2 諸施設の洗浄

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 全市水道布設時代の河川水の浄化は,それが伏流水であっても,試行錯誤的段階もあって大変に苦労した。とくに施設の洗浄は構造も充分でなく,薬品処理についても研究の途上にあったことから,船の甲板の清掃に使用するハケであるデッキブラシと水による洗浄が最っとも効果的手段であった。


各施設の洗浄予定


浄水場の昭和9年度年中行事予定(昭和9年7月3日提出)

 そのため,各施設の洗浄は毎年必ず実施することになった。それが,ナイスの発生問題があって,浄水場ではできるだけ回数多く洗浄作業をすることにした。ところがその作業は一時的に多量の人手を必要とし,配水量の低下する夜間に実施されるため,作業員にとっては重労働であったらしい。


浄水場関係の作業単位労力(昭和9年度)


昭和9年1月1日より8月10日までの徹夜作業

 実際に,各施設がどの程度洗浄されたか,年何回実施されたか理解できる資料はない。現在判明しているものは,図「洗浄作業」のようであるが,これ以外のことが実施されなかったのではなく,実施された記録が不明なだけである。それは,ろ過池の整備代が決算書によると昭和8年度より同18年度まで支出されていることでも明確である。


洗浄作業


ろ過池整備代

 集水埋管とその導水鉄管,低揚吸水井,量水井,高区と低区配水塔タンクは,いつも同じ時期に関連した施設として洗浄されている。

 昭和9年7月20日から24日までの洗浄は,つぎのように実施されている。7月20日午後5時に,高区と低区の両配水塔タンク,第1号と第3号のろ過池,調整池,高揚吸水井にまで満水にする作業を開始した。それが達成された午後11時に,低揚吸水井内の主制水弁を閉栓し,30馬力と15馬力の2台のポンプで加圧した水を集水埋管と導水鉄管に流入する。これを数回繰り返して,管内の鉄さびを自然放出させ確認したあと,吸水井内壁を消火栓とデッキブラシで洗浄する。全ての洗浄が終了した段階で,取水と揚水の繰り返しを翌21日の午前5時20分に埋管よりの原水に濁りがなくなるまで続けた。


低揚吸水井内部洗浄作業(昭和13年8月12日)


調整池内部洗浄作業(昭和10年7月28日)


調整池洗浄作業(昭和10年7月28日)

 高区配水塔タンクの洗浄は,7月22日午後5時から翌23日の午前6時20分まで実施された。昭和8年5月の洗浄には,工兵第14大隊より作業救命用の「カボック」を借用して筏を作ったが,不便なこともあったので昭和9年度はタンク内専用の小舟を5隻作っている。作業は,午後5時にタンクを満水にすることから始まった。タンクが満水になった午後10時に,浄水場より市内直通バルブを開栓とし,水の引出管と引入管のバルブを閉栓し,タンク内に小舟を入れ,内壁をデッキブラシで洗浄する。洗浄作業の進行に合わせてドレーンバルブを開閉して水面を下げ,タンク内壁全体を洗浄した。最後の底部引出篭周囲には,赤サビなどを始め多量の沈でん物があったため,これを布切れでぬぐい取る。内壁全面に水を流して放流し,これに濁水がなくなった段階で貯水を開始した。水位が3メートルに達した時に,市内直通バルブを閉栓し,つづいて引出管のバルブを開栓して,23日午前6時20分より通常の配水体制に入った。


高区配水塔タンク内で使用した舟


配水塔タンク内で舟を浮かべての洗浄作業

 低区配水塔タンク内の洗浄は,7月24日午後5時より翌25日午前3時30分まで実施された。タンク内満水になった午後9時30分からは,浄水場より配水塔まで水を送っていた送水管と市内配水管を直通にし,七軒町制水弁の調節によって毎時100立方メートル内外の水量を確保した。満水になったタンク内には,小舟を浮べて内壁を洗浄し,高区タンクと同じ方法で赤さびなどの沈でん汚物を取り除いた。最後にタンク内を放水によって洗浄し,水質が清浄になった段階で貯水を始め,水位が2メートルに達したときに市内に配水を開始している。

 8月9日に作業をした調整池と直通鉄管の洗浄は,午後5時より高区と低区の両配水塔に対する送水を増化し,タンクが満水となった午後10時に開始した。15馬力と5馬力のポンプ2台で調整池を排水し,水位の減少した壁面からブラシと消火用の放水器を使用して洗浄する。同時に直通鉄管内も洗浄し,排水に濁りがなくなるまで続けられ,翌8日の午前5時30分に終了している。

 高揚吸水井の洗浄は,洗浄作業困難な構造のため,昭和7年4月12日の送水開始以来同9年8月26日に作業を始めるまで1度もなかった。午後5時より,両配水塔タンクに満水までの貯水を開始した。高区タンクは満水位なら送水を中止しても,翌日までの配水には心配がなかった。低区タンクは容量の面から心配があったため,非常用として45馬力ポンプ1台を調整池に設置して送水に備えている。吸水井は,15馬力と5馬力のポンプ2台によって,タンク満水になった午後10時に排水を始めた。洗浄は消火用器具を使用し,給水と排水を繰り返して沈でん物を取り除き,全ての作業は翌27日午前6時30分に終了した。