4 「締めよう水道栓」

711 ~ 715 / 1103 ページ

 昭和17年度の水道使用状況は,総戸数が8,010戸であった。これに湯屋営業・特別・私設消火栓が43ある。使用種別の件数は,専用栓が4,571戸で全体の56.76パーセント,つづいてこの時代になっても残っていた放任栓が2,345戸で29.12パーセント,共用栓は1,094戸で13.59パーセント,特別栓などは43栓あり0.53パーセントであった。

 専用栓の使用状況だけについてみると,1か月に10立方メートル以下の使用が2,861戸で,専用栓の62.59パーセントを占める。10立方メートルから50立方メートルまでは1,596戸で34.92パーセントとなる。一般家庭給水栓だけでみると,10立方メートル以下は全体の64.19パーセントとなっている。


水道使用状況調(昭和17年度)

 以上の状況と,冬季や夏季における乱用防止とを目的に,一般家庭用給水栓の基本量を1か月15立方メートルから10立方メートルに変更することを計画した。それを「使用水量ヲ規制セントスル理由」と表現している。

   使用水量ヲ規制セントスル理由

  1 水道濫用等ノ実状

  (イ)撒水ニ係ル濫用

   本市ハ地勢的ニ観ルモ 街路撒水等ニ利用シ得ヘキ適当ナル流水無シ 殊ニ高地区ニ在リテハ井戸深ク用水ヲ需メルニ極メテ不便ナルノ他面 低地区ハ往昔以来水質モ亦良好ナラザル結果 既ニ同地区ニ於テハ寛文2年ヨリ水道ヲ利用シ居ルコトハ有名ナル事実ニシテ 斯ノ如ク市内一円ニ亘リ水利ノ便極メテ悪シク 為メニ昭和7年新水道ノ給水ヲ開始スルヤ 玆ニ多年ノ渇望ヲ満シ得タルモ 其ノ半面撒水濫用等ニ依ル水道不正使用者モ亦続出シ 之ガ取締ヲ厳ニスルモ末タ完璧ヲ期スルコト能ハス 殊ニ現今益々防止困難ノ実状ニアリテ 其ノ水モ蓋シ少カラサルモノアリ

  (ロ)凍結期ニ於ケル濫用

   撒水ニ次グ水道ノ浪費ハ 冬期中ニ於テ凍結防止ノ目的ニスル夜間放流ニシテ 現ニ本年冬季ニ於ケル水道統計ニヨリ看ルモ 其ノ放水量ハ毎時平均70立方米ニモ及ビ 之ヲ1日ニ換算スルトキハ平均実ニ490立方米ニ上ル放水量トナル。

  (ハ)故障時ニ於ケル漏水

   水道故障ノ内最モ多キハ 給水栓ノ故障(ケレップ破損)ニシテ 之ガ統計ハ故障約80%モ占メ 修理費ハ無料ヲ以テ施行シテ居ルノ次第ナリ 即チ斯カル修理費ヲ若シ有料ヲ以テスルトキハ故障通報ヲ怠ル向ヲ保シ難ク 為メニ漏水量ノ過大トナルノ虞アルヲ以テ無料トシタルニ外ナラス 此ノ漏水量モ亦極メテ多量ニシテ 前年ノ水量統計ヨリ考察スレハ1時間当リノ漏水量ハ平均30立方米トナリ 之ヲ1日ニ換算スルトキハ実ニ720立方米トナリテ 本市給水総量ノ約10%ノ漏水量ナリト断セサルヲ得ザレナリ。

  (ニ)結び

   濫用及漏水放置等ノ弊ヲ排除セントスルニハ 水道取締ニ関シ直接又ハ文書等ヲ以テノミニシテハ到底完璧ヲ期シ難キ実状在リ 従ツテ本市ノ給水状況ヨリ考察スルトキ現在ノ基本水量1ヵ月15立方米ハ家庭用水トシテハ余リニモ過大ナルノ結果 些少漏水又ハ濫用 撒水等ノ為ス

   右基本水量ヲ超過スコトナク 故ニ水道節約ノ観念ト逆行スルガ如キ傾向デアルコトヲ否ミ難キモノアリ 要スルニ以上ノ如キ弊ヲ排除スルトセバ少ナクトモ本市総給水量ノ略20%ノ消費ノ節約ヲ為スコトハ容易ナリト思惟サレ 又斯ク上水道ノ消費節約ヲ為ストキハ上水圧送ノ原動力タル電力ニ於テモ1カ月1万「キロワット」時トナリ 馬力ニ換算スレバ実ニ1万3千馬力余ヲ生シ 若シ之ヲ重要産業部門ニ振換使用スル場合ヲ想到スルナラバ 全ク一滴ノ水ト雖 無駄ニ使用スルコトヲ許サヽルナリ 即チ基本水量ヲ引下ゲ逆ニ超過料率ヲモ値上ゲシタル所以ニシテ 条例改正ノ主要ナル理由モ玆ニ存スルナリ 而シテ水量ノ規制ト相俟ツテ収支ノ均衡ヲ測リ戦時下ニ於ケル水道財政ノ円滑ヲ期スルノ次第ナリ。

 この提案は昭和19年3月25日の市会に,給水条例改正案として提出して議決され,ただちに4月1日より実施された。市民に対する広報は,つぎのような「御知ラセ」ビラの配布でなされた。その内容には,昭和19年の時代を表現する「戦争資源カ消耗サレ又貴重ナ」とか「戦争生活上」とかの言葉がでている。

水道ヲ台所迄送ルニハ 大切ナ電力ヤ薬品類ノ戦争資源カ消耗サレ又貴重ナル機械ヤ浄化設備カ操業サレテ 其所ニ多数ノ労力カ費サレテ居リマス

斯様ニ緊要ナル資源労力カ無駄ニ浪費サレルコトハ 戦争生活上矯正シナケレハナリマセン 之レカ為メ本年4月1日ヨリ上水道使用者ニ付適正水量ヲ規正シ料率ヲ改正スルコトニナリマシタカラ充分御含ミノ上 消費節約ニ御協力下サル様御願イタシマス。

      (昭和19年)3月25日市常会提出

  給水条例改正御知ラセ

来ル4月1日ヨリ水道ノ使用料及手数料が改正サレルコトニナリマシタカラ 充分御留意ノ上御使用願マス。

  ◎使用料

   1 専用栓

    イ 給水装置公称口径30粍未満

     一般家庭用ニ供スルモノ

現在月15立方米迄 1円20銭ノモノガ1月10立方米迄 1円20銭トナリマス

但シ支栓ハ1ケニ付3立方米 36銭宛ノ加算トナリマスカラ 例エバ支栓ヲ2ケ使用ノ御家庭デハ基本水量ガ1月ニ16立方米トナリ 1円92銭ノ基本料金ヲ申受クルコトニナリマス

    ロ 給水装置公称口径30粍以上ノ使用者

営業用,銀行,会社,学校,病院,官公衛等多量給水ニ供スルモノハ現在ノ基本水量ノ2割程度ヲ減スルコトニナリマシタ。

    ハ 使用料率

1月10立方米迄 1円20銭

1月10立方米ヲ超ユル部分 1立方米ニ付 12銭

1月300立方米ヲ超ユル部分 1立方米ニ付 10銭

1月1,000立方米ヲ超ユル部分 1立方米ニ付 8銭

 2 湯屋営業栓

   現在1月150立方米迄6円ノモノガ,120立方米迄6円トナリ,之ヲ超ユル部分1立方米ニ付5銭宛ノ加算トナリマス。

 3 特別栓

   現在1月10立方米迄3円ノモノガ8立方米迄3円トナリ,之ヲ超ユル部分1立方米ニ付36銭ノ加算トナリマス。

   此ノ栓ノ所有者ハ利水ヲ水道以外ニ求メ出来ル限リ撤去シ資材ヲ重要部面ニ転用スル様御願シマス。

 4 私設共用栓

   現在1戸1月10立方米迄60銭ノモノガ6立方米トナリ,之ヲ超ユル部分1立方米ニ付10銭宛ノ加算トナリマス。

 5 公設共用栓

   現在1戸6立方米迄30銭ノモノガ5立方米迄30銭トナリ,之ヲ超ユル部分1立方米ニ付6銭ノ加算トナリマス。

 6 放任栓

   現在1月5人迄1円20銭ノモノガ4人迄1円20銭トナリ,1人ヲ増ス毎ニ20銭ノ加算トナリマス。

   支栓ハ1ケニ付36銭ノ加算トナリマス。

 ◎手数料

   共用栓ノ鑑札,鍵及量水器ノ試験並自己材料等ノ手数料ハ2割程度ノ増額トナリマス。


昭和19年8月1日改正給水料金

 この時代は物価は統制され,全て配給制度ではあったが,戦時体制下で軍需物資が中心のため,水道事業の経営は必要物資が入手できずに大変に苦労していた。ところが4月1日に基本水量を引き下げて,実質的値上げをしたことの広報活動が浸透しすぎて,市民の節水が徹底しすぎ,4・5・6月は収入減となってしまった。

 水道課は,水道事業継続のため受益者負担の原則を貫く必要があって,4月1日につづいて同年に2回という珍しい使用料値上げの条例改正を8月1日に告示した。

 これに関して水道課では,夏季の例年にみる水道乱用と新料金との問題に合わせて,水道使用について注意を呼び掛けている。その合言葉が「締めよう水道栓」であったが,これには最初に記述したように初期の節水運動とは異なる響きがあった。


昭和19年8月10日「いはらき新聞」