1 非常時給水対策

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 昭和18年11月10日,第12回水道協会の総会で,名古屋市水道局より提出された決議案が全員一致で可決された。それは,水道が産業の基盤的施設で,国民保健上必要不可欠の重要施設であるとともに,大東亜戦争(戦後は太平洋戦争と称す)の激化で防空上からも重要なものとなったことを再認識している。

 その内容をみると,当時の水道関係者が,いかなる問題で悩み,どのように戦争に対する対応をしていたか理解できるので,決議項目をそのまま記す。

  1 吾等ハ全能ヲ挙ゲテ生産拡充用水ノ供給ニ万全ヲ期ス

  2 吾等ハ空襲下都市防衛ノ拠点タル水道施設ノ整備ト之ガ運営ノ完璧ヲ期ス

  3 吾等ハ如何ナル事態ニ在リテモ生活必需用水ノ供給ニ遺憾ナカラシムコトヲ期ス

 1は,それまで水道経営が基本としてきた飲料水第一主義を改めて,戦時体制下での生産拡充用水供給第一主義とした。水道が各種生産の基礎的施設であることより,その所有する施設と要員を総動員し,戦力の増強に協力する体制を作ろうとする。ただ,水道に要する資料は配給制であり,人手が困難であったことから,既設備を充分に活用することと漏水防止による絶対量の増加を主とする。従としては,各給水栓の基本水量の引き下げ,超過料金の引上げなどの給水条例改正を各水道関係経営体に指導して,給水量の消費規制をも考えた。

 2は,日本は可燃性の都市のため,都市防衛の基は防空用水であるとする。そのため,送水幹線,浄配水施設などが空襲によって破壊されないように,偽蔽し,遮蔽し,秘匿すること。破壊された時に,迅速に復旧する必要があるが,資材の入手が困難なときでもあるから,要員の訓練と組織化を充分にすること。なお,隣接する水道が相互に応援できる組織を確立することも,促進させると説明している。

 3は,救急ろ水車の設備,非常配水用トラックの確保,各家庭における飲料水の最低限の用意と利用訓練を勧告する。井戸水利用と消火用貯水池の簡易消毒浄化による飲料水化など,諸準備と各種訓練をも求めている。

 水戸市でも,これら全国的水道施設の防空的体制作りを基本として,昭和19年8月には非常時給水対策を作成して発表し,各関係者と団体に連絡している。高区と低区別の防禦策と井戸水の積極的活用法,不足している資材の確保などからなるが,具体的内容は不明である。


「いはらき新聞」昭和19年8月18日

 昭和16年12月に発行された『時局防空必携』には,ふだんの準備として,水を「普通の家では1戸当り約百リットル(約5斗5升)以上」の用意を,隣組では「なるべく1立方メートル(約5石5斗)以上の貯水槽」を用意することを求めている。また,水道に関しては,「使った後は蛇口を締めて置くこと,これを怠ると(水圧が低下したとき)汚物が逆に入ったり,水圧が下がって消防にさしつかへたりする」と注意している。