五月三日(火)

663_001     663_002
画像の拡大
(画像は原文とテキストの並べ重ねができます)
目録データへ
[表]
消印午後10時-12時
赤坂区青山南町六ノ一〇八
 小宮豊隆様
     本郷曙町
     十三
      寺田寅彦


[裏]
ホトヽギスが来たから漫然と頁を翻して居る内にふと「生きた三四郎」といふ文字に逢着した、作者は女で何だか美人らしい気がする。此れがKさんなるものを崇拝して居るらしい。しかし場所が何処だか分らず時も何年前か分らないので掻痒の感があります、今度拝眉の節御説明を煩はし、次第によつては大にオゴラセル積りです」 新小説を見ました。我が豊隆先生にして始めて書き得るものだと思ひます。逐月あのシリーズを連発する事を切望します、そして追〻に手綱をゆるめて意のまゝに剣をふるふ事を祈ります」 津田君のも始めてよんで見たがやつぱり面白かつた、僕も何処かへそのつくねいもでも掘り出しに行かうかと考へる」 内田氏のを一寸覗いて見た、もし「夢十夜」といふアンチシデントがなかつたら可也面白いだらうと思ふが、なんだか書き振り迄あんまりよく似ているから純粋な気持で読む事が出来ない。此れも「影と形」の所論中の一例だと思ひます。」 又一枚少し風の変つた絵を描きかけて居ます、其内に又見て頂き度いと思つて居ます。    五月三日 青嵐の日