる。その具体的事例が水戸でもでてきたのである。
昭和11年条例では「本市水道は本市において設置したる量水器により,その使用水量を計量して給水する」(第2条)と,全給水栓に量水器を付けることになった。それまでの給水栓法も改正され,5つの種類が規定された。
1 専用栓 1戸又ハ1所帯ノ専用ニ供スルモノ
2 湯屋営業 湯屋営業ニ供スルモノ
3 特別栓 噴水,泉池,滝等娯楽用及工事用其ノ他臨時使用ニ供スルモノ
4 共用栓 3戸以上ノ共用ニ供用スルモノニシテ之ヲ左ノ2種ニ分ツ
甲 私設共用栓 私費ヲ以テ邸宅内ニ設置スルモノ
乙 公設共用栓 市費ヲ以テ街路ニ設置スルモノ
5 私設消火栓 防火用ニ供スルモノ
強制的に全給水栓に量水器を取付けるために,それまで徴収していた量水器使用料は廃止され,無料で貸付されることになった。(第8条)しかし,量水器そのものは市水道課に在庫がなく,5年計画で取付けることとされた。
その順序は,街路などにあって不正に使用されることが多い共用栓を初年度とし,つづいて専用栓使用で人数の多いものや違背行為の多かった家,第3年度は支栓を使用している家,第4年度は基本使用料組の同居5人に,第5年度でその他残っている給水栓と計画された。このように,規定水量を超えて使用する傾向が高い給水栓より作業が始まっている。それも4,829個を4万8,119円の予定で計画したが,第16節の量水器の共同組立のような問題も発生して,取付完了までは関係者は大変に苦労している。
量水器取付けは,利用者数による固定使用料制度ではないため,使用量の不定による料金収入不足で,水道経営は不安定となる。そこで,各水道経営体は経営の安定維持のため,基本使用料金制度か基本水量制度を導入する。水戸市の場合は,公共性の強い施設であることから施設の基礎的管理維持には全利用者が経費を負担する必要があると,それぞれ口径や給水栓の種類に応じた責任使用量ともみられる基本水量を決定した。すなわち,それぞれの水道利用の状況によって,その経費負担をすることを前提にしている。栓種別基本水量を定め,これをもとに料金表を作成するのである。
第30条によれば,1か月の最低基本水量はつぎのように決定された。
(イ)専用栓
給水装置公称口径 30mm未満 15m3
但シ支栓1個ニ付 3m3宛加算ス
給水装置公称口径 30mm 30m3
同 38mm 45m3
同 50mm 100m3
同 63mm 150m3
同 75mm 160m3
同 100mm 200m3
同 125mm 300m3
同 150mm 400m3
本号給水装置口径以外ノモノニ付テハ其ノ口径ノ近似スルモノニ準ス
(ロ)湯屋営業 150m3
(ハ)特別栓 10m3
(ニ)私設共用栓 1戸 10m3
(ホ)公設共用栓 1戸 6m3
これら基本水量をもとに,水道使用料が決定されたが,昭和7年条例で1栓に付き1戸5人までの専用栓は新区域が1円20銭,旧区域が同11年は84銭でその後90銭,96銭、1円2銭,1円8銭,1円14銭,1円20銭と変化することになっていた表が,そのまま使用されている。
昭和11年の給水条例は,共用栓の利用についても改正している。共用栓は,明治45年6月27日の水道給水条例にも私設と公設の2種類があった。私設共用栓の設置は,「地主又ハ家主ヨリ請求スヘシ」(第10条)もので,その費用は請求者の負担(第8条)とされた。これは昭和4年,同7年条例も同じであるが,同11年条例は「私費ヲ以テ邸宅内ニ設置スルモノ」とする外に,その内容を明確にしている。
第10条 私設共用栓ノ給水装置ハ其ノ使用者ノ居住スル土地又ハ家屋ノ所有者ニ非サレハ新設ノ請求ヲ為シ若ハ其ノ土地又ハ家屋ト分離シテ売買,譲渡,相続及遺贈ノ目的ト為スコトヲ得ス
公設共用栓については,明治45年と昭和4年は「公費ヲ以テ街路ニ設置シ共用者ニ放任給水」するとし,昭和7年ではこれが「量水器ヲ用ヰスシテ給水スルモノ」と表現を変えている。同様の趣旨は同11年条例にも,量水器は設置されるが存在し,公設共用栓は設置されている。
これら共用栓を利用できる資格は,表のように条例改正ごとに制約が強くなった。下市水道時代は給水戸数の70パーセント台が共用栓であったが,全市水道の創設期はそれぞれ20パーセント台となり,昭和11年条例施行によって10パーセント台になった。この傾向は,私設共用栓数の減少となって表現されている。
なお,共用栓については,「其ノ組合総代人ヨリ之カ使用申請ヲ為スヘシ」(第29条)とある。同施行細則第24条ではその申請には,世帯主の氏名・職業・家族数・直接国税年額や家屋の建坪,借家の場合は家賃の月額を記載した組合員名簿を提出することを必要としている。そして,現に共用栓を利用している人たちには,細則施行の日より15日以内に組合の申請をしない場合は,水道の利用を中止したものとみるとしている。このように,共用栓は,個人のただの集合体に利用権を与えるのではなく,組合にかぎって使用させることにし,その事務的な取扱いを選出された総代人に依頼することになる。そのために条例は,つぎのように総代人を規制することになっていた。
第42条 共用栓組合総代人ニ於テ左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ5日以内ニ総代人ノ改選ヲ命ス此ノ場合総代人ヲ改選セサルトキハ其ノ栓ノ給水ヲ停止スルコトアルヘシ
1 組合ニ加入セムトスル者ヲ正当ナル理由ナクシテ拒絶シタルトキ
2 本市条例ニ規定スル水道使用料以外ノ料金ヲ徴シタルトキ
3 組合ノ水道使用料ヲ其ノ期限迄ニ納付セサルトキ
4 漏水申報又ハ届出ノ義務ヲ怠リタルトキ
5 組合員以外ノ水道使用ヲ黙認シタルトキ
6 条例ニ背反スル者アルヲ静止セサルトキ
7 其ノ他本条例又ハ本条例ニ基キ規定シタル事項ニ違背シ若ハ虚偽ノ届出ヲ為シタルトキ
共用栓使用其ノ他ニ関スル取扱要項(昭和11年3月31日庁達第2号)
第1条 共用栓ハ当分ノ内5戸以上共用スルコトヲ要ス但シ現ニ3戸以上ヲ以テ使用スル共用栓ニ限5戸ニ達セサル場合ト雖モ昭和12年3月31日迄之カ使用ヲ特認スルコトヲ得
第2条 前条但書ニ依リ特認シタル者ノ水道使用料ハ其ノ資格ニ応ジタル当該種別ノ料金相当額トス
第3条 給水条例施行細則第23条ノ限度ヲ超エ之カ使用ヲ特認シタル場合ハ左記区分ニ依リ水道使用料ヲ徴ス
1 私設共用栓使用ノ有資格者ニ対シ已ムナク公設共用栓ノ使用ヲ特認シタル場合ハ私設共用栓使用料相当額ヲ徴ス
2 共用栓使用ノ資格ナキ者又ハ之カ資格ナキニ至リタル者ニ付テハ実際使用ノ栓種ニ拘ラス専用栓使用料相当額ヲ徴ス
第4条 本市ニ於テ承認シタル以外ノ用途ニ水道ヲ使用シタルトキハ総テ特別栓使用料相当額ヲ徴ス
第5条 水道ヲ濫用シタル者ニ対シテハ直ニ計量器を設置シ仍其ノ使用シタル水量ハ之ヲ推定シテ逋脱料金ノ例ニ據リ料金ヲ徴ス