昭和14年10月の価格等統制令公布以来,戦時体制の強化によって日常生活に関係する諸統制が一段と進んだ。水道においても揚水や配水に必要となる電力が制限される電力統制令の影響を受け,市民に節電のために節水を要求することになった。
とくに昭和14年12月には,50年間の平均降水量が51.8ミリなのに6.1ミリしかなく,翌年1月も平均降水量44.3ミリに対して,0.7ミリと少なく,那珂川の流水も減少して揚水量が不足するようになり,ポンプの長時間運転が必要となっていた。その対策として,水道課員が1月から2月にかけ夜間市内を巡回して漏水・放流の防止に努めた。例年のように水道給水栓の凍結を防ぐと称する少量放流の違反が,一晩で37件も摘発されている。以上の状況などから,昭和15年の節水は電力を軍需用生産に転用する必要上,それまでとは異なる意味を含めて宣伝され,実施されている。
昭和17年1月は,寒波のため,地表下0.1メートルの地温が50年間の平均2.5度より1度低い1.5度で,結氷日数も多かった。水道に関しては,夜間の凍結による破損が続出したが,要員や補修材料の不足もあって,早急な作業ができなくなりつつあった。これら破損による無駄な放流や,例年冬季にみられる凍結防止と称する水の流し放しが一夜で240立方メートルにも達する状況にあった。
水道課は,これらは決戦時下国民的尺度をもって無駄を排除するようにと,1月12日に水道の手当と称するビラを配布している。
△凍結の予防
1 水栓柱を地下約1尺の処より荒縄で巻きその上を茣蓙又は空俵で包むこと。
2 給水栓を就寝時に古新聞紙で包むこと。
△凍結した水道の手当
1 給水栓にゴムホースを取付け一方を高くして温湯を注入してから給水栓を開放して置くこと。
2 ゴムホースの無い場合はタオル類で給水栓を包み温湯を注入する。この場合熱湯は破損の原因となるを以て不可。
昭和19年1月24日には,東京軍需監理部長より水戸市に「電力使用合理化ニ関スル件」の通達があった。それには「電力ノ徹底的有効利用ヲ図リ限リアル電力ヲ最大限ニ活用シ戦力増強ニ遺憾ナカラシムル」ために,1月13日より「告示ニ基ク最高ノ消費制限ヲ実施スル」とある。
同年8月26日の新聞では,時代をよく表現した言葉で「水も兵器です」のタイトルに「無駄に使ふ(う)な 節水して 敵機に備へよう」の副題をつけ,節水を呼びかける記事がある。それによると,水の多少は消火活動面から,敵機より投下された焼夷弾の被害程度に関係してくる,重要な兵器である。この大切な水を無駄に使用している者が多いので,戦力増強のためにと水道課が節水を呼びかけている。
〇蛇口は完全にいつも閉めること。
〇1度使った水でも捨てずに何度も他の用途に使用すること。
〇容器に汲むときは,こぼれないように8分目にすること。
〇必要な蛇口以外は閉鎖すること。
〇散水等には浄水を使わず,井戸水か雨水または風呂の残り水を利用すること。
〇洗濯物をすゝぐ場合も,水は出し放しにせず節水すること。
これには,衛生上必要な水まで少なく使えというのではなく,必要以外の水は1適も無駄にしないようにとの注意であった。