二、 笠原水道の歴史

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 水戸駅南口から西南に約三キロメートル、千波湖を望む笠原町の台地に、樹木がうっそうと茂る雑木林があり、そこから清冽(せいれつ)な水が湧き出している。この湧水は江戸時代前期、飲料水など生活用水の確保が難しかった現在の水戸市東部・下市地区の住民のために布設された上水道・笠原水道の水源となった。この上水道は当時としては珍しい地下水路で、総延長十キロメートルを超える規模のものであった。近代的水道の時代になってその役目を終えたが、現在も湧水そのものは水戸市水道の一部として使われている。三百年以上の長きにわたって人々の生活に関わり続ける湧水と笠原水道の歴史、敷設の背景を紹介してみたい。


水源地入口に立つ史跡碑